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コロナ後初の実質金利プラス転換、今晩の米株市場の変調を注視


[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;27139.99;+154.90TOPIX;1909.90;+14.20


[後場の投資戦略]

 前日の米株市場の大幅高に反して、本日の日経平均は上昇してはいるものの、方向感に欠ける動きで強い動きとまでは言えない。一時25日移動平均線を上抜いたものの、その後の失速で、上ヒゲを残し、同線が上値抵抗線として意識される格好となった。明日の日本電産<6594>を皮切りに3月期企業の本決算シーズンが本格化するのを前に、様子見ムードが強く、積極的に買い上がる雰囲気でない状況に変わりはないのだろう。

 前日の米国市場では、ハイテク・グロース株が大幅高だったものの、米10年債利回りは2.94%(+0.08pt)まで大きく上昇。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.93%(+0.01pt)と小幅な上昇にとどまり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は遂に新型コロナショック後で初めてプラスに転じた。実質金利のプラス転換は時間の問題とは思われたが、一昨日の当欄で指摘してから僅か2日と、想定以上のスピードでの実現となった。

 これだけの速いペースでの金利上昇にも関わらず、前日の米株市場ではナスダックが大幅高になるなど、物色動向としてはちぐはぐな印象を受けた。ただ結局、本日の東京市場でハイテク・グロース株の多くが朝高後に失速し、マイナスに転じているのを見る限り、やはり金利に対する警戒感は拭い去ることはできないようだ。実際のところ、前日の米ハイテク株高は、18日の確定申告締切日を通過し、税還付金を手にした短期目線の個人投資家が取引主体だったことが要因として大きいのではないだろうか。上昇率上位の銘柄を見ても、今年に入って大きく売り込まれていたような銘柄が多く、自律反発狙いなど短期目的の買いが中心だった印象だ。中長期目線の投資家が様子見を決め込むなか、最近の取引参加者の多くはこうした短期目線の投資家であると考えられるため、動き方にも整合性がつきそうだ。

 そうしたなか、心配なのは今晩。米企業の決算発表も今後本格化していくが、大型テック企業として個人投資家からの人気も高い、動画配信サービスを提供するネットフリックスが前日の米株市場の取引終了後に先んじて決算を発表した。1-3月のストリーミングサービスの会員数は20万人の純減で、2011年以来の会員減少になったという。また、4-6月にはさらに200万人減るとの予想を示した。これを受け、株価は時間外取引で25%急落した。市場の注目度も高い銘柄だけに、投資家心理を悪化させることは避けられないだろう。また、税還付金を手にしてハイテク株に投資した個人投資家が多いとする仮定が正しいとすれば、これら投資家は早々に含み損を抱えることになり、市場の重しにもなりかねない。

 本日の東京市場では、グロース銘柄が集まるマザーズ指数が朝高後に急失速し、大幅に5日続落となっている。ローソク足は5日連続の陰線で、水準も切り下げ継続、25日線を明確に下放れる格好となっており、明らかに弱さが目立っている。東京市場では、既にネットフリックスの決算を受けた今晩の米株市場の下落を警戒しているようだ。また、米10年債利回りは東京時間の本稿執筆時点において2.96%まで上昇している。今晩にも3%を軽々突破するとなると、金利上昇の歯止めがかかる水準が分からなくなり、警戒した株式売りなども出そうなため、留意しておきたい。上述した背景から、後場の日経平均は下げ渋ったとしても、前場の高値を抜いていくような展開は期待しにくいだろう。後場は上値の重い展開を想定する。
(仲村幸浩)
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