インコの療法食作りに情熱を燃やす野呂さん
「インコの食餌事情は予想以上に深刻な問題を抱えています」と語る野呂さん
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インコの療法食作りに情熱を燃やす野呂さん
獣医学科の学生がインコの療法食づくりに取り組んでいます。イヌやネコでは療法食が行き渡っているにもかかわらず、インコ用がほとんどないことから、講義資料などを基に試行錯誤してトライ。その中で手応えがあった食餌を何とか販売したいとクラウドファンディングを立ち上げ、目標の50万円に対し、約67万円が集まりました。ただ効果の検証方法など解決すべき課題はまだ多く、手探りが続いています。
学生は獣医学科6年の野呂綾香さん。療法食は、特定の疾病または健康状態にあるペットの食事療法に利用することを目的としたフードです。
2024年7月、脂肪肝の罹患歴があった自宅のセキセイインコ(雌、発症時7歳齢)が肝性脳症を発症しました。セキセイインコは種子類を主食としているためシードを与えますが、野呂さんは授業で学んだ獣医臨床栄養学を参考にシード(アワ、ヒエ、キビなど)のバランスを調整。肝機能が低下していたため、タンパク質を制限したうえ、低血糖防止のため炭水化物の摂取に配慮しました。この結果、1年間生命を維持し続けました。
このインコには毎日の投薬と定期的な強肝剤注射も施されていました。この経験から野呂さんは「生命の維持には診断と治療、他の動物では当たり前となっている療法食が必要ではないか」と考えました。調べてみると、インコの療法食は粒状のペレットタイプしかなく、インコによっては摂食しにくいケースもありました。「だったら自分で作ろう」となった訳です。
目指す療法食は、栄養学的にバランスが良く、しかも食べやすい「シード:ペレット=1:1」の製品です。このアイデアをベースに今年2月、岡山大学で開催された中四国6大学によるスタートアップ支援イベント「PSI学生アイデアピッチ」に出場。見事、「ちゅうぎんキャピタルパートナーズ賞」を受賞しました。その会場で「クラファンに挑戦してみたら」と持ち掛けられたのが、きっかけです。
クラファンのプロジェクト名は「愛鳥の健康状態に合わせた食餌の販売」。目標を50万円としSNSでもPRしたところ、今年3月15日~4月30日に107人から計67万5,450円が寄せられました。8割近くが女性でした。「一学生の発案に対して、これだけの資金が寄せられたというのは、インコの食餌事情は予想以上に深刻な問題を抱えていると感じました」と野呂さん。
この資金を基に、当面は健康なセキセイインコとオカメインコの成鳥と老鳥に向けた食餌を作る予定です。栄養素と量は『オウムインコ類マニュアル』などの専門書を参考に、食餌量が減っているとみられる老鳥はエネルギーとビタミン類を増やします。シードは業者から購入し、ペレットは家畜用の製品を製造している会社に依頼することにしています。
さて、この試作品の療法効果をどうやって検証していくか。周囲の教員にも相談しながら少しずつ前進。まだまだ道半ばですが、獣医師国家試験に向けた勉強も重ねながら、インコの療法食作りという自分の夢に向けて情熱を燃やしています。
「イヌやネコのように、インコが病気になった時に病院で処方される定番の療法食になったらいいと思っています」。ひときわ目が輝きます。目標は「愛媛県で公務員獣医師になること」だそうです。頑張って、野呂さん!
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「インコの食餌事情は予想以上に深刻な問題を抱えています」と語る野呂さん
岡山理科大学 : https://www.ous.ac.jp/