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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆上値圧迫に北朝鮮の重圧◆



〇北朝鮮問題、静かに悪化〇

日本株の上値の重たさの要因に、国内機関投資家の売り越し基調がある。資本規制のある銀行、保険の売り越し基調は長期的だが、押し上げ局面で話題になった信託銀行(年金等)、積極運用期待のある投信の動きが鈍い。現物株の投資主体別売買動向で、信託銀行部門は2月から売り越しを続けており、4月に7カ月ぶりの買い越しに転じた投信部門も5月第2週まで再び売り越し基調にある。必然的に、海外情勢に左右される外国人投資家の売買動向に左右される地合いが続いている。

国内機関投資家を圧迫している要因は、地銀などを中心とした運用再構築が大きな背景と考えられるが、個別には東芝問題、北朝鮮情勢などの影響も無視できない。積極的にリスクを取ることを躊躇させる要因と考えられる。

今週は北朝鮮の2週連続のミサイル発射で始まった。4月の連続失敗から一転、2週連続「成功」し、金正恩委員長は「実戦配備と量産化」を指示したと伝えられた。昨日、米上院軍事委員会公聴会で、国防情報局(DIA)のスチュワート長官は、「13日の実験(上空2000kmに達した)は成功」との認識を示し、「米本土を攻撃できる核搭載ミサイル技術の取得途上にあることは明らか」とし、「いつ運用可能となるかを予見することは不可能だが、間違いなく実現する道筋にある」との認識を示した。2回目の分は間に合っていないが、「量産化」によるミサイルの大量保有は、米軍の作戦の大きな妨げにもなると見られる。改めて、強い警戒姿勢を示したが、現在、トランプ政権は中国の圧力に期待する「静観局面」にある。4月の有事勃発リスクが表面上後退している背景だが、放っておけない現状に再び締め付けを強化する可能性がある。

23日、中国関税当局が発表した4月の対北朝鮮貿易は、輸入が9930万ドル、14年6月以来の低水準に減少(3月1億1460万ドル、昨年4月1億6770万ドル)した。1-4月では前年同期比2.7%減、輸出は10億ドル、同32%増。20日のNHK番組でも、北朝鮮への大量の物資輸送場面(水酸化アルミニウム満載のトラックを映していた)があったが、貿易制裁は口で言うほど実行されていない(石炭禁輸だが、鉄鉱石は増加している)印象だ。習政権の方針と、現場の取り組みにギャップが感じられる。米国が何処で文句を言い始めるか注目される。

23日の国連安保理緊急会合は、新たな北朝鮮制裁決議をまとめられなかった。中国などが反対したためと見られるが、前日までに、北朝鮮の制裁決議違反を調査している安保理制裁委員会に継続的なサイバー攻撃が行われており、委員らの仕事に「精通」していると言われ、具体的な制裁内容に踏み出せないことも影響していると考えられる。先般の世界的なサイバー攻撃でも北朝鮮の関与が疑われている(ロイターは北朝鮮のサイバー攻撃専門の「180部隊」を紹介)。また、日本政府は独自制裁の強化を打ち出しているが、福岡で多発する金塊密輸事件(日本で売れば自動的に8%の消費税分のサヤが抜ける。香港などを介した密輸組織の犯罪だが、元の金塊売却は北朝鮮との疑いもある)などとの関連が焦点になろう。

ミサイル「量産」は日本への影響も大きいが、中国も身構える。20日CCTV(中国国営中央テレビ)は異例の「地下の長城」と呼ばれる太行山脈にあるICBM発射運用部隊(東風第1旅団)を紹介した。報道では米軍攻撃を牽制する狙いとされたが、防毒マスク、防護服姿を映し、北朝鮮を強く意識した格好。基地群の総延長は5000kmに及ぶ(南方の四川省山奥の基地群は大地震の影響を受けたとされる)。

危機は静かに潜行、深化しており、機関投資家の慎重な機動的運用体制の維持が続くものと考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/5/24号)




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