
民法が定める「竹木の根」の切除ルールと費用の原則
隣の家から植物が越境してきた場合のルールは、民法第233条に定められています。ここで重要なのは、「枝」と「根」で法律上の扱いが異なるという点です。
・枝が越境した場合:原則として所有者に切除を求めるが、催告しても応じないなどの場合は自ら切除可能(※2023年改正民法)
・根(地下茎)が越境した場合:侵入された側(自分)がいつでも催告なしで切り取ることができる(民法233条4項)
ササが敷地内に生えてくるのは、地下茎(根)が境界を超えて伸びてきている状態と考えられます。したがって、民法上は、越境してきた根を自身の判断で切り取ることが認められています。
隣人に「自分で切って」と言われたことも、態度としては無責任に感じられますが、根の切除に関する法律上の原則とは合致しています。
ただし、この「自分で切除できる」というルールがあるからと言って、業者に依頼して切除にかかった費用を隣人へ請求できるとは限りません。費用負担は、事前の合意や被害の状況など、個別の事情をふまえて判断する必要があります。
事後請求は困難! 業者に払う「5万円」の法的ハードル
もし、隣人に無断で造園業者などを手配し、5万円をかけてササの駆除と防草シートを設置したとします。
後日、その領収書を隣人に提示して「そちらのササが原因でかかった費用なので5万円を払ってほしい」と請求しても、隣人が支払いを拒否した場合、全額を回収できないことも考えられます。
一方、民法第717条では、竹木の植栽や管理に瑕疵(かし、通常備えるべき安全性に欠けること)があって他人に損害が生じたときは、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うことが定められています。
しかし、ササの繁殖は自然現象として生じる側面もあるため、業者による駆除費用を不法行為に基づく損害として請求できるかどうかは、被害の程度や隣人の対応など、具体的な事情によって判断が分かれるところです。
事後的に業者費用の全額を請求しようとすると、法的な根拠や費用の相当性を争うことになる可能性があります。近隣関係への影響も考え、できるだけ事前に話し合っておくことが重要です。
費用負担を求めるための「事前交渉」と3つの手順
自腹での出費を避け、相手に費用負担や根本的な対策を促すためには「事後請求」ではなく「事前交渉」が重要です。
1. 被害状況の記録と見積もりの提示
毎月どれだけのササが生え、抜くのにどれほど苦労しているのか、日付が入った写真などを残して記録しておきます。その上で、業者に「現状の駆除と今後の侵入防止(防草シートや地中バリケードなど)」の見積もり(例:5万円)を出してもらいます。
2. 具体的な費用分担の提案(手紙での打診)
「自分で切って処分して、と言われましたが、毎月数時間の作業となり素人の限界を超えています。放置すればさらに広がるため業者に見積もりを取ったところ、5万円かかるとのことでした。
発生源がお宅の土地にあることもふまえ、費用の全額(あるいは折半の2万5000円)をご負担いただけないでしょうか」といった具体的な書面を郵送(特定記録郵便など)または隣人の郵便受けへ入れるなどし、協議を求めます。
3. 内容証明郵便による催告と法的手続きの検討
手紙を無視されたり、費用負担をかたくなに拒否されたりしていて、さらにササによる被害が「受忍限度(社会一般に我慢できる範囲)」を超え、家の基礎を傷つけるなどの具体的な実害が生じている場合には、弁護士などの専門家に相談するのも選択肢です。
ただし、実際に不法行為に基づく損害賠償や工作物責任が認められるかどうかは、被害の内容や原因、隣人側の管理状況などによって異なるため、個別に専門家へ確認したほうがいいでしょう。
勝手な発注は避け、根気強い協議で解決を
隣から侵入するササの被害は、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。しかし、民法では、隣地から越境してきた根を自分で切り取れるルールが定められているため、独断で業者に依頼した5万円分を全額請求しても、必ずしも支払いに応じてもらえるとは限りません。
感情的になって見切り発車で業者を呼ぶ前に、まずは被害の実態を記録し、業者から見積もりを取り、具体的な数字(費用)を隣人に提示したうえで、費用の負担や侵入防止策の事前協議をすることが大切です。
予期せぬ出費やトラブルを防ぐためにも、法的なルールをふまえた冷静な交渉を進めてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
