
(A) 加熱せん断処理により、チーズホエイ中のGMPと主要タンパク質(α-La(α-ラクトアルブミン)、β-Lg(β-ラクトグロブリン))の状態が変化する

(B) 精密ろ過(MF)膜によりGMPと微粒子化ホエイ(MPホエイ)を分離する

(C) MF膜処理によりGMP含量は約3.6倍に濃縮された
雪印メグミルク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:佐藤 雅俊)は、チーズ製造時に生じる副産物であるチーズホエイを微粒子化したホエイから、高付加価値成分であるグリコマクロペプチド※1(以下、GMP)を簡便な膜分離プロセスで約3.6倍に濃縮できることを確認しました。さらに分離後に残るタンパク質素材も食品利用可能であることから、乳資源の有効活用と副産物の高付加価値につながる技術として期待されます。
本研究成果は、日本食品科学工学会 第73回大会において発表いたしました。得られた研究成果を活用して、今後はGMPの素材開発に取り組み、乳資源の高付加価値化の可能性を検討してまいります。
【本研究のポイント】
・チーズホエイを微粒子化したホエイ(MPホエイ)からGMPを回収する簡便な膜分離プロセスを開発し、GMPを約3.6倍に濃縮
・GMPを分離した後のMPホエイについても食品素材として活用でき、両成分の利用が期待できる
・チーズ製造副産物の高付加価値化につながる可能性を示した
図 GMP分離・濃縮の原理と結果
画像 : https://newscast.jp/attachments/6t2N1n8l0J7btg3yIXZH.png
(A) 加熱せん断処理により、チーズホエイ中のGMPと主要タンパク質(α-La(α-ラクトアルブミン)、β-Lg(β-ラクトグロブリン))の状態が変化する
画像 : https://newscast.jp/attachments/TzCHPkIFL0QVAkELdFbv.png
(B) 精密ろ過(MF)膜によりGMPと微粒子化ホエイ(MPホエイ)を分離する
画像 : https://newscast.jp/attachments/Qq0FbvlSte9bMkjqIckY.png
(C) MF膜処理によりGMP含量は約3.6倍に濃縮された
ナチュラルチーズの製造時に生じる副産物であるチーズホエイ中のタンパク質には、健康機能が期待されるGMPが含まれています。一方、GMPを効率的に取り出すためには複雑な製造工程が必要であり、また、GMPを分離した後に残るホエイタンパク質の活用も課題となっていました。そのため、GMPの効率的な回収と残存するホエイタンパク質の活用を両立できる、より簡便な製造技術が求められています。
本研究では、GMPが熱やせん断に強く溶液中に残る特性に着目し、チーズホエイを加熱・せん断して微粒子化したMPホエイを用いて、精密ろ過膜(以下、MF膜※2)によるGMPの分離・濃縮をパイロットスケール※3で評価しました。
その結果、MF膜処理により、MPホエイとGMPを分離でき、GMP含量は原料と比較して約3.6倍に濃縮できました。また、GMPの回収率は理論値と同等になることを確認しました。さらに、MPホエイは微粒子化タンパク質素材として食品用途で使用されることもあるため、本方法では分離後に残ったMPホエイについても食品素材として活用できることから、GMPとMPホエイの双方を有効利用できる可能性が示されました。
今後は、本成果を活用してGMPを利用した機能性素材の開発を進めるとともに、乳資源の有効活用やチーズ製造副産物の価値向上につながる技術としての活用を検討してまいります。
発表概要
学会名:日本食品科学工学会 第73回大会
会 期:2026年8月26日(水)~28日(金)
演題名:精密ろ過膜を用いた微粒子化ホエイからのグリコマクロペプチドの分離濃縮
発表者:石田 祐子、武本 篤寛、柴 真由美、酒井 史彦、福留 博文
用語説明
※1グリコマクロペプチド:
牛乳由来のκ-カゼインが酵素分解されてできるペプチドで、特にチーズ製造の過程で生成されます。プレバイオティクス、食欲調節、免疫調節などの保健機能や、フェニルアラニンがほとんど含まれないため、フェニルケトン尿症(PKU)患者向けの低フェニルアラニン食品としての利用が期待されます。
※2 精密ろ過(MF)膜:
非常に微細な孔(0.1~0.4μm)を持つ膜を利用して、水や液体の中に含まれる粒子を分離する技術です。
※3 パイロットスケール
研究室の少量実験と工場の大量生産の間の中間規模での試験のことです。
