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日経平均は反落、米景気の先行き不透明感など嫌気


 日経平均は反落。161.75円安の22948.86円(出来高概算4億7395万株)で前場の取引を終えている。

 前日19日の米国株式相場は下落。ダウ平均は85.19ドル安の27692.88ドル、ナスダックは64.38ポイント安の11146.46ポイントで取引を終了した。新型コロナウイルス追加経済救済策を巡り共和党・民主党指導者は交渉を再開する見通しで、規模を削減しての合意の可能性が報じられ、上昇して寄り付いた。しかし、連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(7月開催分)で下半期の見通し引き下げが示唆されたと同時に、次回会合での追加緩和の可能性にてついて言及がなく、利回りが上昇したことを嫌気して引けにかけて下げ幅を拡大する展開となった。

 米国株安を受けた今日の東京株式市場は売りが先行した。新型コロナウイルス感染拡大や米中対立の激化に対する懸念が継続していることに加え、東京市場でも米国で昨日公表されたFOMC議事録の内容や米金利上昇などが嫌気された。一方、1ドル=106円10銭台と昨日取引時間中の円の安値からさらに50-60銭ほど円安・ドル高に振れたことなどで日経平均は下げ渋る場面もあったが、次第にリスクオフムードが広がり、下落幅が拡大した。

 個別では、月次売上高が3カ月連続での2ケタ成長となったスクロール<8005>が10%
を超す大幅高となり、JR高輪ゲートウェイ駅の日本語音声案内に音声合成「AITalk」が採用されたと発表したエーアイ<4388>、投資先が食品リサイクル事業を開始したと発表したアジア投資<8518>、20年6月期連結営業利益が予想を上回って着地し21年6月期も増益予想の北川精機<6327>、茂木外務大臣が東南アジアを訪問し入国制限の緩和を協議すると報じられたことを受け売上げ回復が期待された日本航空<9201>、テスラのEV向け電池の生産能力を増強すると報じられたパナソニック<6752>、強いトップラインなどを評価して国内証券が格上げしたニフコ<7988>が上げた。

 一方、フィラデルフィア半導体指数(SOX)の下落を受け東エレク<8035>、レーザーテック<6920>などの半導体関連株が総じて安く、村田製<6981>や太陽誘電<6976>など電子部品株も安くなるものが多かった。また、21年2月期連結営業損益が55億円の赤字-75億円の赤字予想と発表したジーフット<2686>が下げた。

 セクターでは、空運業、保険業、陸運業、銀行業、食料品などが上昇率上位。一方、不動産業、電気機器、金属製品、鉱業、精密機器などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の27%、対して値下がり銘柄は67%となっている。

 先週末、海外からひとつのニュースが舞い込んだ。米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイが、米銀行株への投資を減らしカナダの産金最大手バリック・ゴールド株を購入したというものだ。日本経済新聞電子版によると、5月15日発表の3月末時点では保有はゼロだったので4-6月期中に購入したとみられるという。新型コロナウイルス感染が急速に拡大した時期に購入したことになる。報道によるとバフェット氏は「金嫌い」だったそうで、違和感を持った市場関係者も多かったのではないだろうか。

 一方、日本国内の話。日本最大級の金鉱山である菱刈鉱山を保有し産金株とされる住友鉱<5713>が8月7日に21年3月期第1四半期(20年4-6月)決算を発表した。連結営業利益は前年同期比80.2%減の35.43億円。同時に発表した21年3月期連結営業利益は39.3%減の480.00億円予想。どう見ても好業績とは言えない。しかし、翌営業日の同社株は21円高の3395円で、その後は高値圏でもみ合っている。

 たしかに金価格は高騰している。しかし、目先の金価格高騰を手掛かりに、「金嫌い」のバフェット氏が銀行株を売って金鉱山に投資し、8割減益の住友鉱が年初来高値近辺で頑強な動きとなるだろうか。バフェット氏や株式市場は、多くの市場参加者が想定していないシナリオを描き始めているのではないだろうか。

 結論から言うと、インフレだ。新型コロナの経済対策としてかつてない規模のマネーが市場に投入された。米国の6月マネーストック(M2)は前年同月比22.9%増。日本経済新聞によると平時だと5-6%の伸びで、リーマン・ショック後の量的緩和期でも10%を超える伸びにとどまっていたという。マネーの供給は物価上昇を招いている。6月の米消費者物価指数は前月比で2012年以来の大幅上昇となり、7月はエネルギーと食品を除いたコア指数が29年半ぶりの大きな伸びとなった。

 日本はどうだろう。7月のマネーストック(M3)は前年同月比6.5%増で統計が始まってから最大の伸び率。6月のCPIは生鮮食品を除く総合指数で前年同月比横ばい。マネー膨張の影響は消費者物価には及んでいないが、今後注視する必要はあるだろう。
金価格の高騰、著名投資家の金鉱山株保有、金鉱株の高値もみ合い、マネーの膨張、ドルの下落、物価の蠢きなどなど、近い将来のインフレを示唆するシグナルが至る所で発せられている。その中で、明日は日本の7月消費者物価指数が発表される。明日の相場に影響する可能性は殆どないだろうが、これまでのように全く無視して良いということでもないかもしれない。これまで想定していなかったシナリオも頭の片隅に描いておきたい。

 さて、後場の東京株式市場で日経平均はマイナス圏でもみ合いとなりそうだ。前場のTOPIXは0.5%の下げとなっており、日銀によるETF買入れの思惑が働きやすい。一方、下値支持線として意識される25日移動平均線は22700円どころにあり、依然やや乖離がある。また、上海はじめアジアの株価も下げており、東京市場の足かせとなりそうだ。


<AK>

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