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やはり「FOMC議事録」からが本番だった


[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;28721.49;-610.67TOPIX;2010.93;-28.34


[後場の投資戦略]

 注目されたFOMC議事要旨で米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢が改めて意識され、本日の日経平均は600円を超える下落で前場を折り返した。日足チャートでは、29000円前後に位置する5日移動平均線と75日移動平均線を一気に下抜け。朝方は節目意識の働く29000円近辺で下げ渋る動きも見られたが、支えきれなかった。個別では景気敏感株買い、グロース株売り継続だが、東証1部全体としては8割強の銘柄が下落。挽回生産への期待が持てる自動車株、国内外での新型コロナ感染拡大で供給ひっ迫が続きそうな海運株など、「買える銘柄」は限られるのかもしれない。東証株価指数(TOPIX)は-1.39%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりとなっている。

 新興市場ではマザーズ指数が-4.18%と大幅に4日続落。節目の900ptを割り込み、取引時間中としては昨年5月20日以来の安値を付けている。時価総額上位のメルカリ<4385>など全般軟調。売買代金トップのFRONTEO<2158>は大幅に4日続落しているが、昨年末にかけて信用買い残を大きく積み上げていただけに厳しいところだろう。

 当欄では度々、5日のFOMC議事要旨公表からが新年相場の本番と強調してきたが、やはりと言うべきか、日米株とも急反落を強いられる格好となった。FOMC議事要旨は決定内容を踏まえるとさほどサプライズがあるとも思えないが、「実際にかなりタカ派的なイメージの強いものになった(SMBC日興証券)」などと捉えられている。特に利上げ・バランスシート縮小の加速が「既定事実であるような書きぶり」がタカ派姿勢を強く意識させたようだ。それに金融市場がここ数日、景気高揚への期待を高めるとともに、金融引き締めを織り込む動きがやや薄れていた反動も大きいだろう。

 実際、米国債利回りは5日、短期の年限を中心に大きく上昇。景気の先行きに対する根強い期待もあり、10年物国債利回りは1.70%(+0.05pt)と昨年4月以来の水準に上昇した。一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率
(BEI)は2.53%(-0.04pt)に低下。FRBが「インフレファイター」の姿勢を鮮明にしたことが影響しているのだろう。

 結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇する方向となり、特にハイテク株にとって逆風となっている。もっとも、景気敏感株も「相対的に安心感がある」だけで、株式全体として実質金利の上昇はポジティブではないだろう。市場では金融引き締めによる景気腰折れを警戒する向きがあるほか、利回り水準重視の債券投資家の買いも想定されることから、長期金利が一段と上昇するかどうかまでは見通しづらい。ただ、長期金利の低下圧力、それにBEIの上昇圧力が強まりそうな材料は乏しいとみられる。

 また、日米ともハイテク株の需給状況には厳しいものがありそうだ。市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は昨年12月30日申込み時点で3兆3576億円。12月は一貫して減少が続いていたが、ヒストリカルで見ればなお高水準にある。コロナ禍以降、世界的に個人がレバレッジを効かせた取引を活発化させていたのは昨年末の当欄で指摘したとおり。12月のIPO(新規株式公開)ラッシュと年末の損出し売りを通過すればマザーズ市場の需給状況は改善すると当欄では期待していたが、金利上昇によるハイテク株売りが水を差してしまった格好だ。再び損失覚悟の売りを迫られる個人投資家が多く出てくる可能性がある。

 それに、米国ではハイテク株投資で知られるキャシー・ウッド氏の運用会社アーク・インベストメント・マネジメントの苦境も取りざたされている。同氏に賛同する個人投資家らから資金を集め、「破壊的イノベーション」に投資するという手法は一見すると時流に乗るものと感じられる。ただ、資金流出の懸念が常に付きまとう上場投資信託(ETF)で長期的なイノベーションを見越した投資を行うことは本質的に難しいと筆者は考えている。

 今晩の米国では11月の貿易収支や12月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、明日7日には12月の雇用統計が発表される。その後も経済指標の発表が続き、25~26日にはFOMCと重要イベントが目白押しとなる。方向感を見出すのは容易でないが、警戒感をもって取り組む必要がありそうだ。
(小林大純)
<AK>
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