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人間は加齢とともに関節の柔軟性が低下し、身体バランスを崩し転倒することで、生活の質の低下を招きます。しかし今後、年齢別のトレーニング法を開発することで、健康寿命を伸ばすことが期待できます。
■ポイント
・高齢者の足首の柔軟性は、神経の硬さと関連
・高齢者と若年者では、柔軟性と関連する組織が異なることを発見
・柔軟性向上には、年齢毎に効果的なトレーニング内容が異なる可能性を示唆
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/238703/LL_img_238703_1.jpg
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■図の説明
超音波の測定位置と、超音波せん断波エラストグラフィ画像の代表的な例。各エラストグラフィ画像上の白線で囲まれた領域は、せん断波速度解析に関係する領域を表している。LG:外側腓腹筋、MG:内側腓腹筋、ST:半腱様筋
Associations between Range of Motion and Tissue Stiffness in Young and Older People
HIRATA, KOSUKE;YAMADERA, RYOSUKE;AKAGI, RYOTA
Medicine & Science in Sports & Exercise52(10):2179-2188, October 2020.
doi: 10.1249/MSS.0000000000002360
■研究概要
高齢者のけがや転倒のリスク低減には、関節の柔軟性(可動域)に影響を与える要因を明確にし、身体能力を向上させるトレーニングの開発が重要です。これまでの研究から、骨格筋の硬さが関節の可動域に影響を与えることが知られています。しかし、高齢者は若年者より筋肉が軟らかい傾向にあり、高齢者の柔軟性低下の要因は曖昧でした。柔軟性に影響を与えている筋組織以外の組織の選別や、年齢による違いを明確にすべく実証実験を行いました。
研究チームは、若年者(22歳前後)と高齢者(72歳前後)を対象に、足首を回転させ、可動域を確認。下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)、坐骨神経(脚の主な神経)、深部筋膜のせん断波速度を硬さの指標として、超音波せん断波エラストグラフィで評価しました。実験の結果、若年者の筋肉の硬さが増加すると関節の可動域が狭まり、高齢者にはこの相関関係は見られませんでした。反対に神経が硬くなると関節の可動域が狭まったのは、高齢者のみでした。
■論文情報
著者 :芝浦工業大学 理工学研究科 ポスドク研究員 平田浩祐
芝浦工業大学 システム理工学部生命科学科4年(当時) 山寺凌輔
芝浦工業大学 システム理工学部生命科学科 准教授 赤木亮太
論文名:Associations between Range of Motion and Tissue Stiffness in Young and Older People
掲載誌:Medicine & Science in Sports & Exercise
DOI :10.1249/MSS.0000000000002360
■研究助成
本研究はJSPS科研費(18J00400)の助成を受けたものです。
■芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/
日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の理工系大学です。東京都とさいたま市に3つのキャンパス(芝浦、豊洲、大宮)、4学部1研究科を有し、約9千人の学生と約300人の専任教員が所属。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。