受賞者の村山祐介氏
<本年度の受賞者および対象作品>
ジャーナリストの村山祐介氏(53)による著書、「移民・難民たちの新世界地図―ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録―」(新潮社)
選考委員: 岡村隆(編集者、探検家)、河合香織(ノンフィクション作家)、髙山文彦(作家)、吉田敏浩(ジャーナリスト)
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/436133/LL_img_436133_1.jpg
受賞者の村山祐介氏
<選考委員講評>
西ヨーロッパを目指して移民や難民が大挙して押し寄せてくるその「入口」や、難民発生の現場、移動ルートに身を投じ、アジア、アフリカからの多様な移民・難民たちや彼らを助ける人々の声を丁寧に拾い、状況を活描した見事なジャーナリズム作品である。選考委員全員一致の「文句なし」の授賞決定だった。
容易には解決の糸口も見つからない混迷を前に、著者が「世界の宿痾」と呼ぶ諸問題を、問題として単に抽象的・概念的に捉えるのではなく、当事者たち(生者も死者も)一人ひとりの面差し、声音を一度は想像してみるところから、か細くはあれ思考の糸を手繰れるのではないかと、読者に触発の糸口を事実の積み重ねによって示す本書こそ、賞を受けるに最もふさわしい。
<授賞式>
日時:2025年5月26日(月) 18時より
場所:日本記者クラブ
※入場は報道および関係者のみ。取材希望のメディアは当日、会場にて受付を行います。
<山本美香記念国際ジャーナリスト賞>
2012年8月20日、シリア取材中に凶弾に倒れたジャパンプレス所属のジャーナリスト・山本美香の遺志を継ぐべく創設。世界中で起こっている様々な紛争や抑圧、災害や貧困などの下で暮らす様々な人々の生きる姿を伝える優れた国際報道を担うジャーナリストの支援、育成を目的とする。
世界の不正義や不条理に対して何がどのように不正義で不条理であるのか、伝聞ではなく自分自身の目と耳でとらえ、世界中に発信しようとするタフな行動力。また、それらの国々や地域において、生死のはざまをそれでも懸命に生きていこうとする人びとの姿を深い共感をもって世界中に伝えようとするヒューマニスティックな視座。本賞はその二つを併せ持つ国際報道をおこなったジャーナリストを選考の対象とし懸賞を行う。
【山本美香について】
ジャーナリスト。1967年生まれ。朝日ニュースターの報道記者、ディレクターを経て1996年から独立系通信社「ジャパンプレス」に所属。アフガニスタンやイラク、コソボ、ウガンダ、チェチェン、インドネシアなど世界の紛争地を取材。イラク戦争報道でボーン・上田記念国際記者賞特別賞を受賞。2012年8月20日、シリア内戦の取材中にアレッポにて銃撃を受け、殉職。
山本美香記念財団ウェブサイト: https://www.mymf.or.jp