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琵琶湖の重要水産魚種「ホンモロコ」の産卵環境を科学的に解明 産卵に配慮した湖の水位操作によるホンモロコの資源回復に期待



琵琶湖の重要水産魚種 ホンモロコ(左)、ヤナギの根に産み付けられたホンモロコの卵(右)




画像 : https://newscast.jp/attachments/9Dt1cbM41DEEqw6QaEEi.png
琵琶湖の重要水産魚種 ホンモロコ(左)、ヤナギの根に産み付けられたホンモロコの卵(右)



近畿大学大学院農学研究科(奈良県奈良市)博士前期課程1年 香田万里、同博士後期課程1年 髙作圭汰、同准教授 亀甲武志、滋賀県庁(滋賀県大津市)石崎大介、京都大学フィールド科学教育研究センター(京都府京都市)准教授 甲斐嘉晃らの研究グループは、琵琶湖の重要水産魚種であるコイ科魚類のホンモロコ※1 が、琵琶湖沿岸で産卵を行う際に、ヤナギの根※2 が繁茂した水深が浅く波当たりの良い場所を選択して産卵していることを科学的に解明しました。本研究成果は、ホンモロコの保護を行う際に極めて重要である詳細な産卵環境を科学的に明らかにしたもので、今後、産卵に配慮した琵琶湖の水位操作において資源回復に貢献することが期待されます。

本件に関する論文が、令和7年(2025年)4月17日(木)AM10:00(日本時間)に、日本水産学会の国際誌である"Fisheries Science(フィッシャリーズ サイエンス)"にオンライン掲載されました。

【本件のポイント】

●琵琶湖の重要水産魚種であるホンモロコの産卵場所の選択性について、科学的に検証

●ホンモロコはヤナギの根が繁茂した、水深が浅い、波当たりのよい場所を選択して産卵する

●琵琶湖の水位を操作することで、ホンモロコの産卵環境を保全することの重要性を示唆

【本件の背景】

ホンモロコは、琵琶湖固有のコイ科魚類で、コイ科魚類のなかで最も美味しい魚と言われています。平成7年(1995年)以前は年間数百トンも漁獲されていましたが、それ以降は個体数が激減して絶滅危惧種として指定されており、資源回復が求められています。

ホンモロコの産卵場所は平成7年(1995年)まで琵琶湖の南部流域を含むほぼ全沿岸域に分布していましたが、外来魚の影響や産卵繁殖場の減少などに加え、琵琶湖の水位操作による卵の干上がりが原因となり減少しています。最近の研究では、ホンモロコの産卵場所の選択は、棲息している植物や流速といった局所的な環境条件が関連している可能性があることが示されていますが、定量的には明らかにされていませんでした。

【本件の内容】

研究グループはホンモロコの産卵盛期である5月に、ホンモロコの産卵場所である琵琶湖沿岸の大津市と守山市の湖岸において344カ所の調査区画を設定し、区画内のホンモロコの卵の有無とさまざまな環境データを測定することでホンモロコの産卵場所の選択性を検証しました。ホンモロコの産着卵(産み着けられた卵)は、ヤナギの根が繁茂し、水深が浅く、流れが早い場所で確認され、統計解析により上記のような場所を選択して産卵することが示されました。流れが遅い場所は泥が付着しやすく卵のふ化率が低下しますが、流れが速く波当たりの良い波打ち際は酸素が豊富に供給され、ふ化率が高いと考えられます。

本研究成果から、ホンモロコの産卵保護を行ううえで、産卵期である4月から6月は琵琶湖の水位を維持し、産卵場所であるヤナギの根等がある環境を保全することの重要性が示唆されました。

【論文概要】

掲載誌:Fisheries Science(インパクトファクター:1.4@2023)

論文名:Spawning habitat selectivity of Honmoroko (Gnathopogon caerulescens)

    around the emergent vegetation zone of Lake Biwa, central Japan

    (琵琶湖の抽水植物帯におけるホンモロコの産卵場所の選択性)

著者 :香田万里1*、髙作圭汰1、亀甲武志1※、石崎大介2、甲斐嘉晃3

    *筆頭著者 ※責任著者

所属 :1 近畿大学大学院農学研究科、2 滋賀県庁、

    3 京都大学フィールド科学教育研究センター

DOI  :10.1007/s12562-025-01874-6

URL :https://doi.org/10.1007/s12562-025-01874-6

【研究詳細】

研究グループは、令和4年(2022年)の5月に抽水植物※3 帯が繁茂する琵琶湖沿岸の天神川河口163カ所と、守山181カ所の合計344カ所に20cm四方の調査区画を設定し、調査区画内のホンモロコの卵の有無、水温、水深、沖から岸に向かう流速、岸からの距離、底質を測定しました。ホンモロコの卵は、ヤナギ類の根によく見られ、水深が浅く、流速が速い場所で確認できました。一方で、ヤナギの根がある場所でも、流れが遅い場所では卵は確認できませんでした。ここから、ホンモロコはヤナギの根のような産卵基質※4 が繁茂し、水深が浅く、流れが速い場所を選択して産卵することが明らかになり、そのような場所に産卵することで卵のふ化率を高めている可能性が考えられました。今まで琵琶湖沿岸のホンモロコの産卵場所は、「波打ち際のヤナギの根」と定性的な知見に限られていました。本研究は、ホンモロコの産卵場所の選択性について産卵場全体を調査し、統計解析により科学的に明らかにした初めての研究となり、ホンモロコの産卵保護を行うにあたり極めて重要であると考えられます。

琵琶湖では、5月から6月にかけて水位を低下させる操作が行われています。これはホンモロコの産卵時期と重なり、多くのホンモロコの卵が水上に露出し死亡してしまうことが確認されていました。本研究成果をふまえ、少なくとも産卵時期においては琵琶湖の水位は一定に保ち、産卵環境である波打ち際のヤナギの根等の機能を維持することで、産み付けられた卵をしっかりとふ化させることができ、資源回復に繋がることが期待できます。

【研究者のコメント】

亀甲武志(きっこうたけし)

所属  :近畿大学農学部水産学科、近畿大学大学院農学研究科

職位  :准教授

学位  :博士(農学)

コメント:学生たちが、ホンモロコの産卵環境を詳しく調べてくれたおかげで、ホンモロコがどのような場所を産卵場所として選択するのかを明らかにすることができました。本研究からホンモロコは琵琶湖沿岸のヤナギの根が繁茂する、水深が浅い、流れが速い場所を好んで産卵することがわかりました。ホンモロコの産卵盛期である5月から6月は琵琶湖の水位を低下する操作が行われています。ホンモロコは水深の浅い場所を選択して産卵することが示されたので、水位が低下すると卵が干出して死亡する可能性が示唆されました。そのためホンモロコの産卵時期は水位を一定に維持することが重要であると考えられます。現在、琵琶湖のホンモロコ資源は回復傾向にあります。ホンモロコはとても美味しい魚ですので、ぜひ皆さんにもっと食べてほしいと思います。

【用語解説】

※1 ホンモロコ:琵琶湖固有のコイ科魚類。平成7年(1995年)以前は年間数百トン漁獲されていたが、それ以降は激減したため、資源回復が求められている。産卵期は4月から6月で、最盛期は5月頃。

※2 ヤナギの根:琵琶湖の湖岸には高木のヤナギ類が多く生えている。水中まで根を繁茂し、一部は水面に露出しており、ホンモロコの重要な産卵場になっている。

※3 抽水植物:水生植物のうち、茎の下部は水中にあるが、茎か葉の一部が水上に突き出ているもの。

※4 産卵基質:植物、砂礫など、魚が卵を産み付けるもの。

【関連リンク】

農学部 水産学科 准教授 亀甲武志(キッコウタケシ)

https://www.kindai.ac.jp/meikan/2466-kikko-takeshi.html

農学部

https://www.kindai.ac.jp/agriculture/

大学院

https://www.kindai.ac.jp/graduate/




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