
税制上は違いがある
税制上、法律婚と事実婚の違いが生じる代表的なものとして、所得税における配偶者控除・配偶者特別控除があります(※1)。
配偶者控除とは、納税者に控除対象の配偶者がいる場合、納税者の所得から一定の金額を控除することができる制度で、所得税を軽減することができます。
配偶者控除の対象となるのは、民法上の規定による配偶者のみであり、事実婚は認められていません。
年金制度では一定の要件を満たす事実婚も配偶者となる
年金制度で婚姻関係が問われるものには、老齢年金における加給年金と遺族年金があります。
1. 老齢厚生年金の加給年金とは
老齢厚生年金の加給年金とは、厚生年金の被保険者期間が原則として20年以上ある方が65歳になって老齢厚生年金を受給するときに、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加給年金額が加算される制度です(※2)。
2. 遺族年金の受給権者は
遺族基礎年金は、死亡した方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受給権者となります(※3)。
遺族厚生年金は、死亡した方に生計を維持されていた遺族のうち、一定の要件と順位に該当する配偶者や子などが受給対象者となります(※4)。
3. 年金制度では事実婚も認められる
年金制度では、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があり、それらの事実関係があると認められる場合は、事実婚であっても生計を維持されている配偶者として認められることがあります(※5)。
そのため、一定の要件を満たして事実婚関係が認定されれば、事実婚の配偶者であっても、老齢厚生年金の加給年金や遺族年金の対象となる場合があります。
相続問題では大きな違いがある
相続問題では、民法上の法定相続人になることができるか否かで大きな違いがあります。
1. 法定相続人とは
死亡した人の配偶者は、常に法定相続人となることができ、法定相続分に応じた財産を相続することができます。なお、配偶者として法定相続人になることができるのは法律婚のみで、事実婚では相続人になることはできません(※6)。
2. 法律婚の配偶者は相続税額を軽減される
相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した人に課税されます。相続税の総額を計算したうえで、原則として各人が実際に取得した財産の額などに応じて、各人の納付税額を計算します。
法律婚の配偶者が実際に取得した財産については、一定の要件のもと、次の金額のどちらか多い金額まで相続税がかからない「配偶者の税額軽減」があります。
(1)1億6000万円
(2)配偶者の法定相続分相当額
まとめ
年金制度では、事実婚であっても一定の要件を満たせば、法律婚の配偶者と同様に遺族年金などを受給することができます。
しかしながら、相続に関しては、事実婚のパートナーは法定相続人にはならないため、法律上当然に相続財産を取得する権利はありません。相続人ではない人に財産を承継させる方法として、遺言によってその人に財産を遺贈する方法があります。
また、事実婚では、税制上の配偶者と認められないため、所得税や住民税における配偶者控除や、相続税における配偶者の税額軽減を受けることはできません。
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー No1191 配偶者控除
(※2)日本年金機構 加給年金と振替加算
(※3)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※4)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
(※5)厚生労働省 生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて
(※6)国税庁 タックスアンサー No4132 相続人の範囲と法定相続分
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
