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覇権の変遷—各国比較—【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】


ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であり、著名投資家のレイ・ダリオ氏は出版予定の著書「The Changing World Order(変わりゆく世界秩序)」で、覇権国の変遷を分析している。「覇権国の推移」(※1)では、覇権が、教育、イノベーション・技術、競争力、軍事力、貿易、産出、金融センター、準備通貨という8つの要素から構成されるという見方を紹介した。今回は、オランダ、イギリス、アメリカ、中国の状況を見てみよう。

(1)オランダ
オランダのパワーは、1575年頃から上昇し、1600年代後半にピークを迎え、1780年頃から下降していった。ピークが先行したのはイノベーション・技術、競争力、軍事力で、遅行したのは教育、準備通貨である。1581年にスペインから独立したオランダは、貿易帝国を築き、世界貿易の3分の1以上を担うようになった。オランダ人は高学歴であったため、多くの分野で革命を起こし、17世紀初頭には世界の発明の約25%を生み出すようになった。その中でも特に重要なのは造船業であり、オランダの競争力と世界貿易におけるシェアを大きく向上させた。

(2)イギリス
イギリスの台頭は、1600年以前から始まっており、競争力の着実な強化、教育、イノベーション・技術などが先行した。一方で、遅行したのは準備通貨であった。1700年代後半には、イギリスの軍事力が優位になり、1800年代半ばにピークを迎えた。経済大国となったことで、非常に豊かにもなった。1900年頃、ポンドは世界の主要な基軸通貨となった。その後、アメリカやドイツのような強力なライバルが出現したことで、イギリスのほとんどすべての相対的なパワーは衰退に転じた。

(3)アメリカ
アメリカのパワーのピークは1950年代前半である。過去100年間で、教育、競争力、貿易、産出は相対的に大幅低下したが、イノベーション・技術、準備通貨、金融センター、軍事力は、依然としてトップかそれに近い位置に留まっている。後述の中国は、これらすべての分野で米国に追いつくと同時に、多くの点でアメリカに匹敵するようになり、アメリカを上回るスピードで進歩している。

(4)中国
先に示したオランダ、イギリス、アメリカのサイクルが、上昇から衰退へと進んでいるのとは異なり、中国のサイクルは、非常に低いところから上昇を続けている。順番は違うが、中国の衰退と台頭の背後には、他の帝国の衰退と台頭の背後と同じような傾向が見られた。8つの指標は、1940年から50年頃までは低水準であったが、1980年頃に中国の経済競争力と貿易が本格化するまでには、ほとんどの要素、特に競争力、教育、軍事力は向上していった。中国は現在、貿易、軍事、イノベーション・技術の分野で主導的な地位を占めており、これらの分野における相対的なパワーは急速に高まっている。先行指標の教育、イノベーション・技術は上昇継続だが、競争力にはややピーク感が見られる。遅行指標の準備通貨、金融センターでは依然として遅れをとっている。

(株式会社フィスコ 中村孝也)

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