無補充式セルフクリーニングpH電極
防汚効果の仕組み
堀場アドバンスドテクノ 基盤技術研究開発部 西尾 友志
工業排水プロセスのイメージ図
下水処理場や排水処理設備を有する工場では、排水・汚水の処理プロセスを効率化するため、特に活性汚泥※4を利用する工程のpH管理が重要です。新製品「無補充式セルフクリーニングpH電極」は、三重大学との共同研究の知見を生かした光触媒技術(多孔質酸化チタン)や、UV-LED(紫外線発光ダイオード)を電極に内蔵する当社独自技術によって有機物の汚れに対する防汚効果を生み出し、電極が汚れやすい排水処理プロセスでの安定的な連続測定を実現しました。これにより、電極メンテナンス頻度を大幅に削減(メンテナンス工数を最大約99%※3削減)することで、毎日の洗浄・校正作業や手作業で分析を行っていたお客様の作業負荷削減に加え、現場の人手不足の課題にも貢献します。
HORIBAグループが70年以上培ってきた水計測技術を用いて生み出した本製品の展開を通じて、機械・食品・繊維工場の排水や下水処理場など、幅広い施設の運用効率化に貢献します。
なお、本製品は、2022年10月26日から28日まで開催される「計測展2022 OSAKA」(グランキューブ大阪)に出展します。
※1 ガラス電極式pHメーターとして(2022年10月時点、当社調べ)
※2 本製品は電極内部液無補充ゲルタイプであり、定期的に内部液を電極に補充する必要はありません
※3 当社従来製品との比較。使用方法や条件によって効果が異なる場合があります
※4 下水中の汚れを分解し、水をきれいにする役割を果たす微生物の集まり
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/331336/LL_img_331336_1.jpg
無補充式セルフクリーニングpH電極
【開発の背景】
排水処理設備を有する多くの事業所では、排水処理を効率良く行うために水質の監視・制御が重要です。特に活性汚泥を用いた有機物を含む排水処理プロセスでは処理能力を維持するためpHの長期的な安定測定が求められています。一方で、汚泥が付着することにより引き起こされるpH電極の感度低下が問題とされてきました。連続測定を行うためには、洗浄・校正といった定期的なメンテナンスが必要です。1日に何度もメンテナンスを要する現場では、こうした工数の大幅な削減が重要な課題です。これらの背景から、これまで困難とされてきた排水処理プロセスでの連続測定を可能にし、メンテナンス工数を大幅に削減した「無補充式セルフクリーニングpH電極」を開発しました。
【製品特長】
電極に光触媒(多孔質酸化チタン)をコーティング※5すること、また電極にUV-LEDを内蔵※6することで、pH電極としては世界初の防汚技術※1を実現しました。多孔質酸化チタンでコーティングしたガラス膜の表面に、電極内部からUV-LED光を照射します。多孔質酸化チタンが光に反応して、電極外部に付着した有機物(オイル、多糖類、微生物など)を分解し、防汚効果が生まれます。これにより、メンテナンス頻度を大幅に削減し(数値は以下用途例に記載)、本製品の使用によるメンテナンス工数を最大約99%※3削減します。
光触媒のコーティング技術に関しては、三重大学との共同研究によって得られた技術を応用しています。なお、本製品は当社別売の工業用水質計に接続して使用いただく製品です。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/331336/LL_img_331336_2.png
防汚効果の仕組み
※5 日本特許番号:5121012, 4876123, 4824609、米国特許番号:US8080315, US7976690
※6 日本特許番号:7014652
※7 水をガラス上で薄く広げ馴染ませることで汚れを付着しにくくする性質を持つ
<主な用途例>
分野 :食品
測定対象 :工場における生産物由来の排水
洗浄頻度の改善(実装試験効果の一例):毎日の手洗浄が7日~10日に1回に。
(手洗浄の頻度 約1/7)※3
分野 :機械
測定対象 :工場での機械の切削物、油分、
微生物などが含まれる排水
洗浄頻度の改善(実装試験効果の一例):1日に3回の手洗浄が、約40日に1回に。
(手洗浄の頻度 約1/120)※3
分野 :繊維
測定対象 :微生物、有機物、汚泥を含む排水
洗浄頻度の改善(実装試験効果の一例):毎日の手洗浄が約2か月に1回に。
(手洗浄の頻度 約1/60)※3
分野 :下水処理場
測定対象 :生活排水
洗浄頻度の改善(実装試験効果の一例):毎日の手洗浄が約3か月に1回に。
(手洗浄の頻度 約1/90)※3
排水処理設備を有する施設を対象としており、上記を含めた有機物を含む排水処理プロセスにおける多くの工程で利用可能です。
【開発者のコメント】
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/331336/LL_img_331336_3.jpg
堀場アドバンスドテクノ 基盤技術研究開発部 西尾 友志
国産初のガラス電極式pHメーターを開発した、堀場製作所の創業者である堀場 雅夫(2015年逝去)の「汚れない電極を作ってくれ」という言葉をきっかけに、創業来70年以上培ってきた水質計測技術と、三重大学との共同研究で得た知見や、お客様の現場に伺い徹底的に検証したデータをもとに「無補充式セルフクリーニングpH電極」を開発しました。創業者のおもいを具現化した本製品が多くのお客様のお役に立ち、ひいては各種産業におけるグリーン化推進の一助になることを願っています。
【ご参考】
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/331336/LL_img_331336_4.png
工業排水プロセスのイメージ図
上記に記載している各槽のpH管理で本製品が用いられます。
・原水槽にて排水処理設備に流入する排水の水量調整を行います。
・前処理槽にて生物反応反応槽における排水処理が効率的に行えるように水質調整を行います。
・生物反応槽にて微生物を含む活性汚泥を用いて排水処理を行います。
・返送汚泥槽にて排水処理に使用した活性汚泥の調整を行い、排水処理が可能な状態にします。