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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆チャイナマネーの行方◆



〇中国の資金封じ込め策、ジワリ影響か〇

世界の金融市場を揺るがす規模にありながら、その規模や運用動向が不透明な資金の代表は、オイルマネーとチャイナマネーである。原油価格暴落の過程(14年半ばから16年初めにかけ原油価格は75%下落)で、オイルマネーの縮小が懸念されたが、今のところ大きな変化は見られていない(産油12か国の米国債保有額は07年の1180億ドルから昨年は約5000億ドル規模とされる)。ただ、50ドル/バレル前後の原油相場が続くと、サウジを筆頭に財政赤字が続き、何処かで縮小圧力が掛かるのではないかと見られている。金融政策への影響を含めて、動向が注目されていることに変わりはない。

オイルマネーほどの歴史がなく、もっと不透明感の強いのがチャイナマネーだ。国内の大量資金供給策、「一帯一路」などの膨張策で世界的に資金がバラ撒かれてきたと見られるが、15年8月の人民元切り下げを契機に流出が激しくなり、昨年後半から流出防止策が打たれ始め、今年は一段と締め付けが厳しくなっていると見られている。腐敗追及で賄賂マネーへの対処も厳格化、香港やシンガポールのアジアのヘッジファンドの勢いを失わせる一因との見方もある。極めて漠然としているが、日本株で海外投資家の動きが鈍い要因にもなっている可能性がある。

米シンクタンク・AEIが7月に発表した報告書では、中国の05年~17年上半期の対外投資+建設工事額は1兆6000億ドル超(約180兆円)。対外投資の2/3は香港向けで、そこから世界に流れる。香港民主化などで摩擦が激しくなると、このパイプが詰まると見られている。累計投資先の1位は米国17.5%、2位は豪州9.4%。
また、中国人民銀行の元金融政策委員の発言によると、11年~16年7-9月期累計の資金逃避額(国際収支統計の誤差脱漏を逃避額と看做す)は6200億ドル(約68兆円)。経常収支黒字と対外純資産の差額は約1兆3000億ドル(約143兆円)あり、半分程度は逃避マネーと見られている。

先週18日、中国当局は「非合理的」と看做した案件に対し強硬的な態度を取ることを正式に表明した。5月にとられた対外M&A規制=資金流出防止策を一段と厳格化する姿勢だ。既に、積極的な海外M&Aで知られる安邦保険、大連万達、復星国際、海航集団などの動きが止まっている(最近のニュースでは22日、大連万達集団がロンドンで取得計画した約660億円案件の撤回を表明)。一応、外貨準備の縮小に歯止めを掛け、6月の米国債保有額は9カ月ぶりに日本を抜き、首位を奪還した。

M&Aは目に見える案件なのでニュースになるが、不透明な人民元基準値算出など、日常的な投資資金の出入りの実態は把握されていない。憶測の域を出ないが、規制は極めて政治的で、秋の共産党大会に向けての人事攻防に決着が付けば、再び対外投資攻勢に出るとの見方、国内優先で引き締めを続けるとの見方、など両極端が交錯する。これには、北朝鮮問題や通商摩擦での対米交渉が影響を及ぼそう。日本企業が依存する中国経済の安定度に加え、チャイナマネーの動向が秋の隠れた焦点になると考えられる。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/8/24号)



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