
エレベーターは一般にマンションの「共用部分」
区分所有法では、共用部分は原則として区分所有者全員の共有とされ、規約に別段の定めがなければ、その負担も持分に応じて区分所有者が負う仕組みです。エレベーターは一般に共用部分として管理されるため、通常の故障や経年劣化の修理を管理費や修繕積立金から支出することは自然です。
この意味では、管理組合がまず12万円を支払うこと自体が直ちにおかしいわけではありません。設備を早く復旧させるため、原因者への請求を待たずに修理する必要がある場合もあるからです。
ただし「特定の人が壊した」なら話は別
問題は、その12万円が通常の故障ではなく、特定の子どもの行為によって生じたと確認できる場合です。民法709条では、故意または過失によって他人に損害を与えた場合に損害賠償責任が生じるとされています。
また、子どもが年齢や理解力の関係で自分の行為の責任を理解できない場合には、民法712条・714条により、一定の場合に監督義務者である保護者が責任を負うことがあります。ただし、子どもが関わったからといって保護者が必ず全額負担するわけではなく、責任能力や監督状況、因果関係などによって判断されます。
「全階ボタンを押した」だけで12万円の原因と決めつけない
ここで注意したいのは、全階ボタンを押したことと、12万円の修理が必要になったことの因果関係です。通常のボタン操作の範囲で故障したのであれば、設備側の不具合や老朽化が関係している可能性もあります。
一方、ボタンを強くたたいた、繰り返し乱暴に操作した、異物を入れたなど、通常の使用を超える行為によって故障したことが点検記録などで確認できるなら、原因者側への請求を検討しやすくなります。管理組合としては、修理業者の報告書や防犯カメラなどで原因を確認することが重要です。
50世帯で2400円ずつ負担して終わり、とは限らない
12万円を50世帯で均等に割れば1世帯あたり2400円です。金額だけ見れば「それくらいなら管理費で」と考える住民もいるでしょう。しかし、管理費は住民全体の財産です。特定の人の責任による損害まで毎回共同負担にすると、同じ問題が起きたときの公平性が保ちにくくなります。
国土交通省のマンション標準管理規約は、マンション内の費用負担や共用部分の管理について各マンションの管理規約でルールを定める考え方を示しています。実際に原因者へ請求できるかは、そのマンションの規約や使用細則も確認する必要があります。
管理組合に確認したい4つのポイント
住民としては、単に「2400円なら仕方ない」と考える前に、まず修理の原因、修理業者の説明、管理規約の費用負担ルール、原因者側への請求を検討したか、を管理組合に確認するとよいでしょう。
原因が特定できず通常故障との区別がつかないなら、共同負担になることもあります。反対に、故意や過失による破損が明確なら、管理組合がいったん修理費を支払った後に、原因者へ求償する方法も考えられます。
まとめ
マンションのエレベーターは共用設備なので、修理費12万円をいったん管理費などから支出すること自体は不自然ではありません。ただし、特定の子どものいたずらが故障の原因と確認できるなら、「共用部分だから住民全員で負担して終わり」とは限りません。
重要なのは、子どもの行為と故障との因果関係、責任能力、保護者の監督責任、そしてマンションの管理規約です。50世帯で2400円ずつという金額の小ささだけでなく、今後も同じルールでよいのかという公平性の観点から確認することが大切です。
出典
e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律
e-Gov法令検索 民法
国土交通省 マンション管理
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
