アジア全体で求人は回復基調も、一部の国で新型コロナの影響が続く アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2021年7月~9月
世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2021年第3四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)
※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください
https://www.atpress.ne.jp/releases/282050/att_282050_1.pdf
●求人はアジア全体で回復基調となるものの、ベトナム、インドネシアなど一部の国では新型コロナウイルスの影響が続く
●中国・香港で新型コロナウイルスが収束に向かい、両国(地域)で求人が増加
●上半期に新型コロナウイルスの影響を大きく受けたインドは、7月以降採用を再開し求人が増加
【ジェイ エイ シー リクルートメント アジア各社の求人数増減一覧】
対前年四半期比:マレーシア :145%
シンガポール:156%
タイ :97%
インドネシア:107%
ベトナム :86%
中国 :119%
香港 :107%
韓国 :147%
インド :167%
日本(※2) :97%
対前四半期比:マレーシア :95%
シンガポール:112%
タイ :93%
インドネシア:83%
ベトナム :70%
中国 :121%
香港 :108%
韓国 :88%
インド :214%
日本(※2) :87%
(※2)日本企業の海外事業関連求人
■■マレーシア■■
多くの地域が国家回復計画における第3フェーズに移行
大半の企業で操業が可能となり採用意欲が上昇
【求人数】
対前年四半期比 145%
対前四半期比 95%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰
政府はコロナ禍からの国家回復計画(National Recovery Plan)で移行期を4段階で示しましたが、10月1日にケダ州が第2フェーズに移行し、これによりロックダウン対象地域がなくなりました。経済セクターで見ると、ペナン・ジョホールが第2フェーズ、クアラルンプール・セランゴーが第3フェーズです。
新規感染者数は一日あたり8-9千人前後で推移しているものの、10月9日時点でワクチン2回接種済み人口比率が64%(成人は90%)に達しており、今後収束に向かうことが予想されています。最大のGDPを計上し、日系企業を中心に多くの製造業が集積するクアラルンプール・セランゴー地域においても、ワクチン接種率に応じた出社制限はあるものの、大半の企業で操業が可能となり、社会活動も緩和されています。政府は成人の接種済み比率90%の達成を受け、10月11日より(接種完了者の)州をまたぐ移動制限を9ヵ月ぶりに解除しました。また海外渡航も可能となりましたが、帰国時の14日間自宅・施設での隔離は従来通りです。
【企業の採用動向】
段階的な規制緩和とともに、各社の採用意欲も少しずつ回復している状況です。特に外資系の求人数に関しては、前四半期比6%増、前年同四半期比184%増、コロナ禍前の2019年の同期比で見ても103%増と各社の積極な姿勢が見られます。一方で日系企業の求人は、2019年同期比で8割弱程度と新型コロナ発生前の状態までには至らないものの、一部新規採用を凍結していた企業も交代要員の採用を中心に、採用意欲が回復しています。特にフェーズ3に入った9月半ばから、日系企業の中でも特に電気電子部品メーカー、商社、建築業を中心に採用活動が活発化しています。
業界全体を俯瞰し2019年第1~3四半期と今年の同時期の求人数を比較した場合、ヘルスケア・製薬(355%増)、ペイメントソリューションを含む金融(227%増)、ICT(54%増)が伸展著しい業界です。また、日系・非日系を問わず、マレーシアへの新規参入・新規投資(セミコンダクター・メディカルが中心)と共に、政府の積極誘致政策もあり、スタートアップ企業からの求人需要も増えているのがコロナ禍以前との大きな違いです。
【求職者の動向】
日本での緊急事態宣言解除と共に、転職活動を再開する求職者が増えています。一方、就労ビザ発給については、今までの未処理案件の累積により依然として遅延傾向が続いているものの、新フェーズ移行にともない徐々に解消されつつあります。
マレーシア人の求職者は、まだ慎重姿勢を崩していませんが、キャリアパス、安定性、基本給の15-20%増が見込める求人に対しては積極的に応募をしています。IT人材については引き続き需給が逼迫しており、30%、時には50%増の給与レベルを提示する企業も出ています。またリモートワークが長期化し浸透する中で、柔軟な勤務形態を求める求職者が増えているのも最近の傾向です。
■■シンガポール■■
新型コロナウイルスの感染が急拡大する中でも、求人数は順調に増加
【求人数】
対前年四半期比 156%
対前四半期比 112%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 Kirsty Poltock (カースティ ポルトック)
デルタ株感染拡大の影響でこれまで落ち着いていた感染者数が1日2,000人を超え、連日過去最多を更新しています。政府は再び規制強化に踏み切り、国内の全世帯に自主検査キットを配布し、同時に60歳以上の高齢者を対象に3回目の追加接種を開始しました。ワクチン接種率は人口の83%と世界でも高い達成率の同国では重症化率は低い状況です。このような中、今年の公式人口年次統計が発表され、1950年以来最大の減少幅を記録し、昨年比4.1%減の545万人となりました。コロナ感染拡大に伴う移動規制で、国外からの外国人の入国が減少したことも一因と言われています。
【企業の採用動向】
求人数は順調に増加しており、第3四半期は昨年同期比で56%増、前期比で12%増となりました。業界としては、引き続きニーズの高いITに加え、金融や物流、食品関連企業などの求人が増えています。また5月1日以降、配偶者ビザ(DP)への就労許可証(LOC)の発行が一部例外を除き原則廃止となったことで、該当者を雇用している企業はその対応(EP・Spassなどの就労ビザに切り替えて雇用継続/LOC期限が切れるタイミングで雇用終了し新たな人材を採用など)に追われましたが、この度、就労制度の改定があり、DP保持者もワークパーミット(WP)という就労パスを取得することで就労が可能となり、企業からはこの新たな就労ルールに則ったDP保持者向けの求人依頼も受けています。
【求職者の動向】
日本人求職者の新規登録者数はシンガポール国内外ともに減少傾向となりました。デルタ株の拡大で再度の渡航規制が敷かれ、国外の求職者の活動が制限されたことや、国内の求職者も市場ニーズは高いものの、この不安定な状況下で積極的な就職活動を控える傾向がみられたことが原因として挙げられます。
しかし、上述の配偶者ビザ(DP)のワークパーミット取得による就労が可能になったことを受け、LOCの就労期間が終了した方や、新たに転職を希望するDP保持者の中には、ワークパーミットを取得して就労するケースが出ています。
一方、ローカルの求職者もコロナ禍により転職を控える傾向がみられ、第3四半期も登録者数は鈍化しました。現時点は情報収集に徹し、具体的に活動を開始するのは来年以降を見込んでいる方が多い状況です。
■■タイ■■
第3四半期は採用が一時的に停滞するも、8月以降に急回復
年末から日本からの転職者が増加する見込み
【求人数】
対前年四半期比 97%
対前四半期比 93%
JAC Recruitment タイランド法人社長 渡邊 信二
ここ数ヵ月間、タイでは1日あたりの新型コロナウイルスの新規感染数が世界で10番目前後に定着していた状況でしたが、最近になり感染のピークは過ぎ収束の兆しが見え始めています。マスク非着用者には罰則を科すことや、強制的に店舗を閉鎖させることが法的に可能なため、7~9月にかけて各業種で国内経済は大打撃を受けました。しかし、10月から夜間外出禁止が22時から4時までに短縮、9月から店舗内飲食も解禁され、外食産業に活気が戻りつつあります。11月にはワクチン接種者に対しては入国時隔離が撤廃される事が予定されており、GDPの10%以上を占める観光業の回復が期待されます。
【企業の採用動向】
7月中旬から8月初旬にかけて、バブルアンドシール対策(工場や建設現場などを中心とする、新型コロナウイルスの感染拡大防止策)を講じるため現地の社長や人事部が多忙になり、製造業を中心に採用活動が一時的に停滞。その反動と8月中旬以降の世界経済の回復により、自動車業界を中心とする輸出型の製造業からの求人が急増しました。
一方で経理や人事などバックオフィス系の職種の従事者はコロナ禍で転職活動を控えているため、欠員補充のニーズはほぼ発生せず、求人総数は対前年四半期比、前四半期比ともにほぼ横ばいの数値ではあるものの、営業系の職種は求人増、管理系の職種は求人減と、職種により求人の偏りが見られます。
【求職者の動向】
新型コロナウイルスの第2波、第3波の影響により、今年は日本からの渡航をともなう転職者が一向に増えない状況が続いていましたが、年末を目途に国際移動に伴う隔離期間の短縮や廃止が期待できる状況になり、これまで時期をうかがっていた転職希望者の方々が一定数入国を可能性があります。日本人のタイへの移住者、就業・転職ニーズは常に一定数存在するため、企業は年末から来年以降に優秀な日本人を現地で採用する好機となることが予想されます。
■■インドネシア■■
新型コロナウイルスの感染急拡大により、
第2四半期に大幅に回復した求人は減少傾向に
【求人数】
対前年四半期比 107%
対前四半期比 83%
JAC Recruitment International Group マネージングダイレクター兼
JAC Recruitment インドネシア法人社長 Adil Driouech(アディル ドリウェシ)
6月半ばからの急激な新型コロナウイルス感染拡大により、7月3日より「PPKM(緊急活動制限)」が開始され、一部の業界を除き在宅勤務の義務、許可なしの移動は禁止、ショッピングモールも閉鎖とほぼ社会活動が停滞。病床使用率も連日100%を超え、日本人駐在員の6、7割以上が日本へ一時帰国する事態となり、企業にとっては事業の継続よりも社員の安全確保が第一優先事項となりました。4月に4.5%と発表された経済成長率も4.1%に下方修正しています。8月半ばより規制が少しずつ緩和され日常生活が戻りつつあるものの、経済の影響は大きく、年末にかけて回復が期待されているものの、未だ予想がつかない状況です。
【企業の採用動向】
求人数は前四半期比で83%と減少となりました。例年、6月から8月にかけて求人数が大幅に増加する時期であるものの、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた結果となりました。自動車関連を中心とする製造業では欠員補充目的の求人を受け、事業が好調な物流、食品、建築/建設、貿易等の業界では増員目的の求人依頼を受けています。職種では営業、管理部門(経理・法務)、工場系技術職、また日系企業による日本語ができるインドネシア人の採用の依頼が増えています。
また、日系企業の動向の特徴として、管理部門の日本人のポジションをインドネシア人に置き換え現地化を進める動きが目立ちました。コロナ禍でも採用を凍結する企業はほぼなく、採用時期の延期、外国人はインドネシア国内にいる方々を対象に選考をするなど、臨機応変に対応しています。8月半ばからのコロナ感染の落ち着きを受けて、年末に向けて新年度の人材要因見直しと共に採用へも前向きな企業が増え、求人数も回復してくると予測しています。
【求職者の動向】
新型コロナウイルスの感染拡大やPPKMの影響を受け、新規登録者数は前四半期比で70%となりました。
外国人の新規就労ビザ発給も停止していることから、インドネシア国外からの求職者は様子見の方が多く見受けられました。しかし、国内では一定数の求職者が転職市場に常に流入しており、新型コロナウイルスの影響に関係なく自身のキャリアアップを求めて活動する方々は一定数存在します。求人数が比較的減っている今は買い手市場の状況でもあるため、採用を考える企業にとっては時間をかけて求職者を選べる状況であるとも言えます。
■■ベトナム■■
感染拡大の影響を受けたものの、IT・金融業界で底堅い人材ニーズ
【求人数】
対前年四半期比 86%
対前四半期比 70%
JAC Recruitment ベトナム法人 ダイレクター Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)
2021年第3四半期の国内総生産は、昨年の同時期比較で6.17%の減少と予測されました。これは、ベトナムがこれまでの四半期GDPを発表して以来、最も大きな減少値となっています。2021年の6%から6.5%の経済成長目標は、新型コロナウイルスの第4波が発生した影響により達成は困難と予想されています。これは、想定していなかった全国規模の予防接種の実施と、各地域の長期に渡るロックダウンを実施したことによるもので、貿易や経済活動に影響を及ぼしました。政府は第4四半期に予防接種実施の促進、ロックダウン期間の短縮、企業活動や貿易を支援する準備を進めています。
【企業の採用動向】
新型コロナウイルス感染拡大の影響により第3四半期の求人数は前年同期比、前期比ともに減少となりました。一方で、感染拡大の影響を受けたことにより、企業はテクノロジープラットフォーム関連事業に積極的な投資を行っていることから、IT業界の人材のニーズは底堅い状況です。他に、銀行を中心とする金融業界も顧客関係業務のポジション、システム開発およびデジタルトランスフォーメーション関連のポジションで採用ニーズが高まっています。
製造業と加工業では政府より工場隔離の指示を受けたことにより人材の流動性が低く、多くの企業で採用を凍結しました。工場従事者以外の従業員に関しては安全を確保し事業活動を継続するために、シフト勤務、在宅勤務、出社を柔軟な勤務形態を取り入れています。
【求職者の動向】
新型コロナウイルスの影響により転職の難易度が上がっているものの、「企業の採用動向」で述べた通り、銀行、証券、保険、情報技術、半導体技術の知識と経験を持つ方は売り手市場となっています。新型コロナウイルスの影響が長期化していることにより企業によっては資金繰りが限界に達し、離職者が増加傾向にあります。企業の業績に直接貢献できる営業職の人材ニーズは高い状態を維持しており、人材の獲得競争が今後も続くことを見込んでいます。
■■中国■■
中国マーケットは新型コロナウイルスの影響から回復
日系企業の中国進出が再開
【求人数】
対前年四半期比 119%
対前四半期比 121%
JAC Recruitment 上海法人総経理 渥美 賢吾
中国では北京オリンピックまで半年をきる中、国家が新型コロナウイルスが発生次第封じ込める抑制策が功を奏し、市民生活は比較的平穏な状態を維持しています。街中でマスクを外している人も多くなり、飲食店も賑わっています。景気は堅調なものの、最近、中国東北部で石炭不足または化石燃料からの脱却を図る環境対応が要因と言われている大規模停電が頻発し、電力供給制限のため工場の操業停止が相次ぐなど、電力不足の深刻化が景気の足かせになることが懸念されています。
【企業の採用動向】
企業の採用意欲は依然活発な状態が継続しています。業績回復・拡大による増員のための募集、新設ポジションでの募集に加え、人材の再流動化を背景とした欠員補充ニーズも増加しています。成長領域である半導体・電子・化学・ヘルスケアの他、消費財など多岐にわたる業界で増員の動きがあり、優秀な人材の獲得競争も激化しています。第3四半期以降は、特に中国拠点設立にともなう採用依頼が増えており、今後、日系企業のさらなる中国進出が想定されます。
新規ビザ取得の難易度が高い状況は依然継続していますが、日本在住の日本人採用においては直近でビザ取得に成功する事例が増えています。また、先日上海市が条件付きながらも駐在員の帯同家族向け招聘状の申請受付を再開しており、ビザ関連については今後さらなる要件緩和が期待されます。
【求職者の動向】
積極的な転職活動を希望する求職者は継続して増加傾向にある中、転職市場でも求人が増えている背景もあり、全体的には「売り手市場」の様相を呈しています。そのため、希望給与・待遇にこだわる求職者比率は高くなっており、内定を得ても希望に満たない場合は辞退するケースが増えています。
■■香港(中国香港特別行政区)■■
新型コロナウイルスが収束に向かい、香港の転職市場は回復基調に
【求人数】
対前年四半期比 107%
対前四半期比 108%
JAC Recruitment 香港法人社長 Jannet Cheung(ジャネット・チョン)
香港では2021年第1四半期以降、7%以上の実質GDP成長率を維持しており、第3四半期もその勢いは衰えず、推定6.9%の成長を達成しました。コロナ禍の不確実性さにもかかわらず、ビジネスや世界は現状に徐々に適応しています。香港と他の国との間では依然として渡航制限が行われており、この措置がすぐに緩和されることはないと考えられます。政府の消費バウチャー制度を設けたことにより、地元の小売店の消費は8月に10.5%増加し、この勢いは年末まで続くことを見込んでいます。雇用市場は引き続き改善しており、失業率は第3四半期の4.6%から第4四半期は4.3%に低下すると予想されています。
【企業の採用動向】
第2四半期と同様に厳しい水際対策が功を奏し、香港内のコロナ感染状況は落ち着きを見せ、景気の回復が進んでいるように見受けられます。それにともない求人数も堅調に推移し、日系企業においても採用熱が高まっています。特に外食チェーンやアミューズメント業界から積極的に増員目的の求人を受けています。
また、香港在住者が海外に移住する新たな動きにより、今年はそれにともなう欠員補充目的の求人が増加しており、昨年の第3四半期と比べ今年の第3四半期の採用は活発に行われています。通常、第4四半期は転職市場が停滞しますが、2022年第1四半期のボーナス支給時期の後に市場がさらに活発になると予想しています。市場が回復することにより、重要なビジネスの成長分野で投資を行う目的で採用が増えることが予想されます。
【求職者の動向】
こちらも第2四半期と同様に転職希望者は増加傾向にあり、香港の一般的な売り手市場に戻りつつあります。日本人候補者については第2四半期は動きがありましたが、第3四半期については動きが鈍化しており、特に香港在住の日本人候補者の希少性は高まっています。
■■韓国■■
第3四半期の求人総数は前期比で減少するも、
財閥大手企業による求人は堅調を維持
【求人数】
対前年四半期比 147%
対前四半期比 88%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎
OECDが9月22日に発表した「OECD Economic Outlook Interim Report」によると、2021年のGDP成長率予測は4.0%と上方修正が行われました。また、第2四半期の財閥大手企業の業績はサムスン電子やLGエレクトロニクスが第2四半期では過去最高となり、現代自動車も増収増益となりました。中でもサムスン電子は今後3年間で半導体、バイオ、次世代通信、第4次産業革命関連等に240兆ウォン(約22兆8,000億円)の大型投資計画を発表しました。一方でCPI(消費者物価指数)が対前年同月比で7月2.6%、8月2.6%、9月2.5%と急上昇したことから、国内では懸念が高まっています。
【企業の採用動向】
第3四半期の求人状況は対前四半期比で12%減、対前年四半期比で47%増となりました。直近の求人数は減少したものの、前年同期比で増加した理由には新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、半導体、石油化学製品、ワイヤレス機器をはじめとする韓国の輸出額が増加しており、日系サプライヤーが恩恵を受けたことによるもので、特に半導体関連が好調であることが挙げられます。
秋以降、新型コロナウイルスのワクチンの1回目接種率が上昇しており、11月から始まる見込みの段階的日常回復(ウィズコロナ)が、どのように企業の採用動向に影響を与えるか未知数であるものの、採用のニーズは第4四半期も堅調に推移することを予測しています。
【求職者の動向】
対前年同期比で求人件数は増えているものの、転職活動をする求職者の動きが鈍い状況です。
韓国入国時の隔離が一定条件で免除されることにより、日本在住の韓国人求職者が韓国に帰国目的で就職・転職活動を行う動きもあり、日本国内の企業の在職中にオンラインで韓国での就職・転職活動を行っている方々が増加傾向にあります。
■■インド■■
新型コロナウイルス第2波が小康状態となり、
6月以降は企業の採用活動が活発化
【求人数】
対前年四半期比 167%
対前四半期比 214%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄
新型コロナウイルスの第2波が徐々に落ち着き始め、7月以降インド経済を支える自動車販売が順調に回復しています。2021年5月の第2波で1日あたりの新規感染者数は40万人を超えていましたが、7月以降は4万人まで激減し外出制限が解除されるなど経済活動も徐々に正常化しています。
一方で、9月以降に半導体不足の影響が出始め、経済活性化の停滞が懸念されています。
【企業の採用動向】
新型コロナウイルス第2波の影響により再び経済活動がストップし、医療崩壊が起きたことによりインドで就業する8割近い日本人が一時帰国したもあり、5月以降は多くの採用活動が保留となりました。
新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着き始めた7月以降は特に製造業を中心に採用活動を再開し、中でも購買、人事、経理といった職種で採用を強化する動きが目立ちました。
また、一時帰国していた日本人が徐々にインドに戻り始めたことにより、会計コンサルティングやサービス関連の業種なども採用強化を始めるなど、第3四半期は新型コロナウイルス発生前に近い採用状況に戻りつつあります。
【求職者の動向】
4月以降の新規感染者拡大に伴い、インドでの就業を一時保留する候補者が多く見られましたが、新型コロナウイルスの新感染者数が落ち着き始めた6月以降から、中長期的な視点でインド就業を目指す候補者が増えています。インドでの就業を目指す候補者は英語を使える環境や経済成長の著しい環境に身を置きたいなど目的が明確な候補者が多く、コロナ禍で転職活動を控えていたものの、ワクチンの接種後に転職活動を再開する候補者が増加傾向にあります。
企業の採用活動の活発化にともない、同時に複数の選考を進めている候補者もおり、企業の強みや魅力、候補者に期待することなど、採用の際は候補者に対し明確な説明が企業に求められています。
■■日本■■
求人数は減少したものの、次世代自動車や環境関連などの
グローバル人材採用意欲は衰えず
【求人数】
対前年四半期比 97%
対前四半期比 87%
(日本企業の海外事業関連求人)
JAC Recruitment(日本) チーフアナリスト 佐原 賢治
8月に1日2万人を超える数にまで増加した国内の新型コロナウイルス新規感染者数は、その後急速に減少し、9月終盤には1日2,000人を下回る水準まで減少しました。
政府による月例の景気総括判断は、「持ち直しの動き」を示唆しながらも「そのテンポが弱まっている」(9月)など弱含みなコメントも併記されていますが、8月の輸出金額には前年比26%増と大幅な伸びが認められるほか、10月1日の緊急事態宣言の解除に伴い、国内のサービス・飲食産業の回復も見込まれることから景気の持ち直しが期待されます。
【企業の採用動向】
2021年8月の有効求人倍率は1.14倍で、小幅ではあるものの上昇基調です。
4月~6月期に新年度を迎え、製造業を中心に大手各社から積極的な中途採用計画が打ち出された時期よりも日系企業によるグローバル事業関連の求人数は減少したものの、各社の採用意欲に減退は感じられません。求人の背景として目立つのは、「CASE(次世代自動車)」、「グリーン(脱炭素)」、「サプライチェーン」、「ガバナンス」です。CASE関連の分野では、中国や欧州、北米などの企業等との連携を伴う業務も多く、職務の専門性に加えて外国語力を必要とすることから、各社は採用に苦戦しています。
また、脱炭素対応で先行する欧州市場に対して自社の技術を積極的に売り込む営業系の求人が目立ちます。一方、コロナ禍にともないヒトとモノの移動が制限されたことで事業の継続性に不安を覚えた企業では、仕入れ、供給の新たなルートを設けたり、日本人不在の海外拠点のガバナンスを保つためのシステム化を進める人員を求めています。
【求職者の動向】
7月~9月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比90%と落ち込んだものの、前年同時期比では145%と大幅に増加しました。コロナ禍に伴い沈静化していた求職者の動きはほぼ平時並みに戻ったことが実感されています。
各社の中でコロナ後の方向性が徐々に明確化されている中で、自身のキャリアの方向性との不一致によって転職を考え始める人材が現れ始めたことは、各社において海外経験を有する貴重な人材の流出を防ぐ繋ぎ留めの重要性は増しています。
いずれにせよ、求職者の動きは依然として慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立つこと、また企業の選考のハードルが上がり、優秀人材の獲得競争が一層し烈であることから、先端ITやヘルスケアなどの高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材を募集する場合には、より競合を意識した条件設定やその他の魅力付けを行う必要があります。
各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に
特化など)により、意図的に減る場合もあります。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。
■株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社、コンサルティング・金融業界に特化した人材紹介事業を展開するバンテージポイントを傘下に、世界11ヵ国、24拠点で事業を展開するグローバル企業です。
[URL]
http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
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