神奈川県立音楽堂室内オペラ・プロジェクト ブルーノ・ジネール「シャルリー ~茶色の朝」日本初演 フランス発世界的ベストセラーとなった問題作のオペラ化!
- 2021年09月24日 13:00:00
- マネー
- Dream News
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神奈川県立音楽堂
主催:神奈川県立音楽堂(指定管理者 公益財団法人神奈川芸術文化財団)
「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」特設サイト
<ティーザー動画もご覧になれます>https://www.ongakudo-chamberopera.jp/
【公演概要】
■ブルーノ・ジネール:「シャルリー ~茶色の朝」日本初演(フランス語上演・日本語字幕付)
Ongakudo Chamber Opera Project Bruno Giner
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000244546&id=bodyimage1】
「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」
神奈川県立音楽堂は、戦前パリに単身わたり、世界の建築三大巨匠の1人、ル・コルビュジエに学んだ最初の日本人建築家であり、日本のモダニズム建築のムーブメントをリードした前川國男によって設計されました。日本で最初の本格的な公立音楽専門ホールとして、「木のホール」の愛称で美しい音響を国内外一流の演奏家に愛されて戦後日本の音楽演奏史の重要な1ページを担い、今年2021年8月3日付で、神奈川県の重要文化財に指定告示されました。
1年の休館・大改修を経たリニューアルオープンと開館65周年が重なった2019年、開館当初から室内楽サイズの様々なオペラ上演を行ってきた歴史とインティメットな音響空間を活かした今後の主軸事業として、「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」を立ち上げ、第1弾はアカデミー賞受賞作曲家A.デスプラが川端康成の小説を原作に書いた《サイレンス》、第2弾はファビオ・ビオンディ指揮エウローパ・ガランテによる《シッラ》日本初演(新型コロナウイルス感染症拡大のため、上演は中止)を企画、第3弾は鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパンによる《リナルド》と、バロックから現代まで時代、スタイル、国境を超えて多彩に拡がる室内オペラの豊かな世界を紹介する上演を続けてきました。
そして今年10月ご紹介するのが、現代のフランスを代表する作曲家の一人、ブルーノ・ジネールによる《シャルリー~茶色の朝》日本初演です。演奏する「アンサンブルK」は初来日。ストラスブールを本拠にユニークな活動を拡げ、フランス国立ヴァンドゥ―ヴル=レ=ナンシー舞台芸術センターとの共同プロダクションで同作品を世界舞台初演した団体です。神奈川県立音楽堂は彼らを独自招聘し、音楽堂のみで日本初演を行います。
ある朝突然、「茶色のペット以外は飼ってはいけない」
という法律が施行されたら?
このオペラの原作となった、フランスの心理学者、フランク・パヴロフの書く『茶色の朝』は、そんな仮想世界を舞台に繰り広げられる、主人公と友人「シャルリー」の静かで何気ない日常が描かれる、とても短い物語です。
主人公は猫を、シャルリーは犬を可愛がっていましたが、茶色のペット以外許さないという「ペット特別措置法」ができてから、それぞれのペットを殺処分し、茶色の猫と犬に飼い代えます。
「茶色の猫だっていい猫だし」
「ことを荒立てるのもなんだし」
「規則に従っていれば安心だし」
違和感を持ちながらも、そんな言葉で自分を安心させ、シャルリーと主人公はコーヒーを飲んだり、新聞を読んだり、競馬を当てたり、今までどおりの静かな日常生活を送ります。
『茶色に守られた安心、それも悪くない』。
しかし、その静けさは、じわじわと壊されていきます。愛読していた新聞は発禁になり、シャルリーと主人公は、会話を誰かに聞かれることにも敏感になります。
そしてついにシャルリーが逮捕されます。
その理由とは―
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000244546&id=bodyimage2】
わずか11ページの物語が200万部を超えるベストセラーとなり、フランス社会を動かした
この物語『茶色の朝』にはそれ自体、物語のような伝説が付きまとっています。
作者フランク・パヴロフはフランスとブルガリア国籍を持つ心理学者、小説、詩人。子どもの心理と人権のスペシャリストで、アフリカやアジアの子どもの問題に長く関わり、フランスでは著作が多数出版されています。
1990年代後半、フランスでの極右政党の台頭に危機感を抱いたパヴロフは、多くの人、特に若い人に読んでもらおうと、子どもにもわかるやさしい言葉で、短い、しかし衝撃的なこの物語を11ページの原稿に詰め込み、自らの印税を放棄しわずか1ユーロで出版しました。
数年後の大統領選挙で極右候補が決戦投票に残った際、フランス社会は大きく動揺。その時、人々はこの物語を発見します。
今何をすべきか考えようと、多くの人々がこの物語を読み、しだいに「極右にノンを!」の運動につながっていきます。
結果、その後の大統領選で極右政党は敗北。パヴロフはベストセラー作家になりました。
以降もこの物語は世界各国で20数か国語に翻訳されて広く読まれています。
日本でも2003年に、ヴィンセント・ギャロの印象的なイラスト、哲学者、高橋哲哉氏のメッセージを入れて出版されました。
以来、ロングセラーを続けて版を重ね、長塚圭史氏、小林聡美氏、志村ふくみ氏、Misia氏、為末大氏等多くの文化人やアーティストが注目し、話題が広がり続けています。
気鋭の作曲家ジネールがオペラ化。
そして「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」へ
この物語を、フランスの現代作曲家、ブルーノ・ジネールがオペラ化しました。
ジネールは日本ではまだ知られざる存在ですが、色彩感と質感あふれる力強い作風で知られる、現代フランスを代表する作曲家の一人。1960年フランスに生まれ、ピエール・ブーレーズやブライアン・ファーニホウ、ルイス・デ・パブロといった当代一流の現代作曲家に師事し、室内楽、オーケストラ作品から電子音楽まで様々なジャンルで創作し、フランス電子音楽センターIRCAM等の世界的機関と協働する一方、エリック・サティやクルト・ヴァイル、ナチスの迫害にあったユダヤ人作曲家など、時代の波間に消えた芸術家たちの作品を掘り起こして紹介する著作や活動等でも知られています。
ジネールはこの作品を小さな会場、若い観客の集まる会場でも上演できるように、演奏者を5人の器楽奏者と1人の歌手に絞り、1幕のオペラに仕上げました。
題して《シャルリー~フランク・パヴロフの『茶色の朝』にもとづくポケット・オペラ》。
オペラ「シャルリー」はシンプルでスタイリッシュな舞台と、ささやき声やスローガン、ポップなメロディ、叫び声など多彩な要素を取り入れ、精緻で美しい響きに満ちた音楽的にもユニークな作品。主人公は若い女性のように描かれ、演じ、物語るのはソプラノ歌手です。
音楽堂は2019年に作曲者ジネールの代理人に直接コンタクト。日本初演プロジェクトが動き出しました。
演奏を行うのは「アンサンブルK」。独自のポリシーに基づくユニークな活動を展開し、「シャルリー」舞台版を世界初演し、欧州で広く上演してきた気鋭の団体として、ジネールが日本初演にふさわしいと推薦しました。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000244546&id=bodyimage3】
室内楽とトークを交えた三層構造の立体的な公演
《シャルリー》日本初演は3部構成で開催されます。
音楽堂室内オペラ・プロジェクト『シャルリー~茶色の朝』日本初演の公演は、三層構造で開催されます。
第I部は、《禁じられた音楽》の室内楽コンサート。(約30分)
ソロ・クラリネットが鳴り、1933年ベルリンのキャバレーの空気とともにコンサートがスタート。
第1曲は、ベルトルト・ブレヒトとクルト・ヴァイルの『三文オペラ』から「メッキー・メッサーの哀歌」。33年はナチスがドイツで政権を掌握し、二人が相次いでパリへ亡命した年です。
2曲目はヴァイルのパリ時代にモーリス・マーグルの詞によせて書かれた「セーヌ哀歌」。再び『三文オペラ』から「大砲ソング」。そしてヴァイルが理想郷を夢見てロジェ・フェルネの詞によせて書いたという「ユーカリ」。ドイツ語の『三文オペラ』からの名曲とたった2年間の短いパリ時代にフランス語で書かれた貴重な『ヴァイルのシャンソン』の交錯から、音楽の背景は次第に影を濃くしていきます。
第5曲は1939年のナチ侵攻までチェコで前衛の最重要の作曲家、高名なピアニストであったドイツ系チェコ人の作曲家、エルヴィン・シュルホフの「ヴァイオリンとチェロのための二重奏」より。シュルホフは新ウィーン楽派、ホモセクシュアル、ユダヤ人で共産党員であり、ナチスの格好の標的でした。ブレヒトと同じくナチスから「退廃音楽」の烙印を押され、1942年強制収容所で命を落としました。
第6曲、アメリカに亡命したユダヤ系ドイツ人作曲家、パウル・デッサウのピアノ曲「ゲルニカ~ピカソに捧げる」でクライマックスが訪れます。デッサウはワルターやクレンペラーのもと、指揮者としても頭角を顕し、ワイマール時代のドイツを代表する、音楽の最先端と映画音楽など大衆に寄り添った活動の両輪を繰り広げながらもアメリカに亡命し、ブレヒトとの協働で『セチュアンの善人』などの名作を残しました。「ゲルニカ」は、デッサウがピカソの大作に呼応して一晩で創作したともいわれる、民衆をふみにじる暴力への強い怒りと悲しみが表現された、短いながらも印象的な曲です。
最後に、デッサウの曲の一部をモチーフに21世紀からブルーノ・ジネールがオマージュを捧げた日本初演曲「パウル・デッサウの”ゲルニカ”のためのパラフレーズ」で、コンサートは幕を閉じます。
アンサンブルKは13年以上にわたり、これら「禁じられた音楽」や歴史に葬られた20世紀の優れた作品を掘り起こし紹介する活動をしてきました。作曲の傍ら研究と著作でこれらの時代と芸術家たちに光を当ててきたジネールと彼らの出会いのきっかけになり、芸術活動の芯となるプログラムです。
第II部は《シャルリー~フランク・パヴロフの『茶色の朝』にもとづくポケット・オペラ》。(約45分)
第III部は作曲家ブルーノ・ジネールを囲むクロストーク(日仏通訳付)。(約30分)
日本人ゲスト・スピーカーとともに、原作の背景や表現と社会の意識の問題など多方面から重層的にこの作品が生まれた意義などに迫ります。
スピーカーは、ジェンダー、老い、パーソナリティの抑圧などの問題に独自の表現で切り込み、2009年ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表作家を務め近年は舞台演出家としても活躍する美術作家、やなぎみわ氏(10/30(土))、ジャック・デリダをはじめとする現代思想についての研究で知られ、日本語版原作本『茶色の朝』(大月書店刊)にもメッセージを寄せている、哲学者、東京大学名誉教授の高橋哲哉氏(10/31(日))です。
20世紀から21世紀へと激動と困難の時代を超えて光り生き続ける音楽と詩、芸術家の思いをたどりながら、芸術、表現、社会、そして私たち自身とは、と普遍的な問いへとつながるひと時となれば幸いです。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000244546&id=bodyimage4】
関連企画も満載!
「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」では、プロジェクトにお客様も一緒に参加し、作品世界をより深く理解していただくために、ワークショップやインターンシップなどの関連企画も展開しています。
(1)ブックリーディングワークショップ「茶色の朝を迎えないために」
10月2日(土)14:00 神奈川県立音楽堂ホワイエ
講師:桐山知也 (演出家/KAAT「ポルノグラフィ」演出)
オペラの背後にある世界観をより深く理解するワークショップです。読書会形式でまず原作を声に出して読み、わき上がってきたさまざまな思いを言語化する過程を大切にしながら、参加者同士と講師が演劇的手法で引き出していきます。KAAT神奈川芸術劇場主催の「ポルノグラフィ」公演の演出を成功させて鮮烈な印象を残した演出家、桐山知也氏とともに、緑に囲まれた開放感ある音楽堂のホワイエで原作『茶色の朝』を読みましょう。
小学生以上20名まで。9/15申込締め切り 参加料:書籍代込み2000円
(2)対話型美術ワークショップ「茶色の朝を体験しよう」
10月17日(日)13:00~15:30 横浜市民ギャラリー4F アトリエ
講師:清野晃代(画家)
自分自身や、自分の好きなものを描く時、あなたは何色を選びますか?もし「茶色しか使ってはいけない」と言われたら、自己表現はどのようになるでしょうか?予め原作本を読み、横浜市民ギャラリー「大人のアトリエ」の人気講師でもある画家、清野輝代氏の指導のもと、自由な選択による色彩豊かな絵と講師の指定した茶色のみの絵の2枚を描くことで「表現の自由」「多様性」の意味を考えます。小学生以上10名まで。9/15申込締め切り 参加料:書籍代込み2000円。
*(1)(2)とも書籍をすでにお持ちの方は1000円引き。WS参加の方は「シャルリー」公演チケット500円引き。
(3)室内オペラ制作広報インターン
将来アートマネジメントの職業につくことを考える学生や現役の文化施設勤務の制作者を対象に、この「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」の公演実施までの期間を通して、広報戦略、ワークショッププログラム、公演制作の過程を実地で共有、体験してもらうプログラムです。
【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000244546&id=bodyimage5】
配信元企業:公益財団法人 神奈川芸術文化財団
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