図1. アプリで撮影したホワイトニング前後の歯の画像(a)と色の変化(b-d)
■背景
歯磨き粉、ガム、ジェルなど様々な歯の漂白製品が普及していますが、歯の色は照明など外部環境による影響を受けやすく、微妙な変化を客観的に捉えるには、歯科医院にある高精度かつ高価な専用装置と、操作技術を持つ専門家に頼る必要がありました。
■概要
本研究グループは、歯の色の相対的な変化を評価するためのスマホカメラアプリを論文発表しました。アプリには環境光センサーと顔ランドマーク検出AI技術※が搭載されており、自撮りモードで前回撮影時と同じ明るさ、同じ口の開き方の画像を得ることができます。実験では、コーヒーやグレープジュースで歯に着色した後とジェルホワイトニング後にアプリで撮影を行いました(図1a)。画像中の歯の色を測定したところ、着色と漂白により相対的な色の変化を数値化できました(図1b-d)。また、人の目では違いに気付きにくいとされる微妙な変化(色差1.3)も撮影画像から確認できることが示されました。作成したアプリに既存の画像解析技術を組み込むことで、歯の色をスマホ一台で高精度に評価できる可能性を示す実験結果です。
※顔ランドマーク検出AI技術:画像中の顔の主要なパーツ(目、鼻、口など)と輪郭を推定する人工知能技術。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/363189/LL_img_363189_1.png
図1. アプリで撮影したホワイトニング前後の歯の画像(a)と色の変化(b-d)
■研究者コメント:金田 祥平 准教授(機械システム工学科)
「これを使って本当に歯が白くなる?」という疑問を抱えつつ消費者はホワイトニング製品を選択しています。その疑問への答えが製品使用前後の歯の色を比較できる画像です。本研究では、高精度な色の比較を可能とする歯の画像を、他人を介さずスマホのみで得られるアプリをつくりました。我々のグループは消費者がホワイトニング製品を科学的根拠、すなわち歯の比較用画像に基づいて選択できるよう、アプリの実用化に向けた改良をすすめています。
■論文掲載情報
掲載誌 : Diagnostics(ダイアグノスティクス)
MDPI(Multidisciplinary Digital Publishing Institute)が出版する
医療診断分野を中心とした学術雑誌。
論文名 : A Smartphone Application for Personalized Tooth Shade Determination
パーソナライズされた歯の測色用スマートフォンアプリ
著者 : 草柳 友哉、前川 早汰(2023年3月同大学大学院修士課程修了)、
寺内 周也、橋本 航瑠(同大学大学院修士課程2年)、
金田 祥平(同大学 准教授)
著者所属: 工学院大学大学院工学研究科機械工学専攻 金田研究室
https://klab.tokyo
DOI : doi.org/10.3390/diagnostics13111969
掲載URL : https://www.mdpi.com/2075-4418/13/11/1969
掲載日 : 2023年7月6日