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元統合幕僚長の岩崎氏、イージス・アショアの代替は固定概念を排して決定すべき[1]


報道を拝見し、やや驚きを覚えたが、予測どおりの方向かなとも感じた。例の防衛省が2018予算で導入を決定していたイージス・アショアを河野防衛大臣(当時)が停止し、この代替案を検討することになっていた件である。政府(防衛省)としては、この冬までに決着し、2021年度予算に繰り込みたいとの考えである。当然の流れである。

防衛省は度重なる北朝鮮の弾道弾発射に備える為に、現有の装備で十分でないとの考えで、2017年夏ころから急激にイージス・アショアへ傾斜し、年末の次年度予算策定に盛り込んだ。現有の装備等だけで十分でないとの理由の大部分は、海自隊員の負担増・疲労である。当時、頻繁に北朝鮮が弾道弾発射を繰り返しており、これに備える為、自衛隊は、日本海にイージス艦を常時派遣し、BMD(弾道弾防衛)任務に就かせていた。海上自衛隊(海自)のイージス艦の中で弾道弾対応能力を有する護衛艦は当時4隻である。これでは十分な対応が出来ないとの考えで、保有するイージス艦全てにBMD能力を付与することと、陸上に同等程度の能力を持った装備を配置できないかという検討が進んだ経緯がある。

地上配置型のBMD能力を有するシステムやミサイルにおいて、代表的なものは三種類である。一つは、航空自衛隊(空自)が長年運用をしてきたPETRIOTシステムのPAC-3ミサイルである。他の二つのうちの一つは、米陸軍が開発した弾道弾迎撃システムのTHAAD(Terminal High Altitude Area Defense;終末高高度防空)ミサイルである。このシステムは、米軍が既に運用を開始しており、日本周辺では韓国やグアム島に配備されている。また、我が国にも当システムの中枢であるTPY-2レーダーが二基(青森県車力分屯基地、京都府経ヶ岬分屯基地)配備されている。そして、もう一つが、今回の焦点であるイージス・アショアのシステムである。このシステムは大まかに言えば、既に海自が保有しているイージス艦のBMD能力をメインにした部分の地上版である。米軍は、イージス・アショアをポーランドに配備して運用中であり、実績のある装備品となる。

2017年に防衛省が検討した細部の内容は承知していないものの、極めて短時間の中でイージス・アショアの導入が妥当との結論を得て、予算が割り当てられた。そして今回の導入中止である。

導入中止の新理由は、公表している理由のみなのか否か知る由が無いものの、もしブースターの件のみであれば、やや理解礙出来ない事が散見される。仮に、ブースターが駐屯地や演習場内に落下させることが出来ないならば、事前に地域住民の方々に避難していただけばよい。また、両方の演習場は比較的海岸の近傍であり、その周辺の用地取得もあったのではとも思うが、今回は防衛省が提示した代替案に関してコメントしたい。

本年6月に河野防衛大臣がイージス・アショア停止とし、続いて国家安全保障会議(NSC)での同プログラムの中止が決定された。その後、防衛省が現在考えている方向性の三案が与党に説明された。(1)洋上リグ案、(2)大型専用船(商船)案、(3)護衛艦(SPY-7レーダー搭載)で全て洋上案である。この案を聞いた時の各議員の驚きは、大変なものだったようで、ある議員は驚きよりも苦笑するしかなかったとのこと。私は、報道されていること以上の事を知り得てないものの、防衛省が既に契約している事(SPY-7レーダー)を有効に活用していくとの方向性を示していたこともあり、半分驚き、半分予測通りとの所感を擁いた。地上分離案(発射機のみを海岸付近に配備)に関しては何も説明がない事に驚いた。何故、選択肢の中にないのかの説明はすべきである。

「元統合幕僚長の岩崎氏、イージス・アショアの代替は固定概念を排して決定すべき[2]」へ続く。

岩崎茂(いわさき・しげる)
1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。

写真:つのだよしお/アフロ



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