日経平均は反落、先行き不透明感強まる中での個別銘柄戦略
22日の米株式市場でダウ平均は530.49ドル安(-1.62%)と大幅反落。連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.25ポイントの利上げが決定された一方、金融不安を受けた不透明感を考慮し、声明文が変更されるなど柔軟な姿勢が見られたことで株価は一時上昇。反面、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が会見で必要に応じた追加利上げを示唆したことやイエレン財務長官が預金保護の拡大を検討していないと言及したことで、先行き不安が再燃し下落に転じた。ナスダック総合指数も-1.60%と大幅に反落。米株安を受けて日経平均は233.64円安からスタート。為替の円高進行も重しとなり、寄り付き直後に27175.63円(290.98円安)まで下落した。ただ、アジア市況が堅調だったほか、時間外取引の米株価指数先物が上昇していたことが支えとなり、その後は下げ幅を縮める展開となった。
個別では、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>の半導体関連が高く、安川電機<6506>、荏原<6361>、三井ハイテック<6966>、TDK<6762>などのハイテクの一角が上昇。日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、住友鉱<5713>、DOWA<
5714>の非鉄金属のほか、スズキ<7269>、三菱自<7211>の輸送用機器やJR東海<9022>、ANA<9202>などの内需系の一角が堅調。リクルートHD<6098>は業績予想における新項目の開示などが好感され大幅高。高水準の自社株買いを発表したメガチップス<6875>は急伸。
一方、三菱UFJ<8306>、T&DHD<8795>の銀行や保険が大きく下落。キーエンス<6861>、ソニーG<6758>などの値がさハイテク株の一角のほか、武田薬<4502>、エーザイ<4523>、第一三共<4568>など医薬品の下落が目立つ。マネーフォワード<3994>、ギフティ<4449>、ラクスル<4384>のグロース(成長)株の一角も大幅安。業績予想を下方修正した日本触媒<4114>、中期経営計画の目標値が市場の期待値に届かなかった島津製作所<7701>なども大きく下落した。
セクターでは医薬品、銀行、保険が下落率上位に並んだ一方、ゴム製品、サービス、空運が上昇率上位に並んだ。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の56%、対して値上がり銘柄は38%となっている。
FOMCでは予想通り0.25ポイントの利上げが決定された。一方、足元の金融システム不安を踏まえ、FRBはFOMC声明文でこれまで採用してきた「継続的な利上げが適切」との文言における「継続的な」の部分を削除。代わりに「幾分の追加的な利上げが適切」との文言を採用した。これを受けて、残り1回の利上げでその後は利上げが停止されるとの期待が高まり、前日の米株式市場は一時上昇した。また、2023年末の政策金利中央値は5.1%と昨年12月会合から据え置かれた。金融システム不安が台頭する前にはターミナルレート(政策金利の最終到達点)が大幅に引き上げられることが予想されていたことを振り返ると、これらの点はややハト派的だった印象を受ける。
しかし、中長期的な観点からは、インフレ抑制に失敗することの方がより大きなダメージを経済にもたらすとの考えから、FRBは今後の経済データ次第では追加の利上げが適切との考えを維持した。また、金融システム不安がもたらす信用収縮の影響を見極める必要性に触れながらも、2023年内の利下げは検討していないとの従来の見解も維持。ほか、金融システム安定化の手段としては金融政策を切り離しているようなイメージを受け、全体的にはタカ派的な印象が勝ったと考える。
加えて、イエレン米財務長官の発言が梯子を外すようなものとなり、この点は素直にネガティブなものだったと評価している。イエレン氏は21日には、金融不安が中小銀行に広がった場合には預金の全額保護などの臨時措置を拡大する可能性を示唆していた。しかし、22日は一転して「(金融システムを安定化させるために)全面的な預金保険を提供することを規制当局が検討していることはない」と言及。預金流出懸念は銀行の貸し出し意欲の低下やリスク資産の圧縮につながり得るため、一昨日の発言はこうした懸念を抑える点から安心感を誘っていたが、前日の発言でこうした期待が一蹴された。銀行経営におけるモラルハザードを防ぐためには同氏の発言は決して間違っていないが、発言内容が二転三転するような印象を与えたのは相場に無用なボラティリティーをもたらしている点で評価できない。
結局、先行き不透明感はくすぶったままで、FOMC通過後もあく抜け感は全く強まっていない。むしろ、前日の米株式市場で不動産、金融、銀行セクターの下落率がとりわけ大きかったことは金融システムに対する不安が再燃していることの証左であり、先行きに関する議論は振り出しに戻ったような印象だ。
こうした中、個別銘柄戦略としては、内需系のセクターを中心にした投資が有効といえそうだ。医薬品や食料品といったディフェンシブ性の高いセクターはもちろんだが、食料品は特に昨年からの値上げ路線継続とコスト高の一服による採算改善が期待される。また、情報・通信やサービスといった内需系のグロース株も相対的な妙味が高いと考える。米国では今後、銀行の貸し出し意欲の低下などを通じて信用収縮の影響が徐々に実体経済を蝕むことが想定され、このシナリオに基づくならば米長期金利は上昇しにくい。こうした金利先高観の後退がグロース株のサポート要因となりそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
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