
FPの視点:放置のコストと「単独行動」の致命傷
誰も住まない実家を放置し、適切な管理を怠って行政から勧告を受けると、固定資産税の優遇措置(住宅用地の特例)の対象から外れます。課税標準額が6分の1に軽減されていたものがなくなるため、税負担は大きく増えます。使わない不動産は、早めに方針を決めておきたい資産です。
しかし、現場で最大の悲劇をもたらすのは費用の問題ではありません。焦ったご長男やご長女がひとりで片付けを急ぎ、自分の判断で仏壇を処分してしまうことによる「感情の決裂」です。
お金でもめているならお金で解決できます。しかし、「親をぞんざいに扱った」という親族の強烈な不信感は心のしこりとして残ります。家族のためを思って動いたつもりでも、一度壊れた関係は、不動産が高く売れても二度と元には戻らないのです。
宅建士の視点:「空っぽにしてから」の思い込みを捨てる
「きれいに片付けてからでないと不動産会社を呼べない」というのは誤解です。仏壇も家財も手つかずのままで、査定や売却準備は普通に進められます。買主にお渡しする日(決済日)までに家を空にすればよいからです。
家財ごと引き取る「不動産買取」という契約方法もありますが、その場合も「神様と仏様だけは売主様できちんとご供養ください」とお願いされるのが通常です。ここだけは誰も代われません。
だからこそ、「仏壇をどうにかしてから不動産会社へ行く」のではなく、「仏壇をどうするか決めるために、まず専門家に相談する」。これが実家じまいの順番だと、私はお伝えしています。
「仏壇がない=供養できない」ではありません
仏壇を手放す際は、多くの宗派で「魂抜き」や「閉眼供養」(浄土真宗では遷仏法要など)を行います。お付き合いのある菩提寺や、僧侶の手配サービス等にご相談ください。
「仏壇を手放すなんて親不孝では」と罪悪感を抱く方も少なくありません。けれど供養の形は一つではありません。大きな仏壇は手放しても、現在のお住まいに小さな手元供養のスペースを作り、お位牌や写真だけ残して手を合わせるなど、現代に合わせた選択肢はいくつもあります。
空き家に仏壇を放置するより、ご自身が無理なく手を合わせられる場所を作ることこそ、一番の供養になるのではないでしょうか。
これからの実家じまいは、専門家を交えて「並行処理」する
実家の不動産価値を正確に把握しつつ、親族と合意形成を図り、並行して片付けと供養の段取りを組む。この「実務」と「感情」の交通整理に、第三者の専門家を活用するのがこれからの賢いスタイルです。
お盆やお彼岸、年末年始などご家族が集まるタイミングは、実家の「これから」を話し合う一番良い機会です。
実家じまいを任せる会社を選ぶ際は、仏壇を単なる「モノ」として処分するのではなく、ご家族の想いに寄り添い、きちんとした供養の手順を提案できる会社を選んでください。
長く手を合わせてきた大切な場所だからこそ、ひとりで無理をせず、家族そろってきちんと送り出すためのサポートを頼ってみてはいかがでしょうか。
執筆者 : 稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
