
現金の強みは「使い道を本人に任せられる」こと
現金9万円の最大のメリットは、父自身が必要なものに使えることです。退職後は仕事用の服や通勤費が減る一方、趣味、旅行、健康管理など新しい支出が増えることもあります。家族が良かれと思って選んだ物より、自分で使い道を決められる方がうれしい人もいるでしょう。
特に、父が「退職後に欲しい物がある」「旅行は自分の好きな時期に行きたい」と考えているなら、現金や商品券の方が自由度は高くなります。兄が現金を勧めるのは、合理的な考え方といえます。
旅行の価値は「9万円を使い切ること」だけではない
一方、旅行を贈る場合は、宿泊や食事そのものだけでなく、家族で計画した時間や写真、会話も含めて贈り物になります。退職という節目は一度しかありません。数年後に振り返ったとき、「あのとき兄妹で旅行を贈ってくれた」という記憶が残る可能性があります。
ただし、旅行は本人の希望に合わなければ負担にもなります。長距離移動が苦手、知らない場所へ行くのが好きではない、家を空けたくないなど、好みは人それぞれです。家族が楽しそうだからという理由だけで決めるのではなく、父の性格や体調も確認したいところです。
「旅行か現金か」の二択にしなくてもよい
9万円をすべて旅行に使うか、すべて現金にする必要はありません。例えば兄妹3人で合計6万円程度の1泊旅行を用意し、残り3万円を食事代や小遣いとして渡す方法もあります。あるいは家族で少し豪華な食事をして、残りを現金で贈る方法も考えられます。
こうすれば、思い出と自由度の両方を残せます。父本人に「退職後にやってみたいことはある?」と自然に聞いておけば、希望を探ることもできます。サプライズにこだわりすぎず、本人が喜ぶことを優先する方が失敗は少ないでしょう。
9万円の贈り物なら贈与税を過度に心配する必要は通常ない
現金を贈る場合、税金が気になる人もいるでしょう。贈与税の暦年課税には、受け取る人1人につき年間110万円の基礎控除があります。父がその年に兄妹から受け取る9万円だけで、ほかの贈与を合わせても110万円以内なら、通常はこの基礎控除の範囲です。
ただし、兄妹それぞれが110万円まで贈れるという意味ではありません。父が1年間に受けた贈与を合計して考えます。今回の退職祝いだけなら大きな問題になりにくい金額ですが、ほかにも高額な贈与を受けている場合は確認しておくと安心です。
まとめ
現金9万円には「自由に使える」という強みがあり、旅行には「節目の思い出を残せる」という強みがあります。どちらが優れているかではなく、父が何を大切にしているかで決めるのがよいでしょう。迷う場合は、旅行と現金を組み合わせる方法もあります。
退職祝いの目的は、9万円を最も効率よく使うことではなく、長年働いた父へ感謝を伝えることです。本人の性格や体調、退職後にやりたいことを兄妹で話し合い、父にとって負担にならず、後から振り返ってうれしい形を選びましょう。
出典
国税庁 暦年課税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
