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デジタル人民元の真の狙いとは?


2020年10月23日、中国政府のサイトに銀行法の改正に向けてパブリックコメントを募集する通知が掲載された。今回の改正案には、デジタル人民元に関する事項がいくつかある。人民元には紙幣やコインのような物理的なものとデジタルなものの両方が定義されること、企業や個人が作成したり販売したりすることが出来ないこと、また、それに関わる罰則についてなどが明記されている。これらにより、デジタル人民元に関する法制面が整備されることになる。現時点で、実運用面の整備を進めるフェーズにあり、デジタル人民元の技術的なハードルはすでに越えていると見られる。パブリックコメントの受付期限は11月23日で予定通り締め切った。この改正が成立すれば、デジタル人民元発行の法的根拠が出来上がることになる。

10月29日にはSouth China Morningが、人民銀行前総裁の周小川氏のコメントを掲載した。デジタル人民元は、ステーブルコインを含む暗号資産によって引き起こされる脅威への対処ではないという。主に国内でのリテール決済を増やし、米ドルの支配力を低下させることも目的であるようだ。つまり、人民元の価値を高めるということでもある。国際決済において、米ドルは基軸通貨として独占的な地位にあるが、暗号資産の利用拡大により、米ドル以外の決済手段が普及する可能性がある。中国では暗号資産が法的に規制されているが、米ドルの支配力を弱めるための打ち手として、デジタル法定通貨をアメリカよりも早く導入することの重要性は非常に高く、戦略的であろう。

一方で、米中問題が長期化するなか、デジタル人民元は中国のいわゆる一帯一路政策との融合性が高い。中国が影響力を高めている国に対して、人民元での決済を拡大していくことは理にかなっていると言える。米ドルに取って代わることが難しくとも、一帯一路を人民元の経済圏として塗り替えるかもしれない。デジタル人民元を早く導入することにより、短期的には、中国国内の通貨取引に対する管理監視を強化し、長期的には、米ドルの支配力を低下させ、人民元がある程度の支配力を持つ一帯一路経済圏を作り上げる可能性は十分にある。ただし、人民元の国際化は根本的には人民元が自由に取引できる環境が担保されることが必要である。デジタル人民元を導入したからといって、資本規制という壁が残る限りは人民元の国際化が急速に進展することは考えにくい。

世界各国から人が押し寄せる北京オリンピックが開催される2022年に、どこまで仕上がっているかはまだわからないが、現時点で確実に進捗しているのは間違いない。

株式会社CAICA 高松 良仁、鈴木伸
株式会社フィスコ 白幡玲美

写真:ロイター/アフロ

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