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コラム【アナリスト夜話】RCEPとDCEP(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)


11月15日、アジア15カ国がRCEP(アールセップ、Regional Comprehensive Economic Partnership、地域包括的経済連携)に署名しました。9年越しの交渉で、中国を含む初めての広域貿易連携が成立しました。カバー範囲は、世界のGDPの3割とされますが、中国のGDPは10年以内に米国を抜いて世界一となる可能性が高いですから、世界シェアは今後さらに上昇するでしょう。

なかでも、金融関連で注目されるのは、デジタル貿易ルールです。デジタル情報を域内で自由に流通させることを求めるとともに、海外企業に対し、サーバーを国内に設置することを進出の条件とすること等が禁止されます。

昨年末以降、日本は米英と相次いで同様のデジタル貿易協定を締結していますが、今回は中国が加わっていることが大きなポイントです。例えば、現在は、中国支社の営業データを日本本社に送信するなど、重要データの国外持ち出しが制限されています。まだ詳細は不明ですが、RCEPでこれらが自由化されるかもしれません。

そうなれば、デジタル保護主義が強い中国に対し、日本など海外企業の自由度が広がるでしょう。しかし、中国から見たプラスも案外大きいように思います。

中国は、先月、デジタル人民元DCEP(Digital Currency Electronic Payment)の第二次の実証実験を行いました。国内の本格稼働はもう目の前でしょう。政府は当面国内利用のみとしていますが、通貨覇権を考える中国が、将来的にアジアの舞台を狙っても不思議はないでしょう。その時点では、デジタル貿易ルールは、中国にとっても確実にポジティブです。アジアで一気に中国商品と人民元のプレゼンスが増す可能性も否定できないのでは…と想像します。

RCEPにDCEP、図らずも韻を踏む二つの「CEP」が、China Economic Projectの略語にも見えてくる気がします。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:11/16配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)



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