日経平均は反落、「米金利・中国株への警戒継続」と「短期物色」
週明け2日の米株式市場でNYダウは続落し、97ドル安となった。超党派の上院議員によるインフラ投資計画法案の調整がほぼ完了したと伝わり、週内にも上院で可決されるとの期待からNYダウは一時256ドル高まで上げ幅を広げた。しかし、7月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が予想外に低下し、新型コロナウイルス変異株(デルタ株)感染拡大への警戒感も相まって10年債利回りが再び1.2%割れまで低下。株式市場でも景気減速への懸念が広がった。前日に500円近く上昇した日経平均だが、本日は米株安を受けた売りに押され200円安からスタート。朝方下げ渋る場面もあったが、中国・上海株や香港株の軟調な出足が嫌気され、前場中ごろを過ぎると27492.40円(288.62円安)まで下落する場面があった。
個別では、任天堂<7974>が2%の下落となっているほか、ソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>が軟調。米金利低下で三菱UFJ<8306>などのメガバンク株が売られ、新型コロナ感染拡大の影響が懸念されるJAL<9201>やANA<9202>、このところ買われていた日本製鉄<5401>など景気敏感株の下げも目立つ。決算発表銘柄では大塚商会<4768>、ケーズHD<8282>などが大幅安。また、GMB<7214>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、米半導体株高を支えにレーザーテック<6920>が堅調。商船三井<9104>は4日続伸している。AGC<5201>は業績上方修正を好感した買い優勢。また、EG<6050>やダイトロン<7609>が東証1部上昇率上位に顔を出し、米社による買収観測が報じられたGCA<2174>はストップ高水準での買い気配が続いている。
セクターでは、空運業、鉱業、鉄鋼などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、海運業、精密機器、ガラス・土石製品など4業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の70%、対して値上がり銘柄は25%となっている。
本日の日経平均は海外株安を受けて軟調な展開となり、200円超の下落で前場を折り返した。まだまだ27000円台前半では底堅いと強調する市場関係者は多いが、むしろ日足チャートでは上値切り下げの三角もち合いに煮詰まり感が台頭しつつある印象。かねて当欄で指摘しているとおり、3月高値30485.00円(取引時間中)を付けてからは緩やかな上値切り下げトレンドが続いていたが、7月中旬を境に切り下げペースを加速してきた感がある。業種別では市況関連を中心とした景気敏感株が軟調。AGCなどの好決算銘柄も上値の重さが拭えない。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまり。新興市場ではマザーズ指数が-0.29%と小反落。朝方上昇する場面もあったが、5日移動平均線に沿った下落トレンドを脱せない。信用評価損益の悪化とともに個人投資家の資金回転が鈍っているのだろう。
前日の日本時間には米インフラ投資計画の成立に期待が高まったが、米国時間に入ると製造業景況感の低下や新型コロナ感染拡大への懸念がそうした期待を吹き飛ばしてしまった。米共和党のリンゼー・グラム上院議員の新型コロナ感染が判明し、週内のインフラ法案採決が難しくなるとの見方もあるようだ。結果、NYダウやナスダック総合指数といった米主要株価指数は日足チャート上で長めの陰線を引く格好となり、
高値警戒感が意識されてきているという。
そして懸念していたとおり、ヘッジファンドの売り持ちが積み上がっていた米国債の利回り低下(債券価格は上昇)傾向にも歯止めがかからず、景気減速懸念につながっている。8月から復活した米連邦政府の債務上限問題への警戒感もくすぶっているようだ。原油先物相場の大幅下落を見ても、NYダウの下落幅以上に景気減速懸念は強いとみておいた方がいいだろう。
米金利動向とともに引き続き気掛かりなのが上海株や香港株だ。香港ハンセン指数は先週前半の急落時からやや値を戻したものの、ここ数日は早くも頭打ちといった様相。先週末の当欄で詳しく解説したが、政策の予見可能性に対する信頼が大きく低下したことで、中国国外の機関投資家の本格的な投資再開は当面期待しづらい。その分上値を切り下げるのは必至だが、下値を支えた個人投資家の信用買いは長く続かないだろう。戻りの鈍さに失望する売りが広がれば、再び値動きが不安定化する恐れもある。
これら外部環境の不透明要因に加え、日本でも新型コロナ感染者数が高止まりしており、東京市場の取引状況は活発とは言えない。先週末は4-6月期決算発表の第1のピークだったが、それを受けた前日の東証1部売買代金は2兆4572億円とさほど膨らんでいない。この日、東証1部売買代金トップは商船三井、2位は郵船<9101>となったが、ネット証券の買い注文額でも同様の傾向が見られた。なお、マザーズ売買代金は1059億円にとどまり、このことからも個人投資家の物色の矛先が決算を手掛かりに主力株へ向いたことがわかる。ただ、取引参加者の多くは決算内容以上に値動きを重視する短期勢と考えられる。一部メディアが「好決算後の株高が短命」などと指摘したこととも符合する。
夏季休暇期間で売買が細りがちとなる「波乱の8月」とあって、当面は不安定な相場展開を強いられるとの見方は変わらず。やはり短期の物色中心とならざるを得ないだろう。
(小林大純)
<AK>
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