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日経平均は続落、マザーズ株高の構図や問われる「PBR1倍回復」の意味


 日経平均は続落。90.20円安の20462.11円(出来高概算5億7000万株)で前場の取引を終えている。

 21日の米株式市場でNYダウは反落し、101ドル安となった。上院が米取引所に上場している中国企業の上場廃止を促す法案を可決したことに続き、香港を巡る対中制裁策を提示する計画が報じられ、米中対立激化への懸念から売りが広がった。ただ、25日に予定される緊急事態宣言見直しでの首都圏の解除への期待や、本日開催される臨時の日銀金融政策決定会合を巡る思惑などから、日経平均は31円高でスタート。日銀決定会合では中小企業の資金繰り支援制度が決まり、事前の想定内と受け止められた。
一方、中国で本日から始まった全国人民代表大会(全人代)で「香港版国家安全法」が議題にあがることが伝わり、香港ハンセン指数が大幅続落でスタート。日経平均もこれにつれて20457.90円(94.41円安)まで下落する場面があった。

 個別では、ソフトバンク<9434>が3%超の下落。ソフトバンクG<9984>が同社株の一部売却を発表し、株式需給の軟化が懸念されたようだ。任天堂<7974>やトヨタ自<7203>は小安く、三菱UFJ<8306>などのメガバンク株は日銀決定会合後に下げ幅をやや広げた。決算発表銘柄ではすかいらーく<3197>が2%超の下落。また、ギークス<7060>などが東証1部下落率上位に顔を出した。一方、ソフトバンクGは資産売却の進展が好感されて3%超の上昇。ソニー<6758>やファーストリテ<9983>は小高い。中小型株では好決算のオイシックス<3182>が大商いとなり、仮想タッチパネルの共同開発が報じられたカーバイド<4064>は東証1部上昇率トップとなった。

 セクターでは、鉄鋼、鉱業、非鉄金属が下落率上位で、その他も全般軟調。半面、空運業、その他金融業、情報・通信業など4業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は31%となっている。

 本日の日経平均は朝方もみ合ったのち、日銀決定会合後の材料出尽くし感や香港を巡る米中対立激化への懸念からやや弱含み。日銀決定会合の内容を巡っては事前に報道で伝わっていたが、前日の為替動向を見ると一部で追加緩和などの思惑があったようだ。全人代に関しては米中対立激化につながるとの懸念が顕在化してきたが、引き続き様子を見たいとのムードが強い。週明けに緊急事態宣言の見直しが予定されていることも積極的な売買を手控える要因だろう。日経平均の日足チャートを見ると、20400円台前半に位置する5日移動平均線水準までいったん調整した格好だ。

 売買代金上位では、保有株売却を巡りソフトバンクGとソフトバンクが明暗分かれているほかは総じて小動き。業種別騰落率では商品関連セクターの軟調ぶりが目立ち、内需・ディフェンシブセクターは相対的に底堅い。入国制限緩和に向けた議論が始まったことから、空運株やH.I.S.<9603>などの旅行関連株は強い動きだ。ここまでの東証1部売買代金は9000億円弱と減少傾向が続く。新興市場ではマザーズ指数が6日続伸し、前週末から100pt近く上昇している。

 前引けの東証株価指数(TOPIX)は0.50%の下落となっており、後場は日銀による上場投資信託(ETF)買い入れが実施される公算が大きい。しかし、前述のとおり全人代で香港を巡るリスクが浮上し、ハンセン指数が大幅に下落。中国・上海総合指数も本稿執筆時点で下げ幅を1%前後に広げてきており、後場は海外投資家による株価指数先物への売りが出てくる可能性がある。大方の投資家は模様眺めムードを強め、日経平均は軟調もみ合いになるとみておきたい。

 さて、このところ当欄では、株式相場全体としては底堅い一方で上値も重く、積極的な取引参加者はマザーズ等への物色シフトを進めると度々予測してきた。ここまでの相場動向はこうした予測に沿ったものと言えるだろう。日銀ETF買いなどが強力な下支えとして機能する一方、投資家は経済や企業収益の回復への自信を深められず、日経平均の硬直感が増してきたことから個人投資家を中心にマザーズ等への物色シフトが進む構図だ。低金利環境の長期化観測や新型コロナウイルスによる社会変化もこうした構図を支え、当面は揺らぎそうにない。

 なお、一部の市場関係者からは日経平均の株価純資産倍率(PBR)1倍回復に伴い、出遅れているシクリカルバリュー株(景気敏感系の割安株)のリバーサル(株価の反転上昇)に期待する声が増えている。しかし、今のところ代表的なシクリカルバリュー株に本格的なリバウンドの兆しは見えない。個人投資家や機関投資家を対象とした各種調査の結果を見るとなお弱気派が多く、従来どおり「PBR1倍回復=経済・企業収益の回復期待高まる」と捉えるべきか改めて問い直す必要もあるだろう。これらセクターには、コロナショック以前から構造的に苦境という業種も少なくない。
(小林大純)


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