農大一高生物部尾瀬調査隊
年輪幅の変化
「つくばScience Edge」は、全国の中高生の団体・グループが、主体的に考えた研究・技術アイデアをポスターセッションで発表するコンテストです。
今年は、新型コロナウイルスの影響により、コンテストは中止となりましたが、応募時に提出したアブストラクト(発表趣旨)の書面審査が行われました。これにより、東京農業大学第一高等学校生物部が金賞を受賞しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/209995/LL_img_209995_1.jpg
農大一高生物部尾瀬調査隊
生物部尾瀬調査隊 尾瀬鳩待峠(はとまちとうげ) 後方中央が伐採されたブナの巨木
東京農業大学第一高等学校生物部は、1960年の創部以来、自然を体験し学ぶことをモットーに活動しています。特に野外での調査の記録は中高生の研究だけでなく、長期間の自然の変化を示す重要な資料として認められています。
今回の「つくばScience Edge 2020」には、「尾瀬国立公園の伐採木を活用した年輪による環境分析」というテーマを提出しました。この研究は、農大一高生物部が先輩から30年間にわたって継続して調査を行ってきた尾瀬国立公園の鳩待峠登山道のオーバーユース(過剰入山者数)と登山道脇樹木の健康度低下の影響についてまとめたものです。尾瀬国立公園では保護と同時に、気象記録も行われています。
そこで注目したのが、2017年に伐採された登山道入口のブナの巨木です。鳩待峠から尾瀬に入った人が必ず目にした、あのシンボルツリーが、今は人知れず伐採され看板の後ろに打ち捨てられているのです。この木の隣には、1989年に入山者数の影響を科学的に検証するためカウンターが設置されました。
生物部の部員たちは、今回の研究で尾瀬国立公園の気象記録とカウンターに対応する、今までは放置され打ち捨てられてきた登山道脇の伐採木(登山者の安全上、近年大量の木が伐採されている)を有効活用し、この木から採取した年輪から、影響を及ぼした環境の変化を分析する手法を確立しました。その結果、平成期30年にわたる長期の年輪の記録から、近年、尾瀬にも温暖化の影響が及び、ブナの成長期とミズバショウシーズンの入山のピークが一致し、入山者の踏圧がブナの健康度が低下した事実を突き止めたのです。
創部60周年を迎えた東京農業大学第一高等学校生物部は、これからも自然環境についてフィールドでの研究をモットーに活動を続けてまいります。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/209995/LL_img_209995_2.png
年輪幅の変化
上段 ブナの巨木から採取した年輪幅の変化(1964年~2016年)
中段 成長錐で採取した年輪(環境省許可)
下段 尾瀬の6月の平均気温の変化(1989年~2016年)、特に右枠2001年以降の気温の上昇は顕著である