ジョバンニ・ソルディーニ氏
マセラティ マルチ70号 1
マセラティ マルチ70号 2
チームを率いるジョバンニ・ソルディーニ氏はこう語ります。
「必ずしも理想的な気象条件とは言えませんが、これから数日間これ以上の風は見込めないため、我々はついに出発することにしました。赤道付近は相変わらず予想泣かせの気象状態ですが、好転することを期待しています。マセラティ マルチ70号の準備はすべて整いました。クルー全員、士気が高く、強い結束力で繋がっています。あとはこの素晴らしいチームで最善を尽くすのみです。」
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/147751/LL_img_147751_1.jpg
ジョバンニ・ソルディーニ氏
■マセラティ マルチ70号のクルー
マセラティ マルチ70号に乗り込み香港~ロンドン間の帆走スピード記録に挑むのは、確かな経験を有し国際的に活躍しているクルーです。ミラノ生まれの艇長ジョバンニ・ソルディーニを長年補佐している、同じミラノ出身のグイド・ブロッジ。スペイン人のオリヴァー・ヘレラも長い間、マセラティ チームの一員を務めています。そして彼の同胞、アレックス・ペラはスペインのセーリング界で現在もっとも注目されている逸材です。「数年前にVOR70 マセラティ号に乗船し、昨年はトリマラン(三胴船)で太平洋を航海しましたが、これらの船艇で壮大なチャレンジに参加するのは今回が初。自身にとっても意義深いこの航海を成功させるため、いま私はここにいるのです。」とアレックス・ペラは語ります。
「チームメンバーは家族同然で、皆互いのことを深く理解しています。船もクルーも準備万端で、挑み甲斐のあるこの航海に胸は高鳴るばかり。最高の舞台が整ったと感じています。」 ペラは昨年、地球一周のタイムを競う「ジュール・ベルヌ・トロフィー」で記録更新を達成したトリマラン、アイデック号に乗り込んでいましたが、その時のチームメイトだったのがもうひとりのクルー、フランス出身のセバスチャン・オディガンです。オディガンは外洋多胴船のエキスパートで、マセラティ チームとは旧知の間柄です(2013年、VOR70 マセラティ号がニューヨーク~サンフランシスコ間のゴールデンルートにおいて記録達成時に乗船)。
そして陸上では、気象学者のピエール・ラスニエがルート選定を担当し、航海中のソルディーニと常時連絡を取り続けます。
■“非飛行”スタイルのマセラティ マルチ70号
今回の記録挑戦にあたり、チームはマセラティ マルチ70号を、MODモードと呼ばれるオリジナルの形状に戻しました。昨年までこのヨットにはダガーボードとラダーで構成される水中翼が備わっており、船体を水面から浮かせて航行することが可能でしたが、その装置は船体から外されています。「洋上で障害物に衝突した際のリスクを考慮し、今回のレースでは船を非飛行セッティングに戻すことにしました。」とソルディーニは説明し、「搭載する太陽光発電パネルの数を2倍に増やしました。艇体の総重量を重くすることができるだけでなく、今回のような長期間にわたる航海ではエネルギーの自給もとても重要なファクターとなるからです。」とも語っています。
■マセラティ マルチ70号
全長 :21.20m
全幅 :16.80m
重量 :6,300kg
セール面積(逆風時):310平方メートル
セール面積(順風時):409平方メートル
■「グレート ティー レース オブ1866」からジターナ13号の記録まで
この香港~ロンドン間のスピード記録レースは、19世紀後半にクリッパー(蒸気船が出現する前の快速帆船)が中国から英国へ紅茶を運搬した際と同じ航路をたどります。この航路では当時から帆船レースが行われており、なかでも最も注目を集めたのが「グレート ティー レース オブ1866」でした。5隻のクリッパーが世界最速を競い合い、レースはドラマチックな結末を迎えます。99日間の航海の後、3隻のクリッパーが同じ潮流に乗ってテムズ川に入り、白熱した僅差の勝負を展開しながら次々とロンドンの波止場へとゴールしたのです。その後、フィリップ・モネが同航路での帆走スピード記録を塗り替えた初のスキッパー(艇長)となります。彼は1990年、60フィートのトリマランに乗り、67日間10時間26分で航海を完遂しました。
2008年には、リオネル・レモンシュワが100フィート(32.5m)のマキシヨット、ジターナ13号に乗り、10名のクルーとともに香港出発から41日間21時間26分後にロンドンへ到着。この記録は今なお破られておらず、今回の航海でマセラティ マルチ70号が記録更新に挑みます。
■香港~ロンドン間の航路に待ち構える難関
「世界帆走スピード記録評議会」ではさまざまな外洋航路でのスピード記録を認定していますが、そのなかでもこの香港~ロンドン間を結ぶ1万3,000海里の歴史的なルートは、地球一周とニューヨーク~サンフランシスコ間に次いで3番目に長いルートです。
<香港~スンダ海峡:1,700海里>
香港を出発した船は、南シナ海を縦断する形で南下してジャワ海に達し、ジャワ島とスマトラ島に挟まれたスンダ海峡を抜けて、インド洋へと向かいます。この航路では珊瑚礁の島々を縫うように進み、船舶交通がつねに混雑する海域を通過する必要があるばかりでなく、ルート前半の赤道付近においては風が弱く気象条件が不安定なゾーンを通らなければなりません。
<スンダ海峡~喜望峰:5,000海里>
スンダ海峡を抜けてインド洋を横断し、アフリカ大陸の喜望峰へと到達するには、5,000海里にも及ぶ長い距離を帆走しなければなりません。マダガスカル島の南までのルートは熱帯気候に属し、南東から吹く貿易風によって追い風の恩恵を受けることができる一方で、熱帯低気圧発生による悪条件下での航海を強いられるリスクもあります。また、アフリカ大陸に沿って南下するにつれ温帯地域に入りますが、ここでも低気圧による西からの強風に悩まされる恐れがあります。とりわけ南アフリカを回り込んで喜望峰に向かうこの航路では、強い海流との闘いが航海をいっそう難しいものにしています。
<喜望峰~赤道:2,800海里>
喜望峰を離れて再び赤道へ向かう南大西洋の洋上では、セントヘレナ島付近に居座る高気圧の影響を受けます。典型的なアプローチをとる場合、まずこの高気圧の東の縁に沿って北上するルートを進み、最終的には南東から吹く貿易風に乗ってさらに北へ向かうこととなります。
<赤道~ロンドン:3,500海里>
北半球へ戻った船は、北大西洋での最初の難関として、再び風が弱まるゾーンを通過しなければなりません。気象学者が熱帯収束帯(ZCIT)と呼ぶ、悪名高き赤道付近の無風帯です。この不安定なゾーンから抜け出ると、北東からの貿易風に逆らって北上を続けます。北大西洋航路の後半では、イギリス海峡へと向かう最速のコースをとれるかどうかが重要な鍵を握りますが、これはアゾレス諸島付近の高気圧の位置と勢力に左右されます。また、このあたりでは冬季に低気圧の影響を受ける可能性も考慮しなければなりません。こうした数々の難関を乗り越え、遂に船は最後のフィニッシュラインへと到達。テムズ川河口の「クイーン エリザベス2世橋」を通過した瞬間、ストップウォッチが止められます。
マセラティは、このトリマランの命名権を持つメインスポンサーとして、「マセラティ マルチ70号」とクルーのチャレンジをサポートしています。共同スポンサーのAon、ウェアのオフィシャルサプライヤーErmenegildo Zegnaをはじめ、Boero Bartolomeo S.p.A.およびContship Italia Groupの多大なるご協力にも深く感謝いたします。
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