
高額療養費制度
高額療養費制度とは、病院や薬局の窓口で支払う医療費が、月ごとの上限額を超えた場合に、超えた額が支給される制度です。上限額は所得や年齢に応じて決められます。
Aさんの母親の収入は遺族厚生年金と老齢基礎年金ですが、遺族年金は非課税なのでその他の収入が老齢基礎年金だけなら、住民税非課税世帯に該当すると考えられます。国民健康保険加入の70歳以上で住民税非課税、年金収入が80万円以上なら、2万5700円が高額療養費の上限額となります。
なお、令和8年8月から、70歳以上の人を対象とする外来診療だけの月の上限額はAさんの母親の場合1万1000円です。つまり、7万円かかる白内障の手術も自己負担額は1万1000円になります。
ただし、気をつけたいポイントがあります。「1ヶ月」は歴月の1日から月末までを意味します。ですから、例えば片方の目ずつ2回の手術をする場合で1回目を11月に行い、2回目を12月に行えば、11月と12月の上限額がそれぞれ1万1000円となるので、合計で2万2000円の負担となります。
片方の目ずつ手術を受ける場合は、できれば2回とも同じ月に受けられるよう相談してみてもよいでしょう。
医療費控除
医療費控除は、1年間にかかった医療費が一定額を超えた場合に、所得からその金額を控除することで、税金の負担を軽減する制度です。
Aさんから今回のケースで医療費控除を使えないか質問を受けましたが、医療費控除は医療費が1年間に払った医療費の合計額が原則として10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%)が基準となります。Aさんの母親は所得金額が少なく所得税がかからないので、医療費控除を利用しても還付を受けることはできません。
また、Aさんが手術費用を払えば、Aさんの医療費控除の対象となるか聞かれました。医療費控除は生計を一にする家族の医療費が対象です。Aさんが母親に定期的に仕送りを続けるなどしていれば、認められる可能性がありますが、母親の手術費用を払ったからといって、Aさんの医療費控除の対象になるとは限りません。
75歳以降に手術を受けたら負担は減るか?
Aさんの母親は、国民健康保険に加入していて、70歳以上の負担は2割となっています。75歳になると後期高齢者医療保険に加入することになり、負担は1割に減ると考えられます。
ですから、73歳で約7万円の負担は、75歳になれば半分の約3万5000円に減ります。ただし、高額療養費制度の上限額は変わらないので、実際の負担額は1万1000円。73歳で手術しても、75歳まで延期にしても負担額は変わりません。
では、Aさんの母親が69歳だったら、手術費用はどうなるでしょう。60代までの国民健康保険の負担割合は3割ですから、同じ白内障の手術をしても費用は約10万円です。高額療養費制度の上限額にも外来の区別がなく、3万6900円が上限額となります。
まとめ
高齢になって白内障の手術をするケースは多く聞かれます。健康保険適用の手術でも2割負担の場合は約7万円かかりますが、高額療養費制度の対象になるので、70歳以上で収入が遺族年金のみのAさんの母親が実際に負担する費用は1万1000円に抑えられます。
ちなみに、民間の医療保険に加入している場合は、手術給付金を受け取れる可能性もあります。外来手術で保険金を受け取れる保険に加入しているか確認しておくと安心です。もし、保険金を受け取れれば、病院で支払う金額より保険金の方が多くなることもあります。
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者
