
NISA非課税枠は相続できない! 死亡時の基本ルール
NISA口座はあくまで「個人の非課税制度」であり、名義人が死亡した時点で非課税の優遇措置は失効します。配偶者であっても、夫のNISA口座に預けられていた投資信託や株式をそのまま自分のNISA口座へ移管(引き継ぎ)することは認められていません。
夫が死亡した場合、NISA口座内の資産は「死亡した日(相続開始日)」時点の時価評価額で、遺族が受け取るための「課税口座(特定口座または一般口座)」へ移管されることになります。この時点では、死亡時の時価が新しい取得価格とみなされるため、相続直後にただちに税金が発生するわけではありません。
非課税枠の消失で「100万円以上の税金」が発生する理由
注意が必要なのは、相続後に遺族がその資産を売却せず、そのまま運用を続けた場合です。
例えば、夫が元本500万円で始めたNISA運用が、死亡時に1000万円に成長していたとしましょう。死亡時の評価額は1000万円となるため、妻の特定口座には取得価格1000万円として移管されます。
その1000万円を妻がそのまま運用し続け、さらに資産が大きく成長して1500万円になった段階で売却したと仮定します。この場合、妻の特定口座の売却益は、1500万円から取得価格1000万円を差し引いた500万円です。
NISAではない投資の利益には20.315%の税金(所得税など)が課されるため、500万円の利益に対して約102万円の税金が発生します。
もし夫が生きていて、NISA口座のまま運用を続けて売却できていれば、利益がどれほど増えても税金は0円でした。しかし、死亡によって相続人の「課税口座」へ移された場合は、課税対象として運用されるため、100万円以上の税金を支払うことになるのです。
税金負担を抑える相続対策
夫が遺したNISA資産を、遺族が守るためには、生前の準備と相続後の迅速な判断が不可欠です。
相続後、妻自身のNISA口座へ買い直す
夫のNISA口座から特定口座へ移管された資産を速やかに売却すれば、移管後の利益(値上がり益)がほとんど発生しないため、譲渡益税を発生させずに現金化できます。
売却して得た現金を使って、妻自身のNISA枠(年間最大360万円、生涯1800万円)で同じ銘柄を買い直せば、値上がり益を再び非課税で運用することが可能です。
生前贈与の活用
あらかじめNISAを遺産とすることを決めている場合、生前贈与を活用して家族に渡しておくという選択肢もあります。
夫が生前にNISA内で増えた資産の一部を適宜売却し、非課税で現金化しておいた上で、年110万円の贈与税の基礎控除枠などを利用して妻へ現金で贈与しておきます。現金であれば、妻は自分のNISA口座で最初から運用を開始できます。
仮に別の資産にNISA資産を加えることで相続税の控除額を超えてしまう際にも、課税を防げるでしょう。
非課税枠の消滅を理解し、相続後の買い直しで資産を守る
夫がNISAで1000万円の資産を築いても、死亡時には非課税枠を引き継ぐことはできず、課税口座へ移管されます。
移管後にそのまま運用を続けて資産が値上がりした場合、通常通り投資の利益に対し、20.315%の税金がかかり、場合によっては100万円以上が課税されることもあるため、注意が必要です。
生前に「万一のときはNISA資産を遺族年金の足しに」と考えている場合は、NISAの非課税枠が一代限りであることを家族で正しく理解しておくことが大切です。
夫の死亡後は、課税口座へ移管された資産をそのまま放置せず、妻自身のNISA口座へ買い直すなどの適切な出口戦略を実行することで、大切な資産を守れるでしょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
