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日経平均は大幅反落、中国株急落の「本質」を再確認


 日経平均は大幅反落。373.16円安の27409.26円(出来高概算5億3000万株)で前場の取引を終えている。

 29日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反発し、153ドル高となった。4-6月期の国内総生産(GDP)速報値は実質ベースで前期比年率6.5%増と市場予想を下回ったが、個人消費の強さが好感された。連邦準備理事会(FRB)が当面のあいだ金融緩和策を維持する姿勢を示したことや、堅調な企業決算も相場を押し上げた。ただ、日本では29日の新型コロナウイルス新規感染者数が初めて1万人を超え、感染拡大による経済停滞への懸念から本日の日経平均は104円安からスタート。また、注目される中国・上海株や香港株が反落スタートとなったことで日経平均も下げ幅を大きく広げ、前場中ごろを過ぎると27294.05円(488.37円安)まで下落する場面があった。

 個別では、ソフトバンクG<9984>やソニーG<6758>が軟調で、レーザーテック<6920>と任天堂<7974>は3%前後の下落となっている。決算発表銘柄では、ファナック<6954>が業績上方修正にもかかわらず、材料出尽くし感や部品調達への懸念から5%超の下落。富士通<6702>は9%近く下落しているが、受注の回復が鈍いとみられているようだ。また、大日住薬<4506>やアンリツ<6754>も売りがかさみ、東証1部下落率上位に顔を出している。一方、決算が好感されたキーエンス<6861>は5%超、ZOZO<3092>は7%超の大幅上昇となっており、村田製<6981>やルネサス<6723>も買い優勢。業績上方修正のTOWA<6315>などは東証1部上昇率上位に顔を出している。

 セクターでは、医薬品、その他製品、空運業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、海運業、ゴム製品、鉄鋼など4業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の78%、対して値上がり銘柄は18%となっている。

 本日の日経平均は軟調な展開となり、下げ幅を500円近くに広げる場面もあった。このところ月末の波乱に警戒する市場参加者は多いが、本日も週末・月末要因が重なった影響はありそうだ。とはいえ、やはり国内で新型コロナ感染者数がなお増加傾向にあること、また中国株の先行き不安が拭えないことも大きいだろう。前日から決算発表件数が増え、好業績銘柄の一角に買いが入っているとはいえ、東証1部銘柄の8割近くが下落。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりで、閑散というほどではないが取引活発でもない。新興市場ではマザーズ指数が-2.26%と大幅反落。小型材料株や直近IPO(新規株式公開)銘柄の一角を除き、積極的な買いが入っている印象は乏しい。

 さて、中国当局が教育産業の引き締めを巡る市場の懸念払しょくに動いたこともあり、前日の上海総合指数は5日ぶりの反発、香港ハンセン指数は続伸となった。セルサイドからは「教育産業以外への規制の広がりは限定的」との見方が多く出ており、個人投資家にもひとまず株価下落に歯止めがかかったことに安心する向きがあったようだ。しかし、中国企業の株価がこれで落ち着きを取り戻すとみるのは早計と言わざるを得ない。今回の株価急落の「本質」がどこにあるか、改めて確認しておきたい。

 情報があふれかえる昨今、誤解する向きも多いが、本来投資とは単に「夢を買う」のでも「値動きに着目して売買する」のでもない(金融関係者や投資のために勉強を重ねた読者には釈迦に説法で大変恐縮である)。「当該資産の期待収益(キャッシュフロー)から妥当な価格を見積もり、現在価格がそれより割安なら買う」のである。
機関投資家らは日々こうした分析を重ね、投資を行っている。

 この「期待収益から妥当な価格を見積も」るという点が極めて重要である。繰り返し述べているが、今回、中国政府の通知1本で教育産業のビジネスモデルが根本から覆されてしまった。これにより機関投資家らに強く意識されたのは「中国における政策の予見可能性は極めて低いと言わざるを得ない」ということ、また「発生しうる損失があまりに大きい」ということだろう。これで期待収益や妥当な資産価格が正確に測れるだろうか。米アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏が中国ハイテク企業の見通しについて「バリュエーションがリセットされた」「恐らく
(バリュエーションは)下がったままになるだろう」などと述べたのはまさにそういうことなのだ。

 ゴールドマン・サックスのストラテジストが「顧客から中国株は『投資不可能』という言葉がよくささやかれるようになった」などと述べたことが海外メディアで報じられているが、中国国外の機関投資家が中国株への投資を本格的に再開するまでには相当な時間を要するものと考えられる。

 一方、本日の上海株や香港株は売りが先行するも下げ渋る展開となっているが、相場を下支えしているのは株価水準を重視する傾向にある個人投資家の押し目買いだと考えられる。ただ、信用取引で買い向かう向きが多く、既にかなり高水準のレバレッジがかかっているとの話も伝わっている。当面は不安定な展開が続くことも想定しておく必要があるだろう。

 後場の日経平均もそんな上海・香港株の動向睨みとなりそうだが、国内でも新型コロナ感染者数の増加が続き、また本日は決算発表の第1のピークを迎える。これらを見極めたいとの思惑が相場の重しとなり、戻りの鈍い展開になるとみておきたい。
(小林大純)
<AK>
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