「サービスが終了しても、育てたキャラを手元にブロックチェーン技術を活用して、ゲームアイテムをユーザーの資産へ」
中山氏はこう話す。
「これまでゲームのなかのキャラクターやアイテムを管理しているのは、すべてゲームの開発会社や運営会社でした。その財産権を証明するのは運営側がもっていました。ユーザーが『ガチャ』などを使ってゲームのなかでこのアイテムを獲得したといっても、本当にユーザーが獲得しているわけではなくて、運営側が一時的に使用権を渡しているということでした。あくまで一時的に渡しているだけなので、ユーザーが規約に違反したり、不正な方法でアイテムを獲得していたら、運営側が任意で取り消すことをできる状態でした」
※ガチャとは、お金を入れるとランダムに何かがでてくるというのが、ゲームの世界ではアイテムやキャラクターのメジャーな提供方法となっている。
——今までがということですか?
「今もほぼすべてがそういう状態になっています。今回は、私たちが行ったゲームのトークン化は、これまでのゲームは、ユーザーの所有や資産価値を認めていなかったが、トークン化することで、本当にこれはあなたのモノなので、あとは自分の好きに処分などをしてもかまわない、ということにしたわけです」
中村氏の述べているのは、ゲーム用のキャラクターをトークン化することである。だが、トークンはデジタル通貨の一種だ。中村さんはいう。
「イーサリアムで作成したトークンにキャラクターの情報をのせて(ブロックに書き込んで)、それをユーザーに配布します。そのトークはユーザー同士でやりとりはできますが、それ自体は通貨ではない、というかたちになる」
——どういうこと?
「ノンファンジブルトークン(NFT)がいまけっこう話題になっていて、通貨だと、同じ通貨が10枚あったらその価値は10倍になるが、ゲームなので、1枚1枚は固有の価値を持っているが、実効力がない。それを10個持っていても、同じものが存在しないので、価値が10倍にならないから、これは仮想通貨には該当しないというかたちなのである」
つまり、ブロックチェーン上に書き込まれてはいるが、通貨ではない、ということである。そのNFTを配布するのは、ゲームの開発会社で、今回の場合はビットファクトリーがユーザーのウォレットに配布をする。それらにかかる費用はすべてビットファクトリーが、事例ということもあって負担をし、ユーザーがいっさい費用を払う必要がない。
——なぜか?
「もともと、ブロックチェーンとは関係のない当社のゲームがあったのですが、そこでユーザーがキャラクターを有料で買ってくれていたので、サービスが終了してしまうと、買ったキャラクターがなくなってしまう。当社はブロックチェーンに取り組みを始めているのだから、買ってくれたものについては、証明して、その価値をユーザーに返すべきだ、という考え方があったので、イーサリアムにキャラクターの情報を書き込んでおけば、このキャラクターはあなたのキャラクターだということを証明できるということになる。ユーザーにとっては、そのキャラクターを持っていることの証明ができる」
「ゲームが終了してしまうと、何も見ることができなくなってしまうので、ただそれとは別のサービスとして、『HL-Report』をリリースするので、そこで、あなたが持っているキャラクターは何レベルで、どれぐらい使っていて、誰が持っていたなど、キャラクターに関するすべての情報を閲覧できるようにしたわけである」
——ん? 何レベルというのは?
「ゲームのキャラクターは使っていると育つんですね。手に入った状態から、ちょっと遊んでいくと、強くなっていくというか」
——そんなものなんですか?
「ゲームのキャラクターは、ほぼそうです。使っているとちょっとずつ強くなっていって、何となく愛着がわいてくる」
大沼氏がこう話す。
「お金をかけて、キャラクターをどんどん強くしていって、他のキャラクターと戦わせたりして、育てていったものが、これまでだとゲームが終了すると、お金をかけたモノがすべて消え去ってしまうことになります。その愛着があるキャラクターをブロックチェーンに移行することで、ゲームとしては遊べないが、お金をかけて、手塩にかけて育ててきたキャラクターがいつでも見ることができるようになる。ユーザーに取ってのメリットは、せっかくお金と手間をかけて育ってきたキャラクターが、ゲームの終了と同時に消えてなくなるのではなく、こうした活用方法があれば、たとえゲーム会社が潰れたとしても、ブロックチェーン上で自分の資産として永遠に楽しめるようになるわけです」
□「HL-Report」とは何か
「HL-Report」は、モバイルファクトリーが運営し、2018年9月19日にサービスを終了した位置情報ゲーム「レキシトコネクト」のトークン化されたキャラクターなどのデータを閲覧できるDAppsである。DAppsとは、ブロックチェーン上の分散アプリケーションのことである。
もし、そのキャラクターを著作権フリーにしてしまうと、ユーザーはそのキャラクターを使ってゲームを新たにつくることが、ブロックチェーンだとできる、ということにもなる。
それで、「HL-Report」をリリースするメリットはどこにあるのか。
「現状では、確たるこちらのメリットはなくて、慈善事業に近い。もともと『レキシトコネクト』のサービスが終了してしまうので、遊んでくれたユーザーに何か返せないかというのが始まりです」
——善意の行為というわけですね。
「基本的には開発費も含めて、すべてビットファクトリーが負担をしていて、トークンの発行の費用も負担をしています」
トークンを発行するには、そのトークンにどんな情報をもたせたいのか、どんな設計に基づいているのかによって、イーサリアムの手数料がかかってくる。
——それで、この事業をどんどん拡大していかれるということですか?
「そうですね。この事業というよりは、もともと『UNIQYS』というプロジェクトの全体があり、そのプロジェクトを拡大する途中でこのサービスが生まれたということです。つまり、『HL-Report』は単独の一サービスという立ち位置ですね」
□Uniqysプロジェクトをスタート
——ところで、「UNIQYS」とは? ここからは大沼氏が説明を変わる。
「『UNIQYS』は、ブロックチェーンを拡大していこうというプロジェクトです。だが、ブロックチェーンにはまだ課題が多いということに注目して、今、大きく分けて3つのことに取り組んでいます」
先ず1つが、「Qurage」というモバイル向けのブラウザアプリをつくっている。これは、ブロックチェーンのDAppsを使うのに、専用のブラウザが必要だが、モバイルで使えるものがあまりなく、ユーザーが使いやすいブラウザを提供していこうということで、「Qurage」の開発に取り組んでいる。
2つ目は、DAppsの開発者がもっとも楽に開発できるサポートツール「Uniqys Kit」の開発に取り組んでいる。「Uniqys Kit」とは、Uniqys Network上のDApps開発をサポートするツールのことで、一般的なWebアプリケーションと同様に、つくりやすい言語でDApps開発ができるようになり、トランザクション手数料やブロック報酬を無料、定額も含めて自由に選択できたり、Ether(ETH)または、デベロッパーによる独自のトークンを流通させることができるようになる、ものである。
3つ目が、独自トークンの発行で、ここについてはまだ、検討中である。
「当社の代表が、DAppsがメインになってくるのではないかと考えて、DAppsを普及していくために、いろいろなサービスをつくっています」
「Uniqys」プロジェクトが動き始めたのは、2018年に入ってからだ。そして、本格的に活動を行うために、2018年7月25日にビックファクトリーを設立した。
インターネットの次世代技術といわれるブロックチェーン事業を本格的に展開をしていこうという、モバイルファクトリーとビットファクトリーの動向は今後も、注目する必要があるといってよい。
【ニュース提供・エムトレ】
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