
500万円はリフォーム相場の「上限圏内」
まず、500万円という金額が、リフォーム市場でどの位置づけなのかを確認しましょう。内容次第では、むしろ妥当な範囲と読み取れます。
水回り一式とバリアフリーなら妥当な範囲
キッチン・浴室・洗面台・トイレの水回り4点セットの相場はおよそ100万~300万円、仕様次第で150万~400万円前後です。手すり設置(およそ1万~15万円)や段差解消(およそ3万~25万円)のバリアフリー工事を合わせると、500万円は水回りと安全性を一式整える金額として、特別にぜいたくとは言い切れないでしょう。
問題は「何に使うか」と「優先順位」
大事なのは見た目のグレードではなく、生活の安全と水回りの機能です。高齢期の自宅リフォームは「安全・水回り・バリアフリー」を優先し、予算が余ってから内装などに回すのが大事なポイントです。500万円の配分次第で、使いすぎかどうかは変わります。
500万円を捻出すると、残る手元は1000万円
残る1000万円で老後生活費をどこまでまかなえるのか、総務省の「家計調査」の数字を基に考えてみましょう。
毎月の赤字を補てんできる「年数」を計算する
総務省の「家計調査報告 家計収支編(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月約4万2000円の不足が生じています。
単身の無職世帯では、毎月約3万円の不足です。この不足が続く前提なら、1000万円は夫婦でおよそ19年分、単身ならおよそ27年分を補える額に相当します。ただし、年金以外の収入や支出の見直しによって、資産を取り崩すペースは変わります。
医療・介護の予備費は確保しておく
生活費とは別に、突発的な支出への備えも必要です。生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」(2024年度)によれば、介護にかかった一時費用は平均47万2000円、月々の費用は平均9万円となっています。リフォーム後に介護が必要になった場合に備え、まとまった予備費は残しておきたいところです。
工事の優先順位をつけ「部分リフォーム」に切り替える手段も
リフォーム代500万円に対して、少しでも不安がよぎるのであれば、そのまま進める必要はありません。500万円の工事を一度に行うのではなく、「本当に今必要な工事」だけに絞り込んで予算を下げる方法もあります。
例えば、外壁塗装や雨漏り修繕といった「家の寿命に関わる部分」と、お風呂の「安全対策」だけを最優先し、キッチンの交換や内装の模様替えは見送る、といった選択です。
予算を300万円に抑えることができれば、手元には1200万円が残ります。この「200万円のゆとり」があるだけで、将来の生活費の取り崩しや医療費への不安は精神的に大きく軽減されるでしょう。
制度をフル活用すれば、実質負担は減らせる
高齢者の住宅改修には、費用を抑える公的制度があります。これらを組み合わせて計画を立てることで、リフォーム費用の実質の負担を減らすことができます。
介護保険の住宅改修費(上限20万円)を確認
要介護・要支援認定を受けていれば、手すり設置や段差解消などの対象工事は、上限20万円まで自己負担1~3割で改修できます。20万円分の工事なら自己負担は数万円程度になります。まずはこの制度に該当する工事がないか確認するようにしましょう。
自治体の補助制度と税金の優遇も狙う
自治体によってはバリアフリー改修の補助制度があります(例:熊本市の高齢者住宅バリアフリー化改修費補助金)。また、一定の要件を満たすバリアフリー改修は、所得税の住宅特定改修特別税額控除の対象となる場合があります。固定資産税についても、一定の要件を満たせば、翌年度分が3分の1減額される制度があります。
まとめ
自宅リフォームに500万円をかけることは、水回りとバリアフリーを一式整える内容ならば、使いすぎとまではいえないでしょう。
ただし、70歳で老後資金1500万円のうち500万円を自宅リフォームに使うことが使いすぎかどうかは、単純に金額だけでは判断できません。大切なのは、リフォーム後に残る1000万円で、その後の老後生活費や医療費・介護費などに対応できるかを確認することです。
リフォームを検討する際には複数社から見積もりを取り、内容によっては、工事を優先順位に分け、必要な部分から実施する方法も考えられます。老後の費用面が不安な場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのもよいでしょう。
出典
総務省 家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要
公益財団法人生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?
横浜市 介護保険の住宅改修費について
熊本市 高齢者住宅バリアフリー化改修費補助金
国税庁 No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
横浜市 バリアフリー改修工事を行った住宅に係る固定資産税の減額制度
執筆者 : 小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)
