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米下院共和党調査委員会の国家安全保障戦略報告書(その1:中国)


米下院の共和党調査委員会(以下、「調査委員会」という)は6月10日、国家安全保障戦略報告書「アメリカの強化および世界的な脅威への対応」を発表した。内容は「共産中国:アメリカにとって最大の脅威に対する新戦略」、「ロシア:侵略への回帰を抑止する戦略」、「前進するアメリカ:中東でのイランとジハーディストとの対立」等である。

調査委員会は、世界で抜群の力を誇示していたアメリカが8年間のオバマ政権でその地位を低下させ、この間に中国の共産党やロシアが完全に野放しになり、イランを増長させたと断定した。その後、トランプ大統領が「アメリカファースト」、「国家の安全と外交政策課題の解決」を進めたことで、アメリカのリーダーシップと信憑性を取り戻したと評価した。調査委員会は、アメリカがどのように世界的な脅威を克服し、最高の力で永久に自由、繁栄、安全を守っていくかについて、議会に対しいくつかの提言をしているので、ここで「その1」として「中国」に関連した内容をみてみよう。

・アメリカが中国に期待していたのは、「市民中心で、自由で開かれた中国」であったがそうはなっていない。中国はアメリカから人類の歴史で最も大きな「知的所有権侵害」を犯し、コンピューターへの侵入など、サイバー窃盗、搾取などにより軍事機密やテクノロジーを得るためにいろいろな手段を駆使してきた。その一つが大学生に中国ひいきの政治的シンパを育成すると言われる「孔子学院」を利用した宣伝戦略である。「孔子学院」は100以上のアメリカの大学に存在しており、中国政府から1億5,000万ドルの支援を得て様々な工作活動を行っている。このため、議会では中国による影響拡大を防止するための法案を可決した。

・中国の人権侵害も看過できない大きな問題である。新疆のイスラム行政区、チベットの仏教行政区での人権侵害・弾圧に加え、キリスト教徒への迫害も増加している。
香港では先日「国家安全法」が制定され、一国二制度の終焉を告げる事態となっているが、これに対しても人権侵害・弾圧行為を処罰する米のグローバル・マグニッキー法に基づき、制裁の対象にすべきだと提言し、中国人民解放軍や国家安全部に関連した者の入国を制限するビザ・スクリーニング・メカニズムの厳格化を推奨した。これに関連し、複数のメディアが「中国共産党最高幹部7名を含む中央政治局員25名はじめ高級幹部およびその家族に対する米国の金融機関の利用と入国が禁止される」と報じている。

・世界最大の通信メーカーである中国企業のファーウェイは、2009年に連邦通信委員会議長により窃盗の罪で告発された。ファーウェイは中国政府からの指示によりIP窃盗、企業スパイ、マルウェアやスパイウェアのインストール等の違法行為を行っているため、注意を要すると指摘されている。オーストラリアではファーウェイの導入を拒絶し、イギリスではシステム開発の許可こそ与えたものの、サイバーセキュリティセンターでの新しいチェックシステムでの検閲を行うと発表した。調査委員会は、同盟国との協力も含めた通信インフラや無線テクノロジーの安全性確保の強化を提言している。

・5月29日にトランプ大統領は、世界保健機構(WHO)からの脱退を表明した。共産中国はCOVID-19発生の直後から感染状況を隠し、物語を操ることに取り組み、医者を沈黙させ、世界的流行の兆候を隠蔽した。WHOは中国を擁護し、情報開示を遅らせ、トランプ大統領提唱の組織改善に着手していない。調査委員会は、トランプ大統領の「WHO脱退の決断」を強く支援していく。

・中国軍は歴史上最も早い近代化を遂げており、アメリカに次ぐ世界第2位の軍隊である。中国は今後ハイテク競争に勝利するために、2030年までに「無人機」、「人工知能」、「サイバー能力」、「量子能力」、「極超音波武器」、「指向性エネルギー兵器」など新しい軍事技術の分野で急速な発展を遂げるだろうと予測されている。これを放置すれば、力の不均衡が生じ、米国や同盟国にとって大きな損失を被る可能性があるので、米国務省とともに国際安全保障確保のための方策をとるよう提言されている。

・最後にインド太平洋における同盟の強化の提言である。2017年のASEANサミット期間中に、アメリカと日本、インド、オーストラリアによるセキュリティアーキテクチャーの構築やASEAN各国との自由貿易協定の締結など具体的措置を講じてきた。その後、さらに台湾、モンゴルとの強固なパートナーシップの構築、自由主義陣営、民主主義国家との連携の強化を図っていくこと、特に南シナ海、東シナ海での中国での領土的野心を否定し、平和と安定を脅かす行動を阻止する戦略策定の提言を行った。


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