【矢野経済研究所プレスリリース】環境価値(炭素削減価値)市場に関する調査を実施(2024年) 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2050年度の環境価値市場は2023年度の約4倍に成長を予測
- 2024年10月15日 11:00:00
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1.市場概況
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国内の多くの企業・事業者が「地球温暖化対策への取組み・成果がなければ将来の事業が成立しなくなる」ことを認識しており、CO2の排出削減・除去・吸収の自主努力を強化・継続して、その成果を自らの事業に還元していくことになる。しかし、その過程(移行期)では、個々の企業・事業者においてCO2排出削減の目標・設定に対して過不足量が発生することから、これをカーボン・クレジットおよび再エネ等証書(環境価値)として企業・事業者間で移転(売買)することにより、カーボン・オフセット(相殺)またはCO2排出量・排出枠取引が可能になる。カーボンニュートラルに向け、企業・事業者が協力して、国全体(地球全体)でCO2排出削減(脱炭素化)を実現していくことになる。
日本のカーボン・プライシング政策の方向性としては、これらのクレジット・証書(環境価値)および排出量・排出枠取引をインセンティブとして、企業・事業者による省エネ・低炭素投資等が促進されるとともに、国内の資金循環を生み出すことで、経済と環境の好循環を促進する。そのためには、環境価値を可視化する必要があり、クレジット・証書市場における環境価値取引の活性化・拡大を図ることにより、企業・事業者における投資回収の予見性を高める政策が推進されている。
なお、将来的な2050年カーボンニュートラルの実現段階では、CO2の排出量と除去量が釣り合うことが要求されるため、今後はCO2吸収・除去プロジェクト※(ネガティブ・エミッション)の拡大も必要になってくる。カーボンニュートラルでは、企業・事業者がCO2排出削減の取組みを進めても、なお残る人為的なCO2排出を行う主体と炭素吸収・炭素除去の取組みを行う主体との間で、カーボン・クレジットおよび再エネ等証書を活用した排出量・排出枠取引やカーボン・オフセットを行っていくことになる。
※「CCUS(CO2回収・利用・貯留)技術に関する調査を実施(2024年)」(2024年5月23日発表)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3539
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000306746&id=bodyimage1】
2.注目トピック~PPAスキーム
企業・事業者等の電力需要家が、環境価値(CO2排出削減効果)を有する再生可能エネルギー電力・脱炭素電力を調達・購入・使用する方法として、PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)※が普及してきている。PPAスキームでは、電力需要家が環境価値(非FIT非化石証書)を含む太陽光等の再エネ発電電力を、発電事業者または小売電気事業者から、20年等の長期契約(固定単価)で安定的に購入する。
近年の再エネ電力政策では、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取)制度と比較して需給調整インセンティブの高いFIP(Feed-in Premium)制度への移行が促進されてきた。その結果、再エネ発電事業においてFIP対応が進み、新たな形態のPPA契約が結びやすくなった。すなわち、FIPでは発電事業者が非FIT非化石証書(環境価値)を有して、高度化法義務達成市場以外に、小売電気事業者等に相対取引で直接供給できる。特に、オフサイトのバーチャルPPAでは、電力契約とは別に需要家が再エネ発電事業者(FIP対応)から非FIT非化石証書を直接購入することも出来る。
※「太陽光発電市場に関する調査を実施(2024年)」(2024年8月30日発表)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3613
3.将来展望
国内の環境価値(炭素削減価値)市場は、2023年度の442億円/年から、2050年度には1,763億円/年と約4倍に拡大を予測する。国内の環境価値市場では、CO2排出削減量をカーボン・オフセット(相殺)するカーボン・クレジットよりも、使用電力を脱炭素化・再エネ化する再エネ等証書の方が市場規模は大きい。それに対して、CO2取引単価は再エネ等証書よりも、創出・発行量が限られるカーボン・クレジットの方が高価になると考える。
環境価値(CO2排出削減量)の移転は、カーボンニュートラルに向けての移行期(トラジション)における最終手段として位置付けられており、企業・事業者が脱炭素化に取組んでもなお、規定以上にCO2を排出せざるを得ない場合にのみ、利用すべき手法とされている。従って、国内の環境価値(炭素削減価値)市場は2050年に向けて拡大していく見込みだが、CO2排出削減努力の一次的な市場※ではなく二次的な市場として、抑制のある市場拡大となる見通しである。
※「カーボンニュートラル実現に向けた国内のエネルギー・フロー変革状況調査を実施(2023年)」(2023年11月20日発表)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3394
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3649
調査要綱
1.調査期間: 2024年4月~9月
2.調査対象: エネルギー供給事業者(電力、ガス、石油)、エネルギー需要家(企業・事業者)、関係省庁、業界団体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2024年9月27日
お問い合わせ
⇒プレスリリースの内容や引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press
株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/
配信元企業:株式会社矢野経済研究所
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