
市場調査会社SNS Insiderは、血管内砕石術市場(Intravascular Lithotripsy Market)に関する調査結果を公表しました。同社の推計によると、世界市場規模は2025年の10億1,000万米ドルから2035年には41億9,000万米ドルに拡大し、2026年から2035年の年平均成長率(CAGR)は15.3%となる見通しです。冠動脈疾患や末梢動脈疾患に伴う高度な血管石灰化への治療需要を背景に、カテーテルを用いて石灰化病変の拡張を支援する血管内砕石術(IVL)への関心が高まっています。
血管内砕石術は、カテーテルから発生する圧力波を利用して血管壁の石灰化部分に微細な亀裂を形成し、バルーンによる血管拡張やステント留置を行いやすくする治療技術です。従来の石灰化病変に対する治療方法と比較し、異なる作用機序で血管内のカルシウムを修飾できることから、複雑な血管病変に対応する選択肢の一つとなっています。ただし、適応や治療結果は病変の状態、使用する機器、患者の臨床的条件によって異なります。
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血管石灰化への対応がカテーテル治療技術の開発を促進
冠動脈や末梢動脈の石灰化は、血管内治療を実施する際の重要な課題です。高度な石灰化が存在する場合、バルーンの拡張が不十分になったり、ステントが適切に拡張されなかったりする可能性があります。このため、血管の状態に応じて石灰化病変を処理する技術が求められています。
IVLは圧力波を用いることで石灰化部分の性質を変化させ、血管拡張を支援することを目的とした技術です。冠動脈インターベンションや末梢血管治療の分野では、病変の形状や石灰化の程度、他の治療機器との適合性を考慮しながら採用が検討されています。
高齢化や糖尿病、動脈硬化に関連する疾患の負担が継続するなか、石灰化病変に対応できる治療技術は医療機器メーカーにとって重要な研究開発領域となっています。一方、IVLがすべての患者や病変に適するわけではなく、治療方法の選択には医学的評価が必要です。
IVLカテーテル・バルーンが2025年に56%の市場シェアを占有
SNS Insiderの分析によると、2025年の製品別市場ではIVLカテーテル・バルーンが約56%の売上シェアを占め、最大の分野となりました。これらの製品は実際の血管内治療で使用される主要な構成品であり、治療件数に応じた継続的な需要が市場を支えています。
一方、IVLジェネレーター・コンソールは2026年から2035年にかけて年平均17.2%の成長が予測され、製品別で最も高い成長率が見込まれています。複数の医療機器メーカーが異なる圧力波発生技術やシステム構成を開発するなか、病院やカテーテル治療施設による関連設備への投資が市場動向に影響すると考えられます。
製品開発では、カテーテルの到達性、石灰化病変への対応能力、操作性、既存の治療手順との適合性などが重要です。特に複雑な血管病変では、治療対象部位まで安全かつ適切に器具を到達させることが課題となるため、新しいカテーテル設計への関心が高まっています。
冠動脈IVLが58%を占め、末梢動脈治療への応用も拡大
治療タイプ別では、冠動脈IVLが2025年に約58%の市場シェアを占め、最大の分野となりました。冠動脈の高度石灰化病変では、ステント留置前の病変準備が重要となることから、IVLは冠動脈インターベンションを支援する技術として利用されています。
一方、末梢動脈IVLは2026年から2035年にかけて年平均16.8%の成長が予測され、治療タイプ別で最も高い成長率が見込まれています。大腿膝窩動脈や下腿動脈などの石灰化病変に対する治療技術の開発が、関連機器への需要を広げる要因となっています。
用途別では、冠動脈疾患が2025年に約52%の売上シェアを占めました。これに対し、膝下動脈疾患は年平均17.5%の成長が予測されています。慢性下肢虚血などの複雑な末梢血管疾患において、血管内治療の選択肢を広げる技術開発が注目されています。
エンドユーザー別では、病院が2025年に約66%と最大のシェアを占めました。一方、外来手術センターは年平均16.9%の成長が予測されており、適切な患者や処置を対象とした外来血管治療の提供体制が今後の需要に影響する可能性があります。
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米国の血管内砕石術市場、2035年に18億4,000万米ドルへ
SNS Insiderによると、米国の血管内砕石術市場は2025年の約5億3,000万米ドルから2035年には約18億4,000万米ドルに拡大し、2026年から2035年にかけて年平均14.8%で成長する見通しです。
米国では、冠動脈インターベンションを実施する医療施設の充実や、血管内治療技術への研究開発投資が市場を支えています。特に、複雑な石灰化病変に対応するカテーテル技術や、末梢動脈治療に適した機器の開発が進められています。
医療機器メーカーによる製品開発や企業買収も競争環境に影響しています。2026年1月にはBoston ScientificがBolt Medicalの買収を完了し、レーザーを利用した血管内砕石術技術を製品開発分野に加えました。このような動きは、米国市場における新しい石灰化病変治療技術への投資を示しています。
今後は、承認された適応範囲、医療保険の償還条件、カテーテルの性能、治療施設の設備投資方針などが市場の発展に影響すると考えられます。
北米市場は2025年に世界最大の58.0%の売上シェアを占有
北米は2025年の世界市場において約58.0%の売上シェアを占め、最大の地域市場となりました。SNS Insiderの地域別分析では、米国が北米市場の約88.50%を占め、地域需要の中心となっています。
北米では、高度な心血管治療を提供する病院や専門医療機関の存在に加え、カテーテル治療に関する研究開発と医療機器メーカーの事業活動が市場を支えています。特に、冠動脈石灰化病変の治療に加えて末梢血管への応用が広がることが、関連機器の需要に影響しています。
カナダにおいても、心血管インターベンションの技術向上や医療施設の設備更新が市場機会となっています。北米全体では、次世代カテーテル、ジェネレーター、臨床研修、保守サービスなどを組み合わせた製品・サービス提供が重要な競争要素になると考えられます。
欧州市場ではドイツが22.30%を占め、血管内治療技術への関心が継続
欧州では、冠動脈疾患や末梢動脈疾患に対応する医療体制の充実と、石灰化病変に対する血管内治療技術への需要が市場を支えています。SNS Insiderの調査によると、ドイツは2025年の欧州市場の約22.30%を占め、主要な国別市場となりました。
ドイツでは、心血管疾患に対する専門的な治療設備やインターベンション技術の活用が進んでいます。英国やフランスでも、冠動脈治療や末梢血管治療を実施する施設において、病変の状態に応じた治療機器の選定が重要となっています。
欧州では医療機器規制への適合性に加え、治療成績に関する臨床データ、医療機関の経済的負担、医師への適切なトレーニングなども導入判断の重要な要素です。今後は、複雑な石灰化病変への対応能力と医療施設での運用効率を両立する技術が注目されると考えられます。
アジア太平洋市場は年平均18.5%の成長予測、日本の血管内治療分野にも注目
アジア太平洋地域は、2026年から2035年にかけて年平均18.5%で成長するとSNS Insiderが予測しており、世界で最も高い成長率が見込まれています。
2025年には中国が同地域市場の約27.60%を占め、心血管治療設備の整備や関連医療機器の開発が市場に影響しています。インドやその他のアジア諸国においても、心臓カテーテル治療に対応する医療施設の拡充や専門医療人材の育成が、関連技術の導入機会につながると考えられます。
日本では、冠動脈インターベンションや末梢血管治療の専門的な医療基盤が整備されており、石灰化病変に対応する技術は重要な検討領域です。高齢患者や糖尿病などの併存疾患を持つ患者の血管病変では、治療対象部位や病変の性質に応じた機器選択が求められています。
国内の医療機器メーカー、販売代理店、心血管治療関連企業にとっては、新しいIVLカテーテルの開発や導入、治療施設での研修、関連システムの提供などが事業機会として考えられます。ただし、各製品の使用可能範囲は日本の薬事承認や適用条件によって異なるため、海外での使用状況をそのまま国内市場に当てはめることはできません。
なお、18.5%という成長率はアジア太平洋地域全体の予測であり、日本単独の市場成長率を示すものではありません。
次世代IVLカテーテルと石灰化病変治療技術の開発が進展
血管内砕石術の技術開発では、従来のバルーン型IVLに加えて、狭い血管や複雑な石灰化病変への到達性を高めるカテーテル構造が注目されています。特に、バルーンが通過しにくい高度狭窄病変への対応は、末梢血管治療に関わる重要な課題です。
2025年には、Johnson &Johnson MedTech傘下のShockwave Medicalが、末梢動脈向けのJavelin Peripheral IVL Catheterを米国市場で展開しました。同製品は先端部から圧力波を発生させる方式を採用し、従来のバルーン型機器では対応が難しい病変への使用を想定した設計です。
また、レーザーを利用したシステムなど、異なる技術方式による血管内砕石術の開発も進められています。これらの技術は石灰化病変への対応方法を広げる可能性がありますが、各製品の有効性や安全性は対象病変と臨床データに基づいて評価する必要があります。
治療費用と償還制度が市場普及に影響
IVL技術の導入には、専用カテーテルやジェネレーターなどの設備と消耗品が必要となるため、医療施設では治療効果だけでなく費用面も評価する必要があります。
特に、医療保険制度や診療報酬の仕組みが異なる国や地域では、製品の導入速度に差が生じる可能性があります。また、医師や医療スタッフに対する研修、使用機器の適切な選択、手技に関する臨床評価も普及を支える重要な条件です。
今後は、医療機器メーカーが製品性能の向上と費用対効果に関する情報提供を進めることで、医療施設による技術評価や導入判断を支援することが期待されます。
主要企業の事業展開と今後の市場機会
世界の血管内砕石術市場には、Johnson &Johnson MedTech傘下のShockwave Medical、Boston Scientific、Abbott Laboratories、Stryker、FastWave Medical、Cagent Vascular、Vantis Vascularなどの企業が関わっています。各社の製品開発段階や規制上の状況は異なりますが、血管石灰化病変に対応するカテーテル技術の開発が重要な競争領域となっています。
今後は、冠動脈への適用に加えて、末梢動脈や膝下動脈の複雑な石灰化病変に対応する製品開発が注目されます。さらに、病院や専門治療施設の設備更新、医師へのトレーニング、各国の医療保険制度への対応なども、企業の事業戦略に影響すると考えられます。
調査レポートについて
SNS Insiderの「Intravascular Lithotripsy Market」レポートでは、2025年を基準年として2035年までの市場規模と成長見通しを分析しています。
製品別ではIVLカテーテル・バルーン、IVLジェネレーター・コンソール、ガイドワイヤーおよび関連アクセサリーを対象としています。治療タイプ別では冠動脈IVL、末梢動脈IVLなどを分析し、用途別では冠動脈疾患、末梢動脈疾患、膝下動脈疾患などの需要動向を取り上げています。
エンドユーザー別では病院、外来手術センター、心臓カテーテル検査・治療施設などを対象とし、地域別では北米、欧州、日本を含むアジア太平洋、中東・アフリカ、中南米の市場環境と競争動向を調査しています。
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