グアーガム酵素分解物のNAFLD進行抑制メカニズム
1. 研究背景について
現在、脂肪性肝疾患(Nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が増加しており、日本では健康診断を受ける成人の2~3割に上るとみられています。NAFLDは主に肥満やメタボリックシンドロームに伴う肝臓への脂肪蓄積によって引き起こされますが、近年、腸肝軸の関わりについても報告が増えています。すなわち、腸管バリア機能の低下により腸内細菌由来成分(エンドトキシン※1)が血液中へ流出し、肝臓に到達して炎症を引き起こし、NAFLDの憎悪に関わると考えられています。
グアーガム酵素分解物(Partially Hydrolyzed Guar Gum:PHGG)は水溶性食物繊維で、腸内細菌叢を改善し、腸内環境を整えることが明らかになっています。さらに、PHGGは腸管バリア機能を高める作用も報告されており、NAFLDに対する有効性が期待できますが、その効果は明らかにされていませんでした。
2. 研究方法について
動脈硬化食※2を摂取させ、低濃度の硫酸デキストラン負荷により腸管バリア機能が破綻したNAFLDモデルマウスを用いました。NAFLDモデルマウスにPHGGを摂取させ、肝機能マーカー(AST;aspartate aminotransferase、ALT;alanine aminotransferase) 、肝組織、肝臓のミエロペルオキシダーゼ活性※3、肝臓の遺伝子発現、門脈中のエンドトキシン、腸管バリア機能、腸内細菌叢や代謝物などに与える影響を調べました。
3. 主な研究結果について
PHGGの摂取により、腸管バリア機能が維持され、エンドトキシンの腸管からの流出が抑制されました。また、肝臓への脂肪蓄積および肝臓の炎症が抑制され、肝臓の炎症や繊維化に関わる遺伝子の発現が低下し、肝機能マーカーが改善しました。以上のことから、PHGGは腸肝軸を介してNAFLDの進行を抑制する可能性が示されました。
4. 考察と今後の展望
本研究ではPHGGのNAFLDに対する有効性が示されました。今後、ヒトでの検証が必要となりますが、腸肝軸をターゲットとした新たなNAFLDの予防法や治療法の開発につながることが期待されます。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/258336/LL_img_258336_1.jpg
グアーガム酵素分解物のNAFLD進行抑制メカニズム
■用語説明
※1 エンドトキシン
内毒素。細菌の細胞壁の構成成分であるリポ多糖で、積極的には菌体外に放出されず、菌が死ぬことによって遊離します。体内に入ると免疫細胞を刺激し炎症を引き起こします。腸管バリア機能の破綻により肝臓に到達したエンドトキシンがNAFLDの進行に関わることが示されています。
※2 動脈硬化食
通常の餌に脂肪、コレステロール、コール酸を負荷した動脈硬化を誘導するための餌。
※3 ミエロペルオキシダーゼ活性
好中球がもつ強力な酸化酵素で、好中球が異物を貪食・消化する際に活性が認められます。肝臓におけるMPO活性の上昇は、肝臓に炎症が生じ、肝組織中に好中球が集積していることを示します。
■発表雑誌
雑誌名 : World Journal of Gastroenterology
論文名 : Partially hydrolyzed guar gum attenuates non-alcoholic fatty liver disease in mice through the gut-liver axis
著者 : Shun Takayama, Kazuhiro Katada, Tomohisa Takagi, Takaya Iida, Tomohiro Ueda, Katsura Mizushima, Yasuki Higashimura, Mayuko Morita, Tetsuya Okayama, Kazuhiro Kamada, Kazuhiko Uchiyama, Osamu Handa, Takeshi Ishikawa, Zenta Yasukawa, Tsutomu Okubo, Yoshito Itoh, Yuji Naito
掲載日 : 2021年5月10日
■会社概要
商号 : 太陽化学株式会社
代表者 : 代表取締役社長 山崎 長宏
所在地 : 〒512-1111 三重県四日市市山田町800番
設立 : 1948年1月
事業内容: 乳化剤、安定剤、鶏卵加工品、機能性食品素材等の開発、製造。
資本金 : 77億3,062万円
URL : https://www.taiyokagaku.com/