グラフ:人工胃液処理による乳酸菌生存数変化の比較
また、チョコレートが乳酸菌を保護することで、生きた乳酸菌が持つ酵素活性が、酸によって失われることを防ぐことも確認しました。チョコレートに乳酸菌を配合することで、より多くの乳酸菌を生きたまま腸まで届けられることが期待されます。
本件についての論文が学術雑誌「Biocatalysis and Agricultural Biotechnology」に12月6日付で掲載されました[*1]。
日東薬品ホームページ: http://www.nitto-pharma.co.jp/
【実は生きたまま腸まで届きにくい。胃酸に弱い乳酸菌】
ヒトの腸には腸内細菌が100兆個以上住んでいるといわれています。近年、腸内細菌はヒトと共生関係にあり、健康や美容に良い物質を作り出すことが明らかになってきました。そこで、健康効果をもたらす生きた乳酸菌「プロバイオティクス[*2]」や、それらを含む食品を積極的に摂取することで、腸内環境を整えることに注目が集まっています。しかし、乳酸菌は胃酸に弱く、腸にたどり着く前に多くが死滅してしまうといわれています。生きた乳酸菌を腸まで届けるためには、胃酸から菌を守るカプセルに入れるなどの工夫[*3]が必要となります。
【実験結果】
このたび、日東薬品、ロッテ、京都大学は人工胃液[*4]を用いて、乳酸菌を配合したチョコレートについて実験を行い、以下の結果を確認しました。
(1) 乳酸菌の生存率が100倍以上向上
酸に対する乳酸菌の耐性を比較するために、乳酸菌を配合したチョコレート、乳酸菌の粉末、乳酸菌を配合したドリンクを人工胃液の中にいれ、30分後、1時間後、2時間後にそれぞれの乳酸菌の生存数を比較しました。その結果、乳酸菌を配合したチョコレートには、粉末やドリンクと比較して、100倍以上の乳酸菌が生存していることを確認しました(グラフ参照)。
グラフ:人工胃液処理による乳酸菌生存数変化の比較
https://www.atpress.ne.jp/releases/85217/img_85217_1.png
(2) 乳酸菌の酵素活性が、酸によって失われることを防ぐ
乳酸菌を生きたまま腸まで届けることで、乳酸菌が持っている酵素活性が腸で発揮されると考えられます。そこで、乳酸菌を配合したチョコレートと乳酸菌の粉末を人工胃液にさらした後、それぞれの酵素活性を比較しました。その結果、乳酸菌の粉末では、酵素活性がほとんど失われましたが、乳酸菌を配合したチョコレートには酵素活性がほとんど失われることなく残っていることを確認しました。
以上の結果から、乳酸菌をチョコレートに配合することで、チョコレートが乳酸菌の表面をコーティングし、酸から守る役割を果たしていると考えられます。より多くの乳酸菌が酸に負けずに、生きた状態のまま腸まで届くことによって、プロバイオティクスとして多くの人々に健康効果をもたらすことが期待されます。
[*1]Yasunori Yonejima, Keiko Hisa, Marina Kawaguchi, Hiroaki Ashitani, Toshiyuki Koyama, Yoko Usamikrank, Nayumi Kishida, Shigenobu Kishino, Jun Ogawa. Lactic acid bacteria-containing chocolate as a practical probiotic product with increased acid tolerance. Biocatalysis and Agricultural Biotechnology, 4(4), 773-777(2015).
※Biocatalysis and Agricultural Biotechnologyはバイオテクノロジー分野における国際的な学術誌です。
[*2]プロバイオティクス
腸内細菌のバランスを整えることで、体に良い効果をもたらす生きた微生物のこと。また、その微生物を含んだ食品のことをプロバイオティクスと呼ぶこともあります。
[*3]胃酸から菌を守る工夫
カプセルなどで菌を守る方法のほか、胃酸を中和し胃内のpHを調整する役割を果たす制酸剤(水酸化マグネシウム、沈降炭酸カルシウムなど)を配合する方法があげられます。しかし、いずれも医薬品に用いられる方法であり、食品では使用しない技術となります。
[*4]人工胃液
模擬的に胃の中の環境を再現するために、塩酸などを用いてpHを低くした酸性の液体。
■会社概要
名称 : 日東薬品工業株式会社
所在地 : 京都府向日市上植野町南開35-3
代表者 : 代表取締役社長 北尾 哲郎
事業内容: 医薬品の研究開発、製造販売、機能性食品の研究開発
URL : http://www.nitto-pharma.co.jp/