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上値切り下げトレンド脱し先高観強まる


[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;33613.52;+445.42TOPIX;2435.62;+30.05


[後場の投資戦略]

 日経平均は33500円台を回復し、8月1日の33488.77円、9月7日の33322.45円を超えてきた。上値切り下げトレンドを脱したことで、先高観が強まる状況となっている。為替の円安基調に加えて、世界経済のソフトランディング(軟着陸)期待が
「世界の景気敏感株」と称される日本株の追い風になっている。

 前日に発表された米8月卸売物価指数(PPI)は、総合が前年同月比+1.6%と市場予想(+1.3%)を上回り、7月(+0.8%)から加速。モメンタムを示す前月比も+0.7%と予想(+0.4%)を上回り、7月(+0.3%)から大幅に加速した。一方、食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比および前月比ともに予想に一致し、前年同月比の鈍化トレンドが続いたことで金融引き締めに対する懸念は強まっていない。

 米8月小売売上高は前月比+0.6%と予想(+0.1%)を大幅に超過、自動車とガソリンを除くベースでも同+0.2%と予想(-0.1%)に反して加速した。ただ、7月分および6月分が下方修正されたほか、食料品店や百貨店など前月から鈍化した項目も多く、こちらも金融引き締め懸念を強めるほどの内容とは捉えられなかった。

 投資家は米国経済の堅調さとインフレ鈍化を同時に確認できたものとして総じてポジティブに捉えているようだ。また、前日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会が開催され、直前になり急速に高まった市場の利上げ予想の通り、0.25ポイントの利上げが決定された。しかし、こちらもECBが経済見通しの軟化を示唆したことで、大半の投資家は今会合での利上げが最後になったとの見方を強めたようで、相場はむしろポジティブに捉えている。

 さらには、景気の低迷長期化が懸念されている中国で14日、中国人民銀行(中央銀行)が今年2回目となる預金準備率の引き下げを発表したことで、中国経済の景気後退懸念も和らいだ。

 結果として、昨日にかけて米国や欧州、中国で確認された一連の出来事はすべて景気後退やインフレ・金融引き締めに対する懸念を和らげる、株式市場にとってポジティブな材料として消化された。

 ただ、今晩の米国市場は株価指数および個別株の先物・オプション取引の4つの取引の決済日が集中する「クアドラプル・ウィッチング」、すなわち米国版のメジャーSQ(特別清算指数)に当たる。この日を境に需給が転換することが多く、来週以降の株式市場の動きには注意したい。振り返ってみれば米消費者物価指数(CPI)も米卸売物価指数(PPI)も総じて上振れ気味の結果であった。米長期金利も高止まりしており、来週以降に再び金利高・株安の局面が訪れる可能性は捨てきれない。

 一方、先週末のメジャーSQ日に日経平均がSQ値を上回れなかったことで「幻のSQ」を演出し、先高観が後退していた日本株は今週末になって上値切り下げトレンドを脱し、SQ値も大幅に上回ってきた。これにより一気に先高観が急速に強まっている。クアドラプル・ウィッチング以降の米国株の動向には要注意だが、金利上昇局面は円安も含めて割安株の多い日本株には相対的に追い風になりやすいとみられ、世界株対比での日本株の底堅さはこの先も続きそうだ。
(仲村幸浩)
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