グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)
グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)のX線回折測定図
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/167523/LL_img_167523_1.jpg
グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)
太陽光で水を分解して水素と酸素を生成することができる光触媒反応の研究は、太陽光エネルギーを化学エネルギーへ変換する方法として、深刻化してきているエネルギー問題や環境問題に関連して世界中の研究者によって活発に行われています。
光触媒は昔から研究されており、化石エネルギー使用の削減が要求されている昨今ではさらにその注目度を増しています。そのためには水素を安く大量に作成する必要がありますが、従来のTiO2などの光触媒では、太陽光の3~4%にすぎない紫外光しか利用できないため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率が低いという問題があります。また可視光応答型光触媒としてWO3も有効ですが、タングステンは資源とコストの面から材料的に困難な状況に陥る可能性があります。窒化炭素の原料は資源として豊富に存在し、安価かつ安定に供給できる資源制約のあまり無いものから作れるので、次世代の光触媒材料として期待されます。
この材料により、次世代エネルギーとして検討されている、水素を基本とするエネルギー社会(水素社会)において、その根幹となる太陽光による水素製造の実現へつながること、同時に環境問題の解決にも大きく貢献することが期待されます。水素を再生可能な自然エネルギーである太陽光と地球上に豊富に存在する水から効率的に製造できれば、現在の化石燃料社会から水素をエネルギー源とする水素社会への移行が現実のものとなります。
グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)は、金属を含まない有機系の半導体光触媒で、可視光照射下で水素と酸素を生成することが報告されていました。グラファイト状窒化炭素は、化学的、熱的安定性を有し、原料価格も安いという利点があります。さらに可視光活性を有するなどの非常に興味深い特性により、光触媒以外にも光電気化学、蛍光イメージング剤などへの応用も進められています。
またグラファイト状窒化炭素と最適な金属錯体、金属酸化物、金属窒化物、黒リン酸などの有機化合物と組み合わせることによりCO2を還元し、ギ酸や一酸化炭素といった有用物質を常温常圧下で製造できる人工光合成反応として用いることもできます。
※1 グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)
窒化炭素化合物群の一つでヘプタジン骨格を基本とする2次元平面構造の化合物。原料や合成条件によって、異なった性質を示す。最近その触媒活性が非常に注目され、研究が進行している。
※2 光触媒
光を照射することにより触媒作用を示す物質。代表的な光触媒は、アナターゼ型酸化チタン(TiO2)であり、紫外光の照射によって水が分解して水素と酸素を発生する。また、有機物の酸化分解を起こし、二酸化炭素にまで分解できることから、環境浄化へ応用されている。
※3 可視光、近赤外光
太陽光は様々な波長の光が混ざっていて、波長が短くエネルギーの大きい順番に、紫外光、可視光、近赤外光と呼び、それぞれは約4%、44%、52%の割合である。可視光は7つの色にわけられる。