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国民年金の「納付率85.2%」は、何の85.2%か ── 同じ「未納」が、分母と分子の取り方で14.8%にも1.0%にもなる


── 分母は「納付対象月数」か「人数」か。分子は「未納の月」か「24か月すべて未納の人」か。取り方で14.8%にも1.0%にもなる。

厚生労働省は2026年8月28日、国民年金保険料の月次納付率を公表した。最終的な納付率にあたる3年経過納付率は85.2%。この数字はしばしば「15%が年金を払っていない」と読まれるが、納付率の分母は「納付対象月数」で、全額免除・猶予を受けている方(令和7年度末で595万人)は最初から分母に入っていない。人数で見ると、未納者は67万人(24か月すべてが未納の方)。公的年金加入者6,759万人に対して1.0%である。

※本リリースは報道関係者向けの情報提供資料です。数値はすべて厚生労働省の公表資料から引用しており、編集部が独自に推計した数値はありません。行っている計算は割り算だけです。

■同じ「未納」を、3つの取り方で見る
 (1) 納付率の裏返し(月数ベース)   100 - 85.2 = 14.8% 分母=納付対象月数(739万月)
 (2) 第1号被保険者に占める未納者(人数) 67万人 ÷ 1,357万人 = 4.9%
 (3) 公的年金加入者に占める未納者(人数) 67万人 ÷ 6,759万人 = 1.0%

※(1)は月数の割合、(2)(3)は人数の割合。単位が違うため、引き算や直接の比較はできない。

■本リリースのポイント
1. 納付率85.2%の分母は「納付対象月数」。令和5年6月分保険料について、納付対象739万月に対し納付629万月。人数の割合ではない。
2. 全額免除・猶予の595万人は分母に入っていない。法律上、納付を要しない期間として扱われるため。「未納」ではない。
3. 人数で見ると未納者は67万人。国民年金第1号被保険者1,357万人に対して4.9%。
4. 公的年金加入者6,759万人で見ると1.0%。第2~4号は給与天引き、第3号は配偶者の加入する制度が一括負担するため、第1号は全加入者の約20%にとどまる。
5. 都道府県別では最高島根92.7%、最低大阪80.2%。なお公表資料の「前年度からの伸び」は前年比ではなく、同じ保険料月を1年後に測り直した増分である。

■8月28日に公表された数字
厚生労働省は2026年8月28日、「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」を公表した。各月の保険料が1年後・2年後・3年後にどれだけ納められたかを示すもので、同省は3年経過納付率が最終的な納付状況を表す指標としている。

【月次納付率(全国・令和8年6月末現在)】
 3年経過(最終) 令和5年6月分保険料 納付 629万月/対象 739万月 納付率 85.2%
 2年経過     令和6年6月分保険料 納付 630万月/対象 734万月 納付率 85.8%
 1年経過     令和7年6月分保険料 納付 605万月/対象 724万月 納付率 83.5%

単位が「万月」であることに注目してほしい。納付率は人数ではなく、月数の割合として算出されている。なお同資料は「数値は、それぞれ四捨五入しているため、下一桁の計算が合わない場合がある。」と注記しており、納付月数÷納付対象月数は公表の納付率と下一桁がずれる場合がある(例:629÷739=85.1)。

【画像 https://www.dreamnews.jp/press/360781/images/bodyimage1

【画像 https://www.dreamnews.jp/press/360781/images/bodyimage2

■分母に入っていない595万人
納付率の分母は納付対象月数である。ここには、保険料の全額免除や納付猶予を受けている期間は含まれない。所得が一定以下の方や学生納付特例を利用している方は、法律上、その期間の保険料を納める必要がないためである。

【国民年金第1号被保険者の内訳(令和7年度末)】
 納付者等     695万人(51.2%) 納付率の分母に入る
 全額免除・猶予者 595万人(43.8%) 分母に入らない
 未納者      67万人(4.9%) 分母に入る(納めていない側)
 合計       1,357万人

※免除・猶予は「未納」ではない。全額免除・猶予を受けた期間は、年金を受け取るために必要な期間(受給資格期間)に算入される。ただし受け取る年金額は保険料を納めた場合より少なくなる(追納の制度がある)。一方、未納の期間は受給資格期間にも算入されない。同じ「納めていない」でも、制度上の扱いは大きく異なる。

■人数で見ると、未納者は67万人

【厚生労働省年金局「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」】
国民年金第1号被保険者数(任意加入被保険者数を含む。)は、令和7年度末で 1,357万人と、前年度末と比べ 11 万人減少している。
令和7年度末の公的年金加入者数は 6,759万人となっている。このうち、未納者数は 67万人となっている。
※ 同資料の図1・表1では 6,759万人 に括弧が付され、「第2~4号厚生年金被保険者数を令和6年度末の実績とした場合の暫定値」と注記されている。

公的年金加入者6,759万人には、厚生年金に加入する会社員・公務員(第2~4号被保険者)と、その被扶養配偶者(第3号被保険者)が含まれる。第2~4号被保険者は給与天引きで、第3号被保険者は配偶者が加入する厚生年金制度が一括して負担するため個別の納付がない。結果として国民年金第1号被保険者は全加入者の約20%にとどまる。

したがって、未納者67万人が占める割合は、第1号被保険者で見れば4.9%、公的年金加入者全体で見れば1.0%となる。

【重要】違うのは分母だけではない ── 分子の定義も違う
「未納者67万人」の定義は、資料の注記で次のように限定されている。
「未納者とは、国民年金第1号被保険者であって 24 か月(令和6年4月~令和8年3月)の保険料が未納となっている者。」
24か月すべてが未納の方だけが、この67万人に数えられる。1か月でも納めた方(部分的な未納)は含まれない。一方、納付率の14.8%は「未納の月」の割合なので、部分的な未納もすべて拾う。つまり14.8%と1.0%の差は、分母の違いと分子の定義の違いの両方から生まれている。どちらか一方だけで説明できる差ではない。

■都道府県別|3年目に伸びなかったのは東京だけ
3年経過納付率を都道府県別に見ると、最高は島根の92.7%、最低は大阪の80.2%で、12.5ポイントの幅がある。

【注意】「前年度からの伸び」は前年比ではない
公表資料の「前年度からの伸び」列は、同じ保険料月を1年後に測り直した増分であって、前年の納付率と比べたものではない。同資料の注記は次のとおり。
「「令和5年6月分保険料の3年経過納付率」及び「令和6年6月分保険料の2年経過納付率」の前年度からの伸びは、それぞれ「令和5年6月分保険料の2年経過納付率」及び「令和6年6月分保険料の1年経過納付率」と比較したものである。」
つまり全国の「+0.3ポイント」は、令和5年6月分保険料の納付率が2年経過時点から3年経過時点までに追加で納付された分である。「納付率が前年より0.3ポイント改善した」という意味ではない。2年経過の「+3.1ポイント」も同様に、令和6年6月分保険料が1年経過時点から2年経過時点までに積み上がった分である。
この基準で見ると、3年目に数値が伸びなかったのは東京(-0.2ポイント)だけである。これも「東京だけ納付率が悪化した」という意味ではない。

【3年経過納付率の上位5・下位5】
 上位1 島根 92.7%(3年目の伸び +0.3pt)
 上位2 新潟 92.6%(3年目の伸び +0.2pt)
 上位3 富山 92.2%(3年目の伸び +0.2pt)
 上位4 山形 91.5%(3年目の伸び +0.3pt)
 上位5 岩手 91.4%(3年目の伸び +0.5pt)
 (全国 85.2% 3年目の伸び +0.3pt)
 下位5 大阪 80.2%(3年目の伸び +0.5pt)
 下位4 東京 82.0%(3年目の伸び -0.2pt)
 下位3 福岡 82.6%(3年目の伸び +0.3pt)
 下位2 埼玉 83.0%(3年目の伸び +0.3pt)
 下位1 茨城 83.3%(3年目の伸び +0.4pt)

■編集部コメント
この記事で扱った数字は、どれも厚生労働省が公表しているものである。新しく計算したのは割り算だけで、推計は一つもない。それでも並べてみると、同じ「未納」が14.8%にも1.0%にもなる。

どれかが間違っているわけではない。納付率は「納付義務がどれだけ果たされているか」を見る指標で、義務のない免除・猶予期間を分母から外すのは、指標の設計として筋が通っている。問題は、その分母が数字と一緒に伝わらないことである。

私たちがFP相談の現場で見てきたのは、この混乱が個人の判断を歪めることだった。「みんな払っていないなら」と納付を止めてしまう方がいる。しかし未納の期間は、受給資格期間に算入されない。免除や猶予なら算入される。払えないときに取るべき行動は「止める」ではなく「免除・猶予を申請する」である。

とくに見落とされやすいのが保障の側である。障害年金や遺族年金には、それぞれ保険料の納付要件がある。未納が続くと、老後の受取額だけでなく、働けなくなったとき・万一のときの公的な備えにも影響する。その分をどう埋めるかは、世帯の状況によって答えが変わる。(IKIGAI TOWN 編集長 塩飽哲生)

■調査概要
分析主体:IKIGAI TOWN 編集部(スペシャリスト・ドクターズ株式会社)
調査テーマ:国民年金保険料の納付率と、未納者数の割合の関係(分母・分子の違いによる見え方)
主な出典:厚生労働省「国民年金保険料の月次納付率(令和8年6月末現在)」(2026年8月28日公表)
人数データ:厚生労働省年金局「令和7年度の国民年金の加入・保険料納付状況」(2026年7月)
編集部の計算:公表された人数どうしの割り算のみ(67÷1,357、67÷6,759)。推計は行っていない
検算:公表の納付月数÷納付対象月数が四捨五入の範囲で公表の納付率と整合すること(出典資料の注記のとおり下一桁はずれる)、第1号被保険者の内訳が合計と整合することを機械的に確認した。引用は出典PDFの抽出テキストと機械照合している
確認日:2026年8月29日
初出発表日:2026年8月29日(https://ikigai.town/ja/press/2026-08-29/

■ご利用にあたっての注意
本リリースは情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘・推奨を目的としたものではありません。納付率は月数、未納者数は人数で単位が異なります。両者を引き算したり、直接比較したりすることはできません。個別の納付記録・受給資格期間・障害年金や遺族年金の納付要件は、加入記録によって決まります。ねんきん定期便、ねんきんネット、または日本年金機構・年金事務所にご確認ください。保険料の免除・納付猶予の可否は所得等の要件によります。お住まいの市区町村の国民年金窓口または年金事務所にご確認ください。

図表・詳細:https://ikigai.town/ja/press/2026-08-29/



配信元企業:スペシャリスト・ドクターズ株式会社
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