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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆俄かユーロ相場◆


〇ユーロ高の背景にトレンド転換や政治思惑も〇

膠着感の強い相場の中で、俄かにユーロ高となっている。キッカケは27日のドラギECB総裁の「物価を低く抑えている要因は一時的なもの」などの発言とされる。通常であれば、極めて些細な発言で、グーグルの罰金支払いの方がインパクトがあるのではないかと思われるが、この2日間で、対ドルは1年ぶり(1.1390ドル)、円安含みの対円では1年3ヵ月ぶりの水準(127.7円)に急伸した。

EU崩壊論まで出て、昨年ブレグジット後に安値を付け、トランプ相場で一旦戻した後、4月の仏大統領選前に再び売られる展開だった。マクロン政権誕生で、一転、ユーロは売り越しから買い越しに転じた。そのIMM通貨先物建玉を見ると、6月13日時点で7万9053枚の買い越しだったが、20日時点で4万4852枚に、3万4200枚ほど急減していた。投機筋のユーロ高狙いが後退したと見られるタイミングだけに意外感があった。

ECBの緩和策は今年年末まで延長されているが、これは経済動向と言うより、9月24日のドイツ連邦議会選を見極めたい、万が一に備える政治的な思惑と看做された。しかし、仏大統領、議会選で流れは変わり、28日発表の世論調査では、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)の支持率は40%を回復、15年9月以来の高さとなった。移民受け入れ反対の右派は7%にとどまる。元々、財政タカ派のショイブレ財務相は中期財政計画にECB利上げ(小幅だそうだが)に備えた引当金計上を表明した。

28日、カナダ中銀総裁と副総裁は揃って、15年実施の利下げは役割を果たしたとの見解を表明。次回7月12日の会合での利上げ観測が高まり、カナダドルは対米ドルで4か月ぶりの高値。英国でも利上げ方向が示唆され、英ポンドが上昇した。7-9月相場では、出口のところで米追加利上げの攻防が控えるとの見方だった(7-8月は強弱綱引きの局面との見方)が、それよりも少し強く、「金融緩和から引き締めへの転換」を模索する局面になる可能性がある。

今回のユーロ急伸は、単にドル安を演出したい投機筋の思惑的な動きか、「引き締め転換」の階段を上るものかの見極めが当面の焦点となろう。円は最後を歩くはずなので、後者の場合は円安に振れやすい地合いと思われる。ドル円110~115円ゾーンで、115円チャレンジの公算を測ることになろう。余談だが、ユーロ弱気派の双璧は米GSとドイツ銀だったとされる。ドイツ銀アナリストはパリティ論(1ユーロ=1ドルの等価、一時は0.85ドルのユーロ安を主張していた)を撤回し、今年末1.16ドルの予想とした。14年からのドル高はピークを打ったとの主張だ。予想も振れ易い点には注意が要る。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/6/29



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