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米雇用統計・商品高でインフレ懸念一段と


[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;28232.32;-265.88TOPIX;1983.09;-13.49


[後場の投資戦略]

 本日の日経平均は海外株安を受けて200円超の下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、28500円強に位置する75日移動平均線に押し返された格好。テクニカル的にはこの水準が戻りの節目の1つとの見方が多い。もっとも、28000円近辺に位置する5日移動平均線水準まで下落を強いられることもなく推移。業種別騰落率では市況関連セクターが値上がり上位に並び、インフレ観測の根強さを窺わせる。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円弱で、1日を通じては前日(2兆7085億円)をやや上回る水準か。なお、現物株のみならず先物の売買高も足元やや落ち着きつつあり、まとまった売りや買いが出れば相場全体が上下に振らされやすいかもしれない。

 新興市場でもメルカリ<4385>などの主力IT株が軟調で、マザーズ指数は-1.43%と4日ぶり反落。エネチェンジ<4169>やアスタリスク<6522>あたりが賑わい、新興株に逆風となるインフレ懸念がくすぶるなかではまずまず健闘している印象を受けるが、さすがにマザーズ全体としては一段の上昇を試す場面とはなりづらいだろう。

 さて、米国では8日、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.50%(+0.04pt)と5月以来の水準まで上昇。10年物国債利回りも同日、1.61%(+0.04pt)に上昇した。9月雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を大幅に下回る一方、平均時給は予想を上回り、労働需給のひっ迫が意識されるだろう。11日の債券市場は休場だったが、原油を中心とした商品市況の上昇が続き、インフレ懸念はなおくすぶりそうだ。

 また、雇用統計では労働参加率が前回の61.7%から61.6%に低下したことも注目される。「9月にかけて失業給付の上乗せが順次終了し、労働市場に復帰する人々が増える」とみる市場関係者が多かったが、こうした見方に逆行する動きだ。コロナ禍による短期的な影響のみならず、従前述べたように(1)失業長期化や産業シフトによる技能ギャップ、(2)格差拡大による若年層を中心とした労働意識の変化(いわゆる「ロビンフッダー」の増加に象徴される)といった要因から、労働市場への復帰は大方の期待より緩慢となり、需給ひっ迫によるインフレ圧力は長期化する可能性もあるだろう。

 商品市況についても、ファンド勢がスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)を意識して株・債券ショート(売り持ち)と商品ロング(買い持ち)の持ち高構築を進めている可能性がある。こうした状況を踏まえると、インフレ懸念が早期に払しょくされるとの期待は持ちにくい。明日13日は米9月消費者物価指数(CPI)の発表や9月21~22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表が予定されており、これらの内容を見極めたいとの思惑も強まりそうだ。

 経営危機に陥っている中国恒大集団を巡っては、新たにドル建て社債の利払い期日が11日に到来したものの、各種報道によればこれまで支払いはなされていないようだ。引き続き米中の懸念材料を抱え、日本株は外部環境睨みの相場展開を強いられそうだ。なお、本日は国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しが発表される予定。これも各国株式相場の方向感に大きな影響を与えるため、内容を注視しておきたい。
(小林大純)
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