
定年退職後1年目に支払いが必要なもの
定年退職した後、1年目に支払いが必要なものは主に次の3つです。
・住民税
・健康保険料(国民健康保険もしくは任意継続)
・介護保険料
それぞれ詳しく見ていきましょう。
住民税
住民税は、前年の所得をもとに計算されるため、定年退職後の1年目は現役時代と同じになります。また、退職時期によって一括天引きされるか、納付書で納めるかが異なります。
1月~5月に退職した場合は、最後の給与もしくは退職金からまとめて一括天引きされます。6月~12月に退職した場合は、自治体から納付書が自宅に郵送され、一括または分割して納付します。
健康保険料
定年退職後は、国民健康保険に加入するか、現役時代に加入していた健康保険を任意継続するかを選びます。国民健康保険料は、世帯単位で算定されます。国民健康保険料は、大きく応能割と応益割の2つで構成されています。
応能割は、被保険者ごとの所得や固定資産税などの負担能力に応じて決められます。応益割は、被保険者もしくは世帯ごとに応じて負担するものです。前年の所得と自治体ごとの保険料率に基づいて算定されるため、定年退職後1年目は高額になる傾向にあります。
健康保険を任意継続する場合の保険料は、退職時の標準報酬月額に自治体の保険料率を掛けた金額です。ただし、標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、32万円を標準報酬月額として算出します。
介護保険料
介護保険は、40歳以上が加入し、65歳以上の人が第1号被保険者、40歳から64歳までの人が第2号被保険者となります。
第1号被保険者の保険料は、サービス基盤の整備状況やサービスの利用見込みに応じて保険者ごとに設定され、原則として年金から天引きされます。第2号被保険者の保険料は、標準報酬月額に介護保険料率をかけて算出され、健康保険料と一緒に給与から天引きされます。
現役時代の年収700万円なら定年退職後1年目の支払いはいくら?
住民税や国民健康保険料は、前年の所得に基づいて算出されるため、定年退職後1年目は現役時代と同程度になる傾向にあります。
ここからは、年収700万円だった場合、実際にいくらになるのかシミュレーションしてみましょう。なお、今回のシミュレーション条件は次の通りです。
・年収700万円(標準報酬月額58万円)
・東京都三鷹市在住
・配偶者・扶養なし
・在職時の社会保険料は年収の16%
住民税
住民税を求める前に、まずは課税所得を算出します。課税所得を算出する際に必要な控除は次の通りです。
・給与所得控除:700万円×10%+110万円=180万円
・基礎控除:43万円
・社会保険料控除:700万円×16%=112万円
課税所得は次の計算式で求められます。
700万円-180万円-43万円-112万円=365万円
住民税は所得割額と均等割額で構成されています。所得割額の計算式は次の通りです。
所得割額=課税所得×税率10%-税額控除額
今回のケースでは税額控除額は2500円のため、上記の式に当てはめると以下のようになります。
365万円×10%-2500円=36万2500円
均等割額4000円、森林環境税1000円と合わせると次の通りです。
36万2500円+4000円+1000円=36万7500円
定年退職後1年目の住民税は、36万7500円となりました。
国民健康保険料
次に、定年退職後に国民健康保険に加入した場合の保険料をシミュレーションしてみましょう。国民健康保険料は、基礎課税、後期高齢者支援金、介護納付金、子ども・子育て支援金の4つで構成されています。
なお、介護納付金は40歳以上65歳未満の被保険者のみ課税されるため、今回のケースでは課税されません。
また、国民健康保険料を求める際に必要な算定基礎額は、給与から給与所得控除、基礎控除を差し引いた金額です。今回のケースでは、次のようになります。
700万円-180万円-43万円=477万円
それぞれ計算式に当てはめて求めます。
基礎課税分:所得割(算定基礎額×6.1%)+均等割(被保険者数×2万9000円)
(477万円×6.1%)+1人×2万9000円=29万970円+2万9000円=31万9970円
後期高齢者支援金等課税分:所得割(算定基礎額×2.3%)+均等割(被保険者数×1万1800円)
(477万円×2.3%)+(1人+1万1800円)=10万9710円+1万1800円=12万1510円
子ども・子育て支援納付金課税分:所得割(算定基礎額×0.3%)+均等割(被保険者数×1846円)+18歳以上均等割(被保険者数×98円)
(477万円×0.3%)+(1人+1846円)+(1人×98円)=1万4310円+1846円+98円=1万6254円
3つを合計すると、以下のようになります。
31万9970円+12万1510円+1万6254円=45万7734円
任意継続した場合の健康保険料
任意継続した場合の健康保険料をシミュレーションしてみましょう。退職時の標準報酬月額は58万円で、32万円を超えているため、32万円の標準報酬月額により算出した保険料となります。
会社負担がなくなり、全額自分で負担となり、月額は3万2256円です。1年間の健康保険料は次のようになります。
3万2256円×12ヶ月=38万7072円
国民健康保険に加入した場合と比較して、約7万円抑えられることが分かりました。
介護保険料
最後に、介護保険料を計算してみましょう。介護保険料を求める際の合計所得金額は、収入から給与所得控除、必要経費を控除した金額で、基礎控除などの所得控除をする前の金額です。そのため、今回のケースでは次の計算式で求めた金額が合計所得金額です。
700万円-180万円=520万円
東京都三鷹市では、所得に応じて介護保険料が19段階に分けられています。今回のケースでは、第11段階で年額の介護保険料は15万8400円です。
定年退職後1年目の税金・社会保険料の支払額は?
3つの金額をそれぞれ算出できたため、合計を求めてみましょう。国民健康保険に加入した場合は、次の金額になります。
36万7500円+45万7734円+15万8400円=98万3634円
次に、健康保険を任意継続した場合の金額を求めてみましょう。
36万7500円+38万7072円+15万8400円=91万2972円
国民健康保険に加入した場合は100万円に近い金額となりました。健康保険を任意継続したほうが安く抑えられますが、それでも90万円を超える結果となりました。
定年退職後1年目の支払いは前年並みになる傾向にあることを理解しておこう
住民税や国民健康保険料、介護保険料は前年の所得に応じて算出されるため、定年退職後1年目は前年並みの金額となる傾向にあります。
住民税は退職時期によって一括で天引きされるため、収入がないなかで老後資金が大きく減り、焦りを感じるかもしれません。また、年金収入や給与収入がある場合は、所得税も発生します。
健康保険は、国民健康保険に切り替えるか、会社の健康保険を任意継続するかで1年目の支出額が大きく変わるケースがあります。退職前に比較シミュレーションをしておきましょう。
出典
全国健康保険協会 全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分~)(東京支部)
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
