
給与からの強制天引きは「賃金全額払いの原則」に違反しないか
そもそも、会社が従業員の給与から一方的に懇親会費などを天引きすることは可能なのでしょうか。まず、労働基準法第24条では、賃金は原則としてその全額を労働者に支払わなければならないとする「賃金全額払いの原則」が定められています。
税金や社会保険料など法令に定められたもの以外を給与から控除する場合は、会社と労働者の過半数代表者などとの間で、書面による労使協定の締結が必要です。親睦会費や旅行積立金などを給与から控除する場合も、このルールの対象となることがあります。
まずは、就業規則や雇用契約書、給与規程などに懇親会費の徴収に関する記載があるか、さらに給与から控除する場合の労使協定が締結されているかを確認することが大切です。
中途入社なのに「入社前の未納分」を請求された際の確認ポイント
毎月1000円の積立について適切なルールが設けられていたとしても、9月入社の社員に対して「1月~8月分までの未納分8000円+9月分の1000円、合計9000円」を請求された場合は、その根拠を確認する必要があります。
入社前はその会社の従業員ではないため、通常は入社前の期間について当然に親睦会費を負担しなければならない必要はないと考えられます。ただし、親睦会がどのような形式で運営されているのか、加入時期や会費についてどのような規約が定められているのかによって扱いは変わる可能性があります。
そのため、「入社前の期間だから絶対に支払う必要がない」と決めつけるのではなく、まずは「なぜ入社前の分まで支払う必要があるのか」という根拠を会社に確認しましょう。
また、自由参加の行事とされている場合、加入を断ることができるのか、退職時や脱退時に積み立てたお金を精算・返金するルールがあるのかなども、確認しておきたいポイントです。
特に会費の使途や管理方法が明確になっていない場合には、「集めたお金が何に使われているのか」「誰が管理しているのか」などを確認しておくと安心です。
人間関係を壊さずに確認・対応するための方法
入社直後のタイミングで「法律違反だから払わない」と真正面から主張すると、その後の職場での人間関係に影響する可能性があります。冷静に「ルールを確認したい」というスタンスで、人事や経理などの担当者に質問してみましょう。
「9月入社なのですが、私が在籍していなかった1月~8月分の費用をお支払いする社内規定や親睦会規約があれば、念のため確認させていただけないでしょうか?」
「もし懇親会に都合がつかず参加できなかった場合や、退職する際には、これまで積み立てた費用はどのような形で精算・返金されるルールになっていますか?」
このように「払いたくない」といった感情を前面に出すのではなく、「会社のルールを正しく理解したい」という姿勢で、規定や規約の提示を求めることがポイントです。
会社側から明確な根拠が示されれば、その内容を確認したうえで対応できます。一方、「昔からの慣習だから」「みんな払っているから」といった説明だけで、入社前の会費を請求された場合には、なぜ支払う必要があるのかなど具体的な根拠を確認しましょう。
会社との話し合いだけでは解決が難しい場合には、労働基準監督署や労働局の相談窓口、社会保険労務士などに相談する方法もあります。
金銭に関するルールが不透明なら、そのままにしない
懇親会費として月1000円を給与から控除すること自体は、適切な労使協定などの要件を満たしていれば、直ちに違法となるわけではありません。しかし、「入社前の8000円」まで請求された場合には、どのような規定や契約上の根拠に基づく請求なのかを確認することが重要です。
金額だけを見れば、8000円は大きな負担ではないかもしれません。しかし、従業員から集めるお金について、使途や徴収方法、加入・脱退のルールなどが明確になっていないのであれば、放置せず確認しておきたいところです。
入社直後だからといって、いわれるがまま支払う必要はありません。就業規則や親睦会の規約、給与から控除する場合の労使協定などを確認し、「なぜこの費用を支払う必要があるのか」を冷静に確認しましょう。
納得できない点がある場合は、根拠となる規定の提示を求めることが、職場での人間関係をできるだけ維持しながら自分の権利を守るための第一歩となります。
出典
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 労使協定の作成について(令和7年度に向けて)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
