日経平均は4日続伸、依然として先高観強い日本株
5日の米株式市場でダウ平均は199.9ドル安(-0.59%)と3日ぶり反落。債務上限問題の解決や利上げ一時停止観測が下支えしたが、先週末の大幅高を受けた利益確定売りが優勢だった。5月ISM非製造業景気指数が予想外に悪化したことや米当局が大手銀の資本要件を引き上げることを検討しているとの報道も投資家心理を悪化させた。金利低下でナスダック総合指数は上昇して推移する場面もあったが、引けにかけて失速し、-0.08%と3日ぶり小反落。米株安や再び140円を割り込んだドル円を受け、日経平均は229.06円安からスタート。一時31933.87円(283.56円安)まで下落したが、その後は急速に切り返してプラス圏に浮上。中ごろに伸び悩む場面もあったが、前引けにかけては再び騰勢を強め、この日の高値圏で前場を終えている。
個別では、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>、SUMCO<3436>の半導体株の一角が下落。イビデン<4062>、新光電工<6967>は米アップルによる最新チップの発表など、半導体の自社生産を警戒した米インテルの株価下落が影響したもよう。ほか、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、HOYA<7741>などの値がさ株や、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行が下落。郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運が軟調。
一方、レーザーテック<6920>、ソシオネクスト<6526>、ディスコ<6146>など半導体の一角が上昇。三井物産<8031>、住友商事<8053>の商社、日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼も高い。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連は揃って大幅高。株式分割を発表したローム<6963>は年初来高値を更新している。
高水準の自社株買いを発表した立花エレテック<8159>、第3四半期営業利益が通期計画を超過したファーマフーズ<2929>が急伸。子会社がマイクロソフトとのサービス連携を開始したJNS<3627>はストップ高。ほか、業績予想を上方修正した内田洋行<8057>、電気自動車(EV)関連設備の大型案件を受注した平田機工<6258>などが大きく上昇している。
セクターでは鉱業、卸売、鉄鋼が上昇率上位に並んだ一方、銀行、海運、ガラス・土石製品が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の41%、対して値下がり銘柄は55%となっている。
日経平均は32000円割れからスタートも、急速に切り返してプラス圏に浮上し、4日続伸となっている。日経225先物は6日の夜間取引において一時32570円まで上昇。その後、米5月ISM非製造業景気指数が予想外に前月から悪化したことに伴う景気減速懸念や為替の円高により、32060円まで500円超も失速する場面があった。
急ピッチでの上昇の反動が出やすいなか、材料の少ない今週において最も注目されていた経済指標が悪化したことで、分かりやすく米株安・円高に売りで反応したに過ぎないともいえるが、上方向ならまだしも、短時間で500円超も下方向へ大きく動いたケースはここ最近ではほとんど見られていなかったため、基調の転換を感じさせた。
そのうえ、本日は日経平均が32000円も割り込んでスタートしたことで、そうした見方が裏付けられたかとも思った。しかし、完全にこれは杞憂に終わった。上述した通り、日経平均はその後急速に切り返し、プラス圏に浮上している。
日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>の大幅な買い長の状況、および日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の大幅な売り長の状況が続くなか、売り方の買い戻しが下値を支えたとみられている。ただ、それだけではなく、依然としてこれまでの上昇相場のけん引役である海外勢の買い意欲が旺盛であることも挙げられるだろう。やはり、少なくとも今週末の株価指数先物・オプション取引6月限の特別清算指数算出(メジャーSQ)を通過するまでは上方向を見ておいた方がよさそうだ。
一方、中長期的には懸念材料がくすぶる。前日に発表された米5月ISM非製造業景気指数は50.3と4月(51.9)から低下し、改善するとの市場予想(52.4)に反して低下した。景況感の拡大・縮小の境界値である50割れ目前までの低下であるほか、特に新規受注が52.9と前回(56.1)からの低下幅が大きかったこともあり、景気減速懸念が再燃した。
ただ、直近の米サービス業購買担当者景気指数(PMI)とは動きが乖離しているほか、先週末に発表された米5月雇用統計でも力強い雇用者数の伸びが確認されていることから、景気後退懸念で株式市場が大きく下落するほどの内容とまでは判断できない。また、構成項目の仕入価格が56.2と前回(59.6)から大幅に低下し、新型コロナ流行前の水準に近づいてきた点はインフレ鎮静化、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止を示唆する点で株式市場にはポジティブな内容だった。
一方、米当局が金融システム強化に向け策定中の新規制案で、米大手銀行は平均で20%の資本要件引き上げを課される見込みと報道されており、これはマイナス材料だろう。新規制は資産1000億ドル(約14兆円)以上の銀行が対象になるもよう。米当局が現在最も厳格な規制の対象としているのは資産2500億ドル以上の銀行であるため、新規制ではこの基準が大幅に引き下げられることになる。米地銀の数十行も対象となり得るとのことで、貸し出し抑制が一段と強まる恐れがある。まだ確定事項でないうえ、実体経済に影響が出るまでには時間がかかる話であるため、現時点では株式市場への影響は限られると思われるが、懸念材料であることに違いない。
また、これまで相場のけん引役だったハイテク株に上昇一服感が見られている。前日、米アップルは新製品として複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro」を発表した。株価は期待感から一時上場来高値を更新していたが、発表後は出尽くし感から下落に転じた。時価総額が大きく、市場への影響力が大きい同社株が上場来高値更新による達成感やイベント通過による材料出尽くし感からこのまま調整局面入りになるようだと、米株式市場の上値が重くなろう。
ほか、140円台の定着に度々失敗しているドル円の動向も気がかりだ。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、5月30日時点での投機筋による円ポジションは9万6193枚の売り越し。5月中旬から売り越し幅を急速に拡大させてきており、今年に入ってからの最大の売り越し幅となっている。ただ直近の3年間の動向を振り返ると、おおよそ10万枚の売り越し水準をボトムにその後は買い戻しに転じる傾向が見られる。米景気指標の下振れや財務相・日銀ら当局による円安けん制などを背景にドル円の先高観が薄れるなか、今後はじわりと進みそうな円高にも注意したい。
(仲村幸浩)
<AK>
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