図1 ビフィズス菌の相対量に及ぼす大麦若葉エキスの影響
図2 酪酸産生菌の相対量に及ぼす大麦若葉エキスの影響
図3 大麦若葉エキスの有無による短鎖脂肪酸産生に及ぼす影響
D. Sasaki, K. Sasaki, Y. Kadowaki et al. Bifidogenic and butyrogenic effects of young barley leaf extract in an in vitro human colonic microbiota model. AMB Express 9, 182 (2019) doi:10.1186/s13568-019-0911-5
【研究の内容】
大麦若葉エキスのヒト腸内細菌叢に及ぼす影響
(方法)
ヒトの腸内環境を模した培養システムKUHIMM(神戸大学ヒト腸管細菌叢モデル)に、健常人9人の糞便を加え、腸内環境に近い条件で培養した後、培養液からDNAを抽出し16S rRNA遺伝子を対象として次世代シーケンサーにて菌叢解析を行いました。培養時に大麦若葉エキスを添加した場合の菌叢と添加しなかった場合の菌叢とを比較することで、大麦若葉エキスの腸内細菌叢に及ぼす効果を解析しました。また同時に培養液中の短鎖脂肪酸の量を測定しました。
(結果)
大麦若葉エキスを添加することにより、
1. ビフィズス菌(Bifidobacterium属)の割合が増加しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/201800/LL_img_201800_1.jpg
図1 ビフィズス菌の相対量に及ぼす大麦若葉エキスの影響
KUHIMMを用い1.5%大麦若葉エキス(YBL)の有無の条件で9人の被験者の腸内細菌を48時間培養したところ、1.5%YBL有の条件でBifidobacterium属(ビフィズス菌) は有意に増加した。
CUL:大麦若葉エキス無添加 YBL:1.5%大麦若葉エキス添加
Sasaki.D et al. AMB Express (2019) 9:182 Fig4aを改変
2. 酪酸産生菌(Faecalibacterium属, Roseburia属, Unclassified Ruminococcaceae科, Lachnospira属)の割合が増加しました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/201800/LL_img_201800_2.jpg
図2 酪酸産生菌の相対量に及ぼす大麦若葉エキスの影響
KUHIMMを用い1.5%大麦若葉エキス(YBL)の有無の条件で9人の被験者の腸内細菌を48時間培養したところ、1.5%YBL有の条件で酪酸産生菌であるFaecalibacterium(フィーカリバクテリウム), Roseburia(ロゼブリア), Unclassified Ruminococcaceae(ルミノコッカスの一種), Lachnospira(ラクノスピラ)は有意に増加した。
CUL:大麦若葉エキス無添加 YBL:1.5%大麦若葉エキス添加
Sasaki.D et al. AMB Express (2019) 9:182 Fig4bを改変
3. 短鎖脂肪酸のうち酪酸の濃度の上昇がみられました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/201800/LL_img_201800_3.jpg
図3 大麦若葉エキスの有無による短鎖脂肪酸産生に及ぼす影響
KUHIMMを用い1.5%大麦若葉エキス(YBL)の有無の条件で9人の被験者の腸内細菌を48時間培養したところ、1.5%YBL有の条件で短鎖脂肪酸のうち酪酸濃度は有意(p=0.006)に増加したが、酢酸やプロピオン酸の濃度には変化はなかった(ns: 有意差なし)。図には中央値と四分位範囲を示した。
Sasaki.D et al. AMB Express (2019) 9:182 Fig5を改変
以上のことから、大麦若葉エキスにはビフィズス菌・酪酸産生菌の増加、酪酸の濃度上昇の作用があることが確認されました。この結果は、大麦若葉エキスが腸内環境を整えることで、健康に寄与する可能性を示唆しています。
腸内環境が、免疫調節作用・抗炎症作用・腸管バリア作用などさまざまな生理作用と関連しているという報告が増えてきていることから、大麦若葉エキスが腸内環境を改善することで、身体全体に良い影響を及ぼすことが期待されます。
当社は今後も大麦若葉エキスの健康増進作用に関する研究を続けてまいります。
【用語説明】
<大麦若葉エキス>
イネ科オオムギの若葉の搾汁を噴霧乾燥して得られた粉末。健康食品青汁素材として利用されている。
<KUHIMM(Kobe University Human Intestinal Microbiota Model)>
神戸大学ヒト腸管細菌叢モデル。
神戸大学により開発されたヒト腸管をシミュレートしたin vitro培養システム。
<ビフィズス菌>
グラム陽性の偏性嫌気性桿菌。酢酸、乳酸を産生し腸内のpHを低下させることで腸内環境を整える。代表的な善玉菌。
<短鎖脂肪酸>
腸内細菌による嫌気性発酵で産生される終末代謝産物。酢酸、プロピオン酸、酪酸がある。
<酪酸>
腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸の一つ。腸管上皮細胞のエネルギー源となる他、免疫の調節作用、抗炎症作用、腸管バリア機能の増強効果など健康維持のために重要な働きをしている。