【矢野経済研究所プレスリリース】遠隔医療市場に関する調査を実施(2021年)2020年度の遠隔画像診断(読影サービス)市場は前年度比102.5%の127億3,800万円
- 2021年08月26日 13:00:00
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ここでは、遠隔画像診断(読影サービス)市場、およびオンライン診療システム市場の推移について、公表いたします。
1.市場概況
情報通信機器を活用した健康増進・医療に関する行為である遠隔医療は、大きく「Doctor to Doctor(DtoD)」、「Doctor to Patient(DtoP)」、その他(「Doctor to」でないもの)に分類できる。「DtoD」は医師間(特に専門医・非専門医間)の遠隔医療であり、具体的には遠隔画像診断や遠隔病理診断、遠隔ICUなどが、「DtoP」は医師・患者間の遠隔医療であり、具体的にはオンライン診療や遠隔健康医療相談、遠隔手術などが挙げられる。その他の医師以外による遠隔医療の例としては、薬剤師・患者間のオンライン服薬指導等がある。
遠隔医療において最も大きい市場は遠隔画像診断市場であり、民間事業者が多数参入するなど、市場は成熟期を迎えつつある。2020年度の遠隔画像診断(読影サービス)市場は、事業者売上高ベースで前年度比102.5%の127億3,800万円と推計した。一方で、同じDtoD領域の遠隔病理診断では市場は殆ど形成されていない。遠隔ICUについては2020年に参入が相次ぎ、また新型コロナウイルス感染症の拡大により、非接触化の観点からも注目が集まるなど、今後は本格的な市場が形成される可能性がある。
オンライン診療システム市場はコロナ禍で急速に拡大しており、2020年度の同市場(事業者売上高ベース)を前年度比200.0%の22億円と推計した。
また、オンライン服薬指導ができるシステムについても、2020年9月のオンライン服薬指導の正式解禁に伴い急速に導入薬局数が増加した。他にも2021年に入り、手術支援ロボットを用いた遠隔手術に関する実証実験が各社により開始され、さらに2021年3月には一般社団法人日本外科学会が遠隔手術のガイドライン策定に着手したことを発表するなど、遠隔手術の社会実装に向けた動きが加速している。
2.注目トピック~新型コロナウイルス感染拡大により、オンライン診療システムの導入が急増
オンライン診療システムの市場は、2015年の厚生労働省医政局長事務連絡がオンライン診療の事実上の解禁と捉えられたことから、2016年頃より形成されはじめた。その後、2019年頃には契約施設数の増加に落ち着きがみられていたが、2020年に入って新型コロナウイルス感染拡大により、オンライン診療への注目度が一気に高まった。また、同年4月以降は同市場への新規参入が相次いだ。
そのような中、厚生労働省はオンライン診療に関する時限的・特例的な対応(規制緩和等)を進め、さらに多数のオンライン診療システムベンダーが時限的な無償提供を実施した。その結果、2020年4~7月にかけてオンライン診療システムの契約施設数が急増し、その後も契約施設数は着実に増加を続けている。
3.将来展望
遠隔画像診断(読影サービス)市場は成熟期を迎えつつあり、金額規模は年数%程度の安定的な拡大が続く見込みである。同市場はこれまで病院を中心に拡大してきたが、病院市場が飽和状態となった近年では、CT・MRI等の高度モダリティを導入する診療所や健診センターなどに中心がシフトしつつある。病院への導入件数が減少傾向の中、この傾向は今後も加速すると考える。
一方、オンライン診療システム市場については、2020年度はコロナ禍の影響により契約施設数が急増したことに伴い、市場規模は前年度から倍増している。2021年度は2020年度ほどの契約施設数増は見込めないことから、前年度比93.2%の20億5,000万円になると予測する。今後も、実額ベースではコロナ禍以前よりも非常に高い水準が続く見通しである。
但し、その伸び幅については2021年秋に予定されている「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定および2022年度診療報酬改定の内容により、大きく左右されると考える。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2767
調査要綱
1.調査期間: 2021年4月~7月
2.調査対象: 遠隔医療関連企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年07月29日
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