中国ノート(2)【中国問題グローバル研究所】
◆中国問題グローバル研究所の主要構成メンバー
所長 遠藤 誉(筑波大学名誉教授、理学博士)
研究員 アーサー・ウォルドロン(ペンシルバニア大学歴史学科国際関係学教授)
研究員 孫 啓明(北京郵電大学経済管理学院教授)
◇以下中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察「駐日米国大使「中国ノート(1)【中国問題グローバル研究所】」」の続きとなる。
現状分析の前に、中国の勃興について私見を述べさせていただきたい。ある中国の新聞の見出しに、「中国は来年(2020年)でアメリカのGDPを超え、世界の覇権を握るであろう」とあった。中国はカナダより少しだけ小さい広大な国であるが豊かな国ではない。一人当たりGDPはウルグアイの半分である(パラグアイより上だが)。中国は経済的な奇跡ではないのだ。
中国の指導者らはびっくりするほど経済に関して無知である。彼らは日本の第二次世界大戦後の復興の奇跡を理解していないし、韓国、シンガポール、台湾の経済的な奇跡もわかっていない。そして、毛沢東時代より、彼らの食卓がこんなにも豊かになったと自画自賛する。もし毛沢東が当時あった経済成長を破壊しなかったら、今や日本の経済と質的に並んでいたであろう。中国の経済成長は中国人自身と、一部の来訪者を驚愕させるが、学者らはあまり感心しない。皮肉にも、習主席の執務室から100マイル以内に1000人以上の世界クラスの経済学者がいるのにもかかわらず、意見を聞かず彼自身の考えと北京101中学で学んだことで政策を決めている(彼の高等教育は毛沢東の文化大革命下であり、清華大学が一応彼の履歴書に載るが、当時の清華大学はただの幼稚園である。彼の卒論はゴーストライターが書いた可能性が濃厚である)。結果として、彼の経済政策は紙の上でも矛盾だらけである。ソ連モデルを未だに経済政策の基礎構造としているため、経済的危機はそう遠くないことが明確である。
軍事的に、中国は世界最大の軍を建設しようとしている。未だに住宅・健康・食糧・さらに衣服でさえ問題を抱えているのにもかかわらずだ(ある考古学者が陝西省の僻遠の地で研究しているのだが、そこの住人は衣服なく裸で過ごしていると言う)。中国の軍事的プロジェクトは、(J-20、F-35のライバルになるように開発された)第五世代戦闘機のエンジントラブルが多発しているにしても、よく進んでいる。ここで、中国と戦争になる道を我々は辿っているのかという疑問が湧く。
領土とその強奪ぶりを見れば、そうであると言わざるを得ない。南洋(南シナ海)は地中海より5割大きい。中国はそこの航路と島々を支配下に置くために行動をしている。中国と戦争はしないと考えられるのは、アメリカ・日本の連合および、インド、ベトナムなど中国と陸で繋がっている14勢力のうち4つの国と地域だ(ただし、日本、台湾、フィリピン、インドネシアなど個別で国境に接していないところと戦争にならないとは言えない)。ドイツでさえ二正面作戦を維持することが叶わなかったのだから、中国があたかも朝鮮半島からヒマラヤまで、しかも一部核武装している国々に対して、纏めて勝利できるかと言えば無謀としか言えない。しかし、小さいことで急に紛争が勃発しないとは言えない上に、これが起きたらより大きい戦争になり、すべてが灰燼に帰すだろう。
合理的な説明としては、中国は尊敬されたいのである。そして、国際的にこれがなされていないと感じ、そして中国自身も理解していないが、恐ろしさを醸し出したいのだ。この恐ろしさ、「威」を出したいというのは基本中の基本である。中国は面子にこだわるもので、いままでは国内向けであったのが、いまや国際社会に向けられている。彼らはアメリカをナンバーワンと捉えているが、アメリカ自身、台湾より自由度が数段階落ち、報道の自由も最高ではなく、経済生産性が三位で、びっくりするほどの文盲率を誇り(著者はフィラデルフィアの住人で、アメリカにおける最高と最低の教育現場が隣接することが見える)、等々、そうそう良いという訳でもない。しかし、多くの中国人も賛成すると思うが、住むには悪いとは必ずしも言えない。筆頭の国というものをどうやって測るのか? いちばん水爆を持っていること? これは馬鹿馬鹿しいことだが、中国の目的は、世界の法廷もNATOも誰もその行動を制限できなくなるまで強くなることにある。中国は注意深く、どこへでも航海し、ルールを破る。
(この評論は6月12日に執筆)
(つづく~「中国ノート(3)【中国問題グローバル研究所】」~)
※1:中国問題グローバル研究所 https://grici.or.jp/
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