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アフリカの中国との協力関係、経済と軍事【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】


2000年に中国・アフリカ協力フォーラム(Forum on ChinaーAfrica Cooperation: FOCAC)が創立されてから、各種報道では中国とアフリカの協力関係が強調される傾向にある。しかし、中国は建国以降、国連での代表権獲得という目的もあり、非同盟運動・民族解放闘争との連携を推進する中で、アフリカ諸国との協力関係を構築していった。アフリカでも、1951年のリビア独立を皮切りに多くの独立国が誕生し、その多くが重要な連携相手の1つとして中国を選んだ。

中国は、20世紀末に高度経済成長期に入り、1999年に「走出去(Go Global)」戦略を採用して、中国企業の海外における発展を促進させることを重視してきたが、その相手先として注目されたのがアフリカであった。これ以降、中国とアフリカの経済的な関係は強化され、中国からアフリカへの輸出額は、2000年の528万ドルから2018年に1兆300万ドルへと20倍近くまで拡大し、輸入額も521万ドルから15倍以上となる7,880万ドルに達した。また、ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、2000年から2017年の間に中国がアフリカ政府向けに拠出した貸し出しは、1,400億ドルにものぼるとされる。

中国とアフリカの協力関係は経済面にとどまらない。2018年のFOCAC北京サミットにおいて策定された「北京行動計画(2019-2021)」では、重点となる協力項目として「8大イニシアティブ」が明示されているが、その中に「人材交流イニシアティブ」と「平和・安全保障イニシアティブ」が含まれており、それらの枠組みで人的交流が実施されている。これまでのFOCAC行動計画でも様々な人的交流が行われてきたが、「ヨハネスブルグ行動計画2016-2018」では40,000人に提供された中国での職業訓練機会が、今回は50,000人に拡大されるとともに、さらに50,000人に対して政府から奨学金が提供されることになっている。その中で、5,000人の枠が軍事専門職に割り当てられ、前回枠の2,000人の2.5倍になっている。

環球時報(Global Times)が1月に報じたところによれば、南京に所在する陸軍指揮学院の国際軍事教育交流センターでは、世界の77か国から派遣された146人の軍人が軍事戦術を学んでいるという。同学院は、創立81年の歴史を有する中国で最も権威のある軍事学校の1つであり、1957年から海外の将校に対して長期間の軍事訓練課程を提供している。直近の数十年間では、118の国の4,000人近い中上級指揮官や政府職員がここで訓練を受けている。

訓練期間は半年から1年だが、適格性を持つ学生は2年間のマスター課程に志願することが可能となる。理論課程では、主としてカウンター・テロリズム訓練、戦術、戦場情報収集、中国軍の作戦システムを学び、それとは別に、学修や理解を促進するための中国語課程が設定されている。環球時報によれば、ここで学ぶ将校の多くは、軍事戦術に加えて中国の国家指導者の軍隊構築に関する思想に大きな関心を抱いているという。

アフリカ戦略研究センターのポール・ナンチュリヤ研究員のレポートでは、アフリカから派遣された軍人も、中国の軍事専門職の教育課程における3つのキャリアレベルにおいて、中国の党軍関係モデルを学ぶことが指摘されている。最初は、士官候補生や下級将校を対象とした南京軍事学院、大連艦艇学院、空軍航空大学などでの教育、2番目は、南京や石家荘に所在する陸軍指揮学院や、職種ごとの指揮学院などにおける中堅将校に対する教育である。最後は、国防大学や国防科学技術大学における上級教育で、年間300人以上の海外の将校を受け入れており、その60%弱がアフリカからの軍人である。

ナンチュリヤ研究員によれば、中国共産党による人民解放軍への徹底した統制は、(1)国防部よりも上位の中央政治局の指導の下で行われる中央軍事委員会の作戦統制、(2)中央軍事委員会の直属組織である政治工作部が、政治委員のネットワークを通じて行う政治的かつイデオロギー的教育、(3)中国共産党の機能的・指導的機関に位置する上級将校、の3つのメカニズムによって達成されるという。そして、この支配政党と軍との融合という毛沢東モデルは、アフリカの多くの国において様々な形で取り入れられている。

この毛沢東モデルは、アフリカ諸国が独立する際に、軍事力をその原動力の1つとするうえで必要な機能であったと考えられる。しかし、独立後の多党制民主主義を目指すプロセスでは、解放運動から続く支配者意識やそれを維持しようとする願望が阻害要因となり、多発する紛争や政治的危機、さらには民主主義体制への移行を行き詰まらせる原因ともなっている。

アフリカ諸国には、国家の政治構造と軍事構造との密接な関係を避け、民主的な文民的権威への従属、国家への忠誠、政治的中立性へのコミットメント、倫理的な制度文化などに基づいて、軍隊が軍事専門職化することの必要性を主張する上級将校が少なくない。習近平が進める軍に対する党の統制力強化は、軍の政治化を進めるとともに、中国共産党の独裁色を強めることにもつながる。これは、アフリカ諸国が民主体制を目指すうえでは、避けなければならないことの1つだろう。中国との経済的な関係をこれからも継続しなければならないアフリカ諸国ではあるが、中国の党軍関係モデルが規範であり続ける可能性は意外と低いのかもしれない。

サンタフェ総研上席研究員 米内 修 防衛大学校卒業後、陸上自衛官として勤務。在職間、防衛大学校総合安全保障研究科後期課程を卒業し、独立行政法人大学評価・学位授与機構から博士号(安全保障学)を取得。2020年から現職。主な関心は、国際政治学、国際関係論、国際制度論。



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